スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
「これは俺の落ち度だな」
海峡を挟んだ対岸、船を出せば半時ほどの距離だが奴らが飛べば、そんな距離などないに等しい――。
ソルヴェの空は、我が物顔で悠然と旋回するワイバーン共の赤黒い翼で覆われ、届くはずの日差しを遮り、地に大きな影を落とす。その数……十三頭で報告時よりも多い。
村を襲ったのはワイバーンか、ファイアードレイクか? 決め手に欠けていたが、赤黒い翼が示すのは火属性だ。火の被害が多かったことからファイアードレイクも候補にあがったが、これではっきりしたな。
「仮設砦の設営に乗り出すタイミング。早まったな。これほど早くに再度の襲来とは……」
俺はみすみす奴らに
ヨアンに目にもの見せてやると息巻いてみせたものの、明らかに分が悪い。火属性持ちが多い我が隊の魔法士では奴らへの効果的な攻撃が入れられない。
連れてきた三人も二人が火属性の中級一位、残りが土属性の中級二位だ。
上級は風属性一位の俺と火属性二位のヨアンだけで、レナートも風属性中級でしかも攻撃系の魔法は不得手と来ている。
魔法
そして何より数的優位にすら立てていないのが最悪だ。
これほどの数のワイバーンが相手では、こちらの分が悪すぎる。
相性以前の問題だ。
よって様子を見る余裕など全くない。最初から全力で挑む。
詰め所から更に内陸寄り、村の中心辺りとなる
「風よ、示し
上級二位の風属性範囲魔法を威力重視で狭い範囲に絞ったものだ。強烈な下降気流を急激に発生させるため、逃げる余地を与えず、木造の建物であれば圧し潰し、倒壊させる威力がある。
奴らに放てば、仕留め切れずとも地に叩き落とし、あわよくば大ダメージを与えられるし、例え軽微であったとしても落ちたなら、いずれにせよそこは剣士たちの
それに直撃でなくともバランスを崩し、風をつかみ損ねた飛竜が落ちることもありうる。ゆえに狙い放つよりも、魔力尽きようと数多く放つ方を優先するべきだ。
「クルト、エリクやれっ!」
「言われなくともっ!」
クルトが喜々として落ちた獲物に飛び掛かる。エリクも普段と違い、その気勢は荒い。
ワイバーンも落ちてしまえばその
とはいえ、ファイアーブレスを放ってきたが、地に落ち
ブレスをやり過ごし、再度詰め寄り切りかかる二人。
ワイバーンは、断末魔の叫びと共に二人のロングソードの餌食となり果てた。
このルーティンで対処しきれれば一番良いのだが……。
「炎弾三点射出、ファイアーバレット=スリーラウンドバースト!」
ヨアンも健闘しているようだが、やはり火属性は相性が悪く、更には高度を取られると炎弾の効果は激減してしまう。まぁ、それは何にでも言えることだが、炎弾の受ける影響は
ヨアン、皆、すまないがなんとしても持ちこたえてくれ。
「……ナロウレンジダウンバースト!」
くぅ、この魔法は魔力の消費が激しすぎる。打ててあと数発。魔力枯渇は避けねばならない。
ワイバーン共は存外知能が高く、数をこなすほどに学習され、こちらの攻撃がどんどん通用しなくなってしまう。
戦闘を始めて半時も経たずして、重傷者が出た。やられたのは連れてきた土属性の魔法士だ。それ以外のものもどこかしら怪我を負っている。俺も無傷とはいかない。
魔力の消耗も激しい。
戦闘前にアンヌが施した
このままではじり貧か。
仕留めたワイバーンは六頭。この
「風よっ、
何っ? これは上級三位の風魔法。放ったのは……、レナートか。
この、ダール家の自己中三男坊が。
ヘタしたら急性魔力欠乏症で死ぬんだぞ。奴がそれを知らないわけがない。
しかも唱えたのが
凄まじい風、烈しく舞い踊る砂塵の嵐。それに巻き込まれれば人などあっという間にズタズタの瀕死で間違いなしだろうが……。魔法を放ってとっとと気を失ったレナートには悪いが、いかに烈風刃といえど、ワイバーンに届くころにはそよ風だ。しかも放ったのはレナート。威力自体も半端だ。
この魔法は地上にいる相手にこそ効果がある。空高くにいるワイバーンにそれを放ってどうする?
「とんだバカ者だ、お前は」
ともかく、どさくさにまぎれ崩れかけた建物の陰に身を隠す。
青い顔をしてぶっ倒れたレナートをアンヌが慌てて介抱している。
――それを見て俺はピンときた。
あきれ果てたぞ、レナート。
お前、アンヌに良いところを見せようとして
無事帰れた暁には絶対お前の
今の魔法で様子を窺っていたワイバーン共がまた動く気配をみせる。くそう、余裕かよ。そっちだって六頭やられてるんだぞ、何とも思わんのか。
隠れさせている職人ギルドの連中もいずれ守り切れなくなる。どうする?
「――隊長。隊長が砦に戻ってからのことであり、まだ報告出来ていなかったのですが、この村にはとある理由から地下室が存在します。そこならばワイバーンから身を隠すことも可能かと。実は職人ギルドの方々には早々にそこに退避してもらいました」
……ヨアン。ヨアン=リンドグレーン。こいつ、時折先回りが過ぎる。まさに今、こういったところだが。いや、いいんだが、いいのだけれどな。
釈然としないものがある……。
まったく。
「よし、では籠城戦でいく。残すワイバーンは七頭。安全に時間を稼げるのであれば、各個撃破でなんとか落とせる! 討伐の見通しがたったな」
作戦が決まり、ほんの少しばかり余裕が出来た矢先。
目が眩むほどの閃光、それに激しい爆音と衝撃を伴い……、それは起こった。
主人公さーん?