スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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今までで最長!


◆気付きと決まりごと

 女の子が目を覚ました途端に事情聴取をしようとするヨアン副長はちょっと冷たいと思います。

 

 今は、いつも会合で使っている元村長宅の食堂で大テーブルを挟み、副長と向かい合って座っています。もちろん女の子は私の隣です。

 

 始まりは、女の子を寝かせてある私の部屋から、可愛らしい高い声が聞こえてきたところからです。

 慌てて部屋に飛び込んでみれば、ベッドの上に立ち上がり、辺りを見回している女の子の姿がありました。

 

 きっと知らないところで目覚め、不安になったに違いないです。

 

 不意に現れた私に驚いた女の子と目が合えば、それはもう吸い込まれるかのように深い、澄んだ綺麗な紫色をしていて思わず見入ってしまいそうで。それと同時に目覚めたことにほっとしました。

 女の子が何かを言い、私も興奮混じりに何か言ったかと思いますが覚えていません。気付いたら女の子をぎゅっと抱きしめてナデナデしていました。

 恐ろしいほどの高魔力を持っているのに、未だ非活性(パッシブ)で、ちょっと危うさをはらんだ女の子なんだってことはその時は関係ありませんでした。

 

 副長が入ってきて引き離されました。イケメンだけど真面目過ぎて空気読めない人です。

 女の子に話しかけましたが、どうにも会話になりません。時折視線が動くのと口元がもごもごとするだけで、どうにも反応が薄く、表情にも変化がないのです。

 

 副長が私を見て、ドアを指差しました。隣の部屋に行けとの指示ですね。

 どうやら本格的に話を聞き出そうとする構えです。

 

 ということで冒頭に戻ります。

 

 ほんと副長、冷たいです。

 ついさっき目覚めたばかりなのにもう聴取。女の子が可哀想です。

 

 それはさておき、まずは自己紹介からです。

 

 自分を指さしながら名前を繰り返すヨアン副長。なんでしょう、怪しさ満点の女の子に「よろしくお嬢さん」とかのたまうこの人の育ちの良さにはあきれるばかりです。

 女の子も一応副長のことをじっと見つめて言葉を懸命に聞いているように思えます。きちんと場の空気を読んでる。えらい!

 

 とはいえ相変わらずの無表情。う-ん、なんなんだろこの感じ。

 ちょっと引っかかる感覚が心をよぎりますがそれをひっくり返す事態発生!

 

「よ、あん? よあん?」

 

 うそぉ、副長の名前を呼んだよ? 呼んじゃったよ!

 これは由々しき事態。先を越されました! 私は女の子の手を取って私の方を向かせ、自分の名前を必死に連呼して聞かせました。アンヌ、アンヌ、私はアンヌだよ~!

 

 ど、どうかな? ドキドキ。

 

「あんにゅ?」

 

 へ?

 

 な、なんて、言った、の?

 副長の顔が薄い微笑みで満たされています。きぃーーーーー!

 再度名前をこんこんと言って聞かせ、女の子がちょっと大きな声でまた名前を呼んでくれた。

 

「あんにゅ!」

 

 ああ、そ、そんな。可愛いだけに怒れないぃ。なんとかきっちり覚えてもらわないと! そう思ったのに……、

 

「はいはい。次はその子の名前を聞いてみよう」

 

 副長が割り込んできた。そして小声で私に話かけてくる。

 

「アンヌ。それぐらいにして。女児にあなたの名前の発音は難しいのでしょう。おいおい正しい発音で呼べるようになるでしょう。それより今は名前の確認が先ですよ」

 

 くうっ、正論ですね……。

 副長と私、二人して女の子を見やります。女の子もじっとこちらも見ています。澄んだ紫色の目からその感情を読み取ることはできません。なんだかやっぱり……。浮かんだ考えを隅に追いやり、女の子に問いかけます。

 

「あなたのお名前を教えて? あ、え~っと、な・ま・え、おしえて? わかる?」

 

 身振り手振りを交え必死に女の子に問いかけました。名前だよ、あなたの名前。私たちに教えて!

 

 けれどそんな私の願い。問いかけに帰ってくる言葉はなく。ただ女の子が私のことを上目遣いに(うかが)うように見てくるだけに終わってしまい、結局名前はわからずじまいでした。

 

 

 そんな中で終始目に付いた女の子の表情。

 ずっとあった違和感……。

 

 その答えに気付く。

 

 それは……、感情が見えない、浮かばない。

 子供らしい喜怒哀楽の表情のない、悲しいまでの無表情なのでした。

 

 

 

 

***

 

 

「さて皆さん、あの女児について色々確認しておこうと思います。何か気付いたことはありますか?」

 

 アンヌが落ち込んでいますが待ってあげるわけにもいきません。スヴェン隊長が再訪するまでにある程度の報告が出来るようにしておきたいですから。

 先ほどの女児との対面もレナートの風魔法、リスニング(聴き取り)アンプリフィケーショ(増幅処理)ンで全員に共有していました。

 

「ありゃ、こっちの言葉、まったく理解できてませんねぇ」

「けど、こちらのやってほしいことや、言おうとしていることへの理解力はあったと思う!」

 

 クルトとアンヌがまず発言しました。

 

「あんなどこの誰とも知れない子供、さっさと領都の孤児院にでも放り込めばいいじゃないですか」

 

 レナートの直截(ちょくせつ)な言葉にアンヌが口を尖らせますがなんとか(こら)えます。色々わきまえているようでなによりです。

 レナートの言うことは一つの解ではあります。対応も楽ですし。まあそれと人の持つ感情は別でしょうけれど。

 

「あの嬢ちゃんが着てた毛皮な。あれ、一角皇虎(インペリアルタイガー)の毛皮で間違いない。ハンター五人、いやモノによっちゃ十人は居ないと仕留められない代物だわ」

 

 色々な意見、中には眉を(ひそ)める意見も飛び交いましたが、じっと黙っていたエリクがぼそりと一言発しました。

 

「あいつ、生贄にされた娘……、じゃないのか? こんな辺鄙(へんぴ)な場所、で、小さな女の子。年の頃が微妙……だけど、あの日記にも……書いてあった、んだろ? 年齢よりもかなり、幼く見えるって」

 

 エリクの意見。言われてみれば確かにそうです。

 このような僻地(へきち)。ヴィーアル樹海にも近い危険と隣り合わせのような土地。小さな女児が一人で居られるはずもない。

 髪の色が異なるのと、幼く見えるので全く思いもしませんでした。確か記述によれば赤髪に赤茶の目とあったはずですが……。

 

「うーん、髪や目の色が変わるなんてことはあり得るのでしょうか?」

 

 つい独り言がこぼれます。

 

「それならば十分にありえる話です。例えば当人の高魔力に伴う変化。あるいは魔獣のもつ毒の(たぐい)、もしくは魔獣の魔力そのものに侵され変質したという話も聞き及んだことがあります」

 

 まさかのレナートからの肯定です。いや、魔法に造詣(ぞうけい)の深いダール家の一員であればあり得る話ですか。少し見直しました。

 

 なるほど。それならばこうしますか。

 

「では、仮にですが女児の名はミーアとします。この村の悪しき儀式の犠牲となった子供の名です。不明な点が多く、別人という可能性はもちろんありますが、我々としても呼び名がないと困りますからね。当面の便宜(べんぎ)をはかるということにおいても適当でしょう。異議のあるものは?」

 

 ここまで言ったところで皆の顔を見回す。

 特に異議のあるものは居ないようです。アンヌなど、しきりに頷いています。

 まぁ他の皆は、面倒だから早く終われ、程度の気持ちなのかもしれませんね。

 

「では決まりですね。今後、女児はミーアと呼ぶこととします。この決定を(くつがえ)す新たな事実が出ない限り、ヨアン=リンドグレーンの名において、これが変わることはありません。異議のあるものは本日中に申し立てること。それ以降は決して受け付けることはありません。――では解散」

 

 

 女児の名前が決まりました。

 

 あの女児が本当にミーアなのか、それとも別人なのか?

 実際のところ、私はどちらでも良いのです。

 

 真相は女児、ミーアと意思疎通が出来るようになってから聞いてみることにしましょう。

 




まとまり悪いな……

誤字報告感謝です。
色々ためになります!
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