スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
気を失っていただけで、特に体に悪いところもない私は早々にベッドから出されました。
それにしてもスライムとして数えきれない長い年月を生きた私が……、まさか気を失ってしまうとは!
しかしまぁ、普段からちゃんと息とかするよう生活していたのは幸いでした。どうやら助けてもらったみたいだし、息もしていないのに死んでない気絶した女の子を見れば、怪しすぎて助けるどころか逆に処分されていたかもしれない。スライム謹製サンダルも気を失うと形を維持出来なくなり消えていました。
女性の後に入ってきたのは男の人でした。前世の私が見たら悔しがる、いや比べることすらおこがましい、色白美男子です。背丈は女性よりかなり高く、きらびやかな銀髪に暗めの青い瞳、文句の付けようもない王子様顔です。くそ。男女で同じような服装で、股下丈のチュニック(っていうんだっけ?)に細めのズボン。首周りにスカーフ、足元は編み上げの革のブーツかな? 同じ組織に属してるって感がありあり。女性の方は胸元が少し窮屈そうで、私のツルペタとは対照的です。く、くやしくなんてありませんから!
女性も男も私に色々話しかけてきましたが、何を言ってるのかさっぱりでした。
じれったく思ったのか男がドアの方を指さし、女性がうなずくと私の頭をひと撫でしたあと有無を言わさずといった感じでベッドから引っ張り出されました。うう、大事にしてくれてたかと思えば案外容赦ないです。
そのまま、隣の部屋に連れ出されました。ベッドを出る際、履かされた靴はサイズが合ってなくてペタペタ音をさせながら歩いてたら男に苦笑いされました。
隣の部屋も私がいた部屋と一緒で、お世辞にも綺麗とはいえない状態でした。所々に修理の跡があるのも同じで、屋根にまで応急処置がなされています。それに壁とか床の至る所に黒い染みがありますが、これは気にしない方がいいやつです。
大きな木製のテーブルに三人でつきます。男を向かいに、私は女性と並んで座りました。はい、椅子に脇から抱えあげられて座りましたとも。この女の人、力あるね!
会話も成り立たないのに何するんでしょう?
そう思ってたら男が自分を
「ヨアン。ヨアン
うーむ、これはきっと自己紹介。自らを
「よ、あん? よあん?」
私がそう聞き返せば男、ヨアンが笑みを浮かべる。イケメンの笑顔。
で、それを見ていた女性が私の手を取り、興奮気味に自分を指さしながら言う。
「
ちょ、落ち着け女の人! 言葉が長いと難しくなるから! まぁなんとかわかるけどね。
「あんにゅ?」
あ、かんだ。"ヌ"はしゃべり慣れてないこの口にむずい。しかたないね。
女の人、アンヌさんが喜んでいいのかどうか微妙な表情浮かべてる。すみません。
「アンヌ。アンヌ
表情や手振りからもう一度言って欲しいみたいだな。これからお世話になりそうな人だし。サービスしておかないとね。
「あんにゅ!」
やっぱりかむな。そのうち慣れると思うから今は許してね。アンヌさん。
この世の終わりみたいな表情を浮かべるアンヌさん。そ、それほどのもの? そんなやり取りをしてたら、ヨアンが割り込んできた。
「
軽い会話を二人が交わし、その二人が同時に私を見てきた。流れから行けば次は私の番ですね、わかります。私、私の名前……。
あ゛。
ああーー。
ない。
ないです、名前!
いやー、すっかり失念してました。マジで。どれだけ長い間名無しでいたんだって話なんだけどね。
かと言って前世日本人の名前なんてもう思い出したくもないし。それに男だったし。
この世にはいつの間にかスライムっぽいものとして存在していて、親と呼べるものだっていないし。今までの暮らしで名前が必要な状況なんて全くなかったしね。だいたいですね、野生の生き物に名前なんてものはいらないんです!
私、女の子の
「
アンヌが私を指さしながら身振り手振りで一生懸命意志を伝えようとしている。うん、わかる、わかるよ、その気持ち。きっと名前が聞きたいんだよね?
でもごめんなさい。無理なんです。
私はアンヌを上目に見ながら、気まずく目を逸らすことしかできないのでした。
話がなかなか進まな~い