スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
いつものように湖を所在なくユラユラただよっていた私。
飽きました。
普通に動かせるようになったら。なってしまったらね、なんというかね、だからどうなの?って――。
いやぁ、私も若かった、うん。
今いくつなのか、まったくもっての謎ですがね(笑)
水面の私の上に影が落ちました。
意識を向けてみればそこそこ大型の鳥か何かのようで影もそれなりです。ま、大きさの基準もよくわからないのですけどね。この辺りで見かける生き物の中で言えば大型。そういうことです。
お、もう一匹? きました。時折交差するような動きがあります。何でしょう?
ああ、争ってる感じですね。それに鳥というより竜? ちょっと爬虫類っぽい見た目。翼のあるトカゲといった
でも、ま、生き物です。そういうことも当然あるでしょう。かと言って私の上でそういうことをしなくてもいいのになどと愚痴っていたところ、ちょうど私がのべぇっと広がってるその場所に、小型の物体が落っこちてきました!
いやちょっとその展開は読めなかったです。
上空のやつらは落下物にはお構いなし。それ奪い合ってたんじゃないの? と思いもしたけど。
一体何が落ちてきたんでしょう?
どれどれ。
こ、
こ、
これ、は……。
ひ、人だ~~!
驚きました!
びっくりしました!
たまげました!
大事なことなんで三度です!
い、いたんですね、人――。
感慨深いです。
はっ。
そんな思いに浸っている場合でわ、わっ!
慌ててずんずん沈んでいくそれをスライム体を伸ばし、くるりと包み込む。
水中で包んだそれをじっくり観察してみます。
むむ。
ああ、こりゃだめです。死んでます。
そう時間はたってなさそうだけど、体中いたるところ傷だらけ。ワイバーンの爪でやられた感じでしょうか。
まだ年端もいかない子供に見えます。
んー、男のあれがないし女の子かな? いやこの世界の人のオスメス判断が違えばわからないけど、今までいじってきた生き物、今のこの子の見た目を思えばまず間違いない。
いやほんと、私が知ってる人間そっくりそのものです!
なんでワイバーンに捕まったのかわからないけど、爪でズタボロになった衣服の上からでもわかる、やせ衰えた体を見るにあまりいいことはなさそうです。
っていうか衣服ある時点で文明的なもの、ある感じですよね。
どうして相当の長い時間、まったく見ることもなかったんでしょうかね? 衣服はどこぞの民族衣装? みたいな
ま、いいか。
そんなことより私はいいことを思いつきました。
この女の子の体。もらっちゃいましょう。
ずーーーっと長い間、この湖に居たけど、そろそろ
それにぼけーっと漂っているとですね、時折湖から出なきゃいけないって、妙な強迫観念みたいな思いが湧き上がってくることがあるのですよね。
私、病んでるのでしょうか? スライムなのに。
なので、やっと見つけた人の体ってこともあるし。
そもそも死んでるんだし、このままだと魚のエサになっちゃうだけだし。
もったいないですよね!
早速、勝手知ったる自分の特技。思う存分使ってみせようぞ~!
スライムぼでーで包み込んだボロボロで小さな体のいたるところから浸透していく。別に口やら耳やら人にもとから空いてる他の穴やら関係ない。表皮からで無問題。スライム体である私からしたら人体なんてザルみたいなもの。どこからでも侵入し放題ですよ、ふふん。
幸いこの湖は冷たいからそう簡単に生き物も腐らない。のんびりやっても問題ない。けど、ま、腐ってきてもなんとかしますがね。スライムなめんな!
生き物掌握の始めの一歩。頭から行きましょう。
人の体は初めて。脳みその記憶ってどうなりますかね?
今まで試した生き物は全然ダメ。記憶と感じれるものはひとっつも認識できなかった。自分の人間的な何かのせいで認識できないのか。そもそも無理なのか。知りたいもんです。
結論。
やっぱダメ。
この女の子の記憶はひとかけらも認識できなかったです。やっぱ死んでちゃダメなのでしょうか。
それとも、生きてたらワンチャン行けますかね? やばい、ちょっと確認したくなってきました。――また人を見つけた暁には試してみたい!
記憶以外の掌握は順調に進みました。
脳みそのあった場所はもう私で満タンです。使えない脳みそは
ここまでしたのは初めてです。何しろこれから
頑張らざるをえない!
この体、小さいので子供と言いましたが、この世界でもきっと子供ですよね。成人のサイズ感が不明なのでいったい何歳くらいとみるべきか? 日本人的感覚だと七、八歳程度に見受けられますが。実はこれで成人ってことないですよね? よね?
さて、外見なんですが!
肌は色白、顔立ちは痩せてほほがこけてさえいなければ、きっと可愛らしい子に見えることでしょう。目は赤みがかった茶色。髪は伸び放題で背中まで伸びるばっさばさな赤毛……だったんですが。ですが!
あろうことか私、スライムが! 浸透していくとともに変化してしまいました。
今では人としてどうかと思える淡い紫色になっちゃったりしています。目も髪とおんなじ系統。紫っぽくなってしまいました。
ついでに肌色も非常に不健康そうな青白い色になってしまい、なんかちょっと……、微妙です。スライム体質? あはは……。
乗っ取り作戦は無事? 完了です。
軽く体を動かしてみましょう。って、あれ、なんかおかしいな? と思えばまだ水中でした。自分に覆われてふよふよしていたので気付くのが遅れました。あ、息もしていません。人として息をしないようでは完璧とはいえません。これからは呼吸するようにしましょう。(ふりだけですが)
体を動かすことに慣れるため、ここから泳いで岸まで行ってみよう、そうしよう。
体を覆っていたスライムぼでーを自らに吸収させれば湖水が体に直接触れる。
つ、冷たい。
完全掌握で感覚も再現したおかげで冷たいが理解できる! しゅごい。まぁ理解できるだけでそれでどうってこともないのだけどね。凍死なんてしないし、そもそも凍らないと思う。いや絶対零度とかに放り込まれたらあれだけど。言い出したらきりないね。
考えてる間にもこのままだと沈んでいくのでささっと泳ごう。
ふがふが、もごもご。がぼぉ。
す、進まない。水ばっか吸い込む。
失敗した。私、そういやまともに泳いだことない。
いや、足の届くところでバシャバシャ行水やるぶんには大丈夫なんだけどね。うん、こんな行く先も見えない、ゴールのないとこ延々泳ぐのなんて無理ゼッタイ。
私は早々にギブアップし、スライムぼでーを再び出して波乗りよろしく上に乗って陸を目指すことにした、した!
次!