スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
まずい状況です。
外回りをしているクルトとエリクが
彼らの報告によれば、ヴィーアル樹海の上空をワイバーンと見られる飛竜種複数の群れが旋回している様子を確認したとのこと。その数、目視できたものだけでも十二頭。
まだまだ記憶に新しい、ソルヴェ村の悪夢が頭をよぎります。
ここソルヴェ村は、崖の多い海岸から続く起伏のある丘に牧草地が広がり、内陸部と違い危険な魔獣の出る森も周辺になく、霧や風の強い日が多いものの比較的暮らしやすい土地です。
この一帯で現れるのは小型の魔獣や小動物であり、元の村人たちが生活出来ていたのもそのおかげでした。
もちろん、大小
ソルヴェの人々はその最悪の地勢から、ワイバーン
こちらに飛来しないことを祈りたいですが、どうでしょう。通常そこにいないものが居る。もう嫌な予感しかしません。
***
「アンヌ、僕の
ミーアちゃんといつものお勉強をしていたところにレナートが急襲してきました。ノックもなしに入ってくるなんて無作法もいいところです。普段ならそう言い返すところですが、聞かされた言葉が
「冗談じゃあ、ないんだよね?」
「そんな悪趣味なことをこの僕が言うわけないだろっ! ついさっき巡回中の剣士どもも、向こう側で旋回してる複数の群れを目撃したって報告を副長にしてたんだ。なのにもう僕の
いつになく真剣な表情を見せてくるレナート。その様子にいやでも現状を理解させられる。
そんな私たちを不思議そうに見てくる、最近少しずつその顔に表情を見せるようになったミーアちゃん。無垢なその顔をみて思わずぎゅっと抱きしめてしまった。
***
アンヌに抱きしめられるのは柔らかくってとても良いものだけれども。
なんだかとってもヤバーい雰囲気。
元リーマンおじさんである私でも感じれるくらいに、みんなの様子が殺気立ってきてる。
さっき、言葉を習ってるところに乱入してきたレナートがアンヌを連れて出て行った。私は邪魔と思われたのか部屋に残されたんだけど、さてどうしたものかしらん。
全身の感覚を研ぎ澄まし、ざわついてる彼らの言葉とかを拾った感じからすると、ワイバーンの群れが現れたっぽい。更に感覚の輪を建物の外へ外へと広げてみよう。
――うーん、やっぱ身体能力の向上だけでは限界あるなぁ。
建物の外まで広げると一気に情報が
レナートが言ってた
かと言ってそもそも私が使えるようになるのか? 使えたとしてどんなことが出来るかもわからないわけですが。
くっそー。
ケチらずに教えてくれてもいいと思わない?
っていうか教えてもらうの待つ必要なくない?
絶対あの謎器官がらみだよね?
決まってるよね!
アンヌたち警備隊に、どんな都合があってすぐ教えてくれないのかわからないですけど……。
ああっ!
もしかしてお金? 金なのか?
やっぱ世の中金か? 異世界でも金なのか?
じゃあお金持ってない私なんて、ずっとお預けのままじゃん。
そんなのやだ~!
覚えたい、使いたい、魔法無双したい~!
今まではスライムぷにょとスライム体浸透で得た身体能力強化があればどうにかなってたし、アンヌの魔法見るまでは、あれば面白いのになレベルだったし、謎器官について真面目に向き合ったことなかった。
――でも今からは違うよ。
私は魔法がぜぇ~ったい、絶対、使ってみたい。使いたいのだ!
スライム娘の根性みせたるでぇ~、おー!(具体案これから)
***
「スヴェン隊長、遠路お疲れさまでした。長旅の疲れがあるでしょうし、ゆっくり休んで頂きたいのはやまやまなのですが……、事態がそれを許してくれそうもありません」
「ああ、状況はこちらでも把握している。飛竜種共め。何がきっかけで海峡渡りをするようになったのか? こちらも魔法士三名、剣士五名を連れてきてはいるが残りは職人ギルドの連中が八名だ。戦力になるどころか守りに人を
仮設砦設営のための先遣隊を連れて帰ってくることが目的だったのですから、スヴェン隊長がそれを苦にする必要はないかと思います。むしろ守ることは我々の当然の義務です。隊長もそれはわかっているでしょう。
「まあ愚痴はこれくらいにして……ヨアン、人員配置と対応は訓練通り。ギルドの連中は連れてきた魔法士一人と剣士たちに守らせる。俺たちも迎え撃つぞ。飛竜種共に目にもの見せてやろうじゃないか」
それでこそ隊長。
「はい。すでに配置は完了してます。あとは隊長と増員の魔法士、それに私が付くだけですよ」
「そうか、さすがだなヨアン。――しかし、再度の飛来がこれほど早いとは。……もしやこの地のどこかに新たな
先遣隊の皆に指示を出し、あらかじめ想定していた、見通しの良い迎撃ポイントに急ぎ向かいながらも隊長がつぶやいた言葉に、あり得る話だと内心で同意した私なのでした。