スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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この話はいるのか?

でもそれでも良ければお暇つぶしにどうぞ~


◆スヴェン隊長

 目に映る光景を見て俺は(なか)(あきら)めの境地で居た。

 

 あの幼子を見たその時から、得も言われぬ違和感を感じていたからだ。

 魔法を暴走させ気を失っていたその時でさえ、()()から微弱ながら魔力を感じ取ることが出来た。

 

 通常、他人の魔力など、魔道具(魔導ボード)なしに知ることは補助系を得意とする無属性魔法士ですら難しい。

 俺はもう一つの属性と立場上、特殊な魔道具が与えられていて、それを使えば人の魔力状態を確認することが出来る。ただ魔導ボードとは違い体に直接埋め込まれているがな。

 俺が気付けたそれに、アンヌが気付いていないことに少し疑問の余地があるが、幼子に(ほだ)されてその目も曇ったか。

 

 そもそも、気を失ってすら全身から感じとれるとはどういうことだ?

 

 剣士たちが好んで使う身体強化であれば使用中は強化部位に魔力を帯びるが、それもその時だけのこと。日常的に魔力を全身にまとうなど、それこそ魔力がどれだけあっても足りぬ。領都の守備隊の体力馬鹿がそれをやって、魔力欠乏症で三日寝込んだなどという話も聞く。

 

 このようなことが出来てしまうあの幼子は、何もかもが怪しく、不明な点が多すぎる。

 アンヌに気遣いし、隔離室にとどめ置くなどせず最初から領都へ送っておくべきだった。ダール伯爵家の当主、クリスティアンであれば良い方策も出たかもしれぬというのに。

 

 だが、(のが)した後ではそれもかなわぬ……。

 俺もまだまだ甘いということか。

 

 

 

「これはまた見事に貫通してるな、星空が綺麗だぜ!」

「……だが、破壊は最小限……だな」

「堅牢な造り、しかも対魔法結界が施された隔離室の天井をものともせず、見事に(つらぬ)いていますね……、ミーアはやはり火属性ということですか。詰め所の屋根を吹き飛ばしてくれたのも見事な炎の柱でしたし」

 

 その場にすでにいたクルトとエリク、そこに同行したヨアンも加わり、現場を見ての意見を交わしている。隔離室の周りには他にも爆発音に驚いた衛兵たちがぞろ詰めかけてきているようだ。

 

 

「うっ、なんだこれは。……皆、これを見ろ! あの小娘の一部……らしきものが落ちているが、まるで鋭利な刃物で切り落としたかのようだ。よく自分の体でこんな……」

 

 うむ、レナートも来たのか。

 何か見つけたか? あの物言い、気になるな。

 

「あ、アンヌは見ない方がいい、気分のいいものじゃないからな」

 

「……ううっ……、ミーアちゃん」

 

 

 結局、招集せずとも領境警備隊のソルヴェ残留組が全員揃ったな。

 しかし、アンヌは大丈夫なのか?

 

「ナイフとか何もなかったんだろ? 道具も無しにこんな切断。風属性魔法でしかありえない」

 

 ふむ、確かに。

 

「制魔陣があった上で風魔法を使い、しかもこのような形で無効にするとは……。非常識がすぎます。しかも流血もほとんど見られませんし、部位を切り落としたのち、すぐさまなんらかの治療を行った可能性すらあります」

 

 ヨアンの言葉にその場にいた全員が顔を合わせる。気落ちしていたアンヌですら呆然とした面持ちで皆を見ていた。

 

 頃合いと見て、俺は意見をぶつけ合う皆の中に手で制しながら分け入った。

 

「皆の意見はよくわかった、今後の判断の材料としよう。隔離室から脱走したミーアはすぐさま捜索するよう手を回す。それと今更だが後回しとなっていた、ソルヴェ村での経緯(いきさつ)を確認したい。後ほど招集をかけるので皆報告の内容をまとめておくように。以上だ、解散」

 

 皆がその場を立ち去る中、ヨアンと……アンヌがその場に残っていた。ヨアンは副官なので残って当然なのだが、アンヌ……。

 

「スヴェン隊長、その、あの……、スヴェン=ソールバルグ様」

 

「む、うぬ……かまわぬ。思うことがあるなら言ってみろ。聞くだけ聞いてやる。叶えるかどうかは別だがな」

 

 普段明るいアンヌの落ち込む様は見ていて楽しいものではない。しかも家名まで出して訴えるとはな。

 

「ミーアちゃん、ミーアは何も悪くないんです。詰め所の屋根を吹き飛ばしてしまったのだってワザとではないはずです。その、魔力のことは、えっと、スヴェン隊長がお戻りになられたら報告するつもりだったんです。結果的に事後のお話になってしまって……。とっても無邪気で可愛い子なんです。言葉だって一生懸命覚えようとがんばってましたし、ま、魔法だって、ついこの間、初めて知ったようですごく興味を示しちゃって……」

 

 一気にそこまで話し、黙り込んだアンヌ。

 しかし、言葉も話せず、魔法すらつい最近まで知らなかったというのか。それでいて属性魔法二つを使い、治癒を行い、皆は気付いていなかったが、なんらかの手段でここから逃げおおせたと?

 

「わ、私がいけなかったんでしょうか? ミーアちゃんに生活魔法を使って見せてからなんです。魔法をすごく教えてほしそうに私を見るんです……」

 

 再び黙り込んだアンヌ。結局何が言いたいのだ。

 

「ミーアに魔法を教えないようにと釘を刺したのは私です。なにしろミーアは魔器官の活性化(アクティベート)すらされていませんでしたので。全ては隊長の意見を伺ってからと……」

 

 ヨアンが口を挟んできたぞ。

 聞けば聞くほどミーアの特異性と不憫な境遇をこれでもかと押し込んでくるな。しかもなんだ、これではまるで俺が来るのが遅かったから暴発してしまったようではないか。

 

「そのぉ……」

 

 アンヌの澄んだ空色の目が、不安げに上目で俺のことを窺うように見て来る。これはあざといのではないか?

 

「ああ、わかったわかった。ミーアを探し出しても決して悪いようにはしない。脱走といったが、行方不明者と訂正しよう。捜索する者どもにもそのような扱いで接するように申し伝えておく。アンヌ=ハウゲン。これでいいな?」

 

「はい! ありがとうございます。スヴェン……隊長!」

 

 礼を言いながら、目尻に涙をためて出て行ったアンヌ。最初見せていた表情よりは幾分ましにはなったのだろう。

 

「ヨアン。お前小賢しすぎだろう。これは貸しにしておくからな」

 

 そう言った俺の言葉にヨアンは軽く肩をすくめたのみだった。

 

 

 ふん、やはり小賢しいやつだ。

 

 

 だが気分は悪くは……ない。

 

 




さーてそのころのミーアちゃんは?
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