スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
「嬢ちゃん、小さいけど歳はいくつなんだい? なんでまたあんな奴らに捕まったりなんかしたんだい」
膝上に私を座らせ、後ろから抱きかかる体勢に変えたデカお姉さんが、矢継ぎ早に質問してきました。その間ずっと私の頭を撫でています。
「ミーア、十さい。あるいてたら……、えっと、ここにいた」
ううぅ、質問内容と言語が入り混じってこちらの言葉でうまく言えない。覚えたてだし、仕方ないのです!
「ミーアちゃんね。十歳にはとても見えないがなぁ。それになんの説明にもなってないよなぁ」
デカお姉さんが、困った風に言ってますが、私も困っています。お相こです。
「オルガさん、そんなに急かしちゃダメだよ。きっと状況がちゃんとわかってないんだよ」
最初に目隠しを取ってくれた子です。やさしい。
茶髪に日焼けした肌。そばかすが目立つ素朴な感じの女の子です。
「そ、そうか。それはすまなかったな。くははっ、ドリスにはかなわんなぁ」
笑いながら私の頭をボスンボスン叩いてくる。軽いつもりなんだろうけど結構な威力でミーア迷惑。
部屋に居る五人は領都へ向かう隊商の一員だったらしく、三日前、移動中に襲撃に遭い拉致られた。この部屋は魔力が封印されてるので魔法も使えない。二人との話しでわかったのはそれくらいです。まぁ魔力の件はわかってましたけどね。
それぞれ自己紹介もしたけど印象に残ってるのはオルガとドリスだけで後の三人は名前は聞いたものの、終始おびえた感じで会話もほぼ無しでした。
とりあえず戦力になりそうなのはデカお姉さんことオルガくらいです。護衛についてた冒険者(当然私の知ってる言葉で訳した。胸熱!)で、女だてらにバスタードソードを振りまわしてたらしい。クルトと同類ですね……。
まぁ頼りにすることもないですけどね。
***
夜です。
食事は硬いパンと具の入ってないスープだけでした。出るだけましなんでしょうか? トイレはまた壺です。ひどい。一応仕切りがあるだけましでしょうか。体を清めるものもありません。そりゃ臭ってくるようにもなります。
衣服を枕に硬い床で寝ています。毛布やシーツが数枚ありますが、ひどく汚れてて使う気にはとてもなれません。オルガやドリスが一緒に寝ようと言ってきましたがひっつくと暑いし、(臭いし)、予定もあるので遠慮しておきました。
皆が寝静まったころ。
行動開始です。
だいたいの様子はスライム体による先行偵察と魔力により把握できています。
短い間ですがお世話になりました。
オリガとドリスに心の中でお礼を言います。
一緒に行動する手もあったのですが、やっぱ面倒くさいので却下としました。自由も無くなりますしね。私が居ないことにそのうち気付くでしょうけれど、その時は全て終わってるでしょう。今後の無事をお祈りしておきます。
手始めにドアと魔力仕掛けをなんとかします。
鍵の他に魔法的なにかが仕掛けられてます。魔力を抑える道具なら逆にその嫌の元を探せばいい。
探ったらすぐ見つかりました。あの幾何学模様さんが天井の
「カマイタチの鎌……いっちゃって」
真空の
ちょっと意味が分かりませんがイメージだからいいのです。最小魔力で効率的に、ずったずたにカットしてやりました。今度は自分じゃないから徹底的~!
最小魔力での鍵カットは金属相手には無理でした。ここはスライム本来の力。溶解液で溶かす! じゅわーっとあっさり溶けちゃいました。スライム怖っ! 我ながら恐ろしい。
これだけしておけば、私が失敗したとしてもオルガがなんとかするでしょう。きっと。
まぁ失敗なんてしないですけど。
念のためこの前使ったスライム光学迷彩を使います。見つかってもいいですけど、なるべく騒ぎは後回しにしたいですからね。スライムで全身を覆えば無音行動にもなり、光学迷彩と相まって隠密行動無敵スライム娘のできあがり!
外堀から攻めていきましょう。見張りは入り口前に一人。巡回してるのが二人です。案外真面目にやってて意外です。
「あ~あ、俺も中で騒ぎたかったぜぇ」
ぼやいてる見張りの人。騒ぐのは天国でどうぞです。あるかどうか知りませんけど。
順番にカマイタチさんで処理しました。
首のあたりをスパッとやれば簡単です。皆さん気付かない間に人生終わったと思います。人を
さて本命に突入です。
夜も遅いはずなのに、きゃっきゃうふふ、騒がしい部屋があります。中に居るのは男九人、女三人。オルガたちは狭くて臭い部屋で、硬い床でも我慢して寝てるのにいい気なものです!
「お頭ぁ、どうしたんです。いきなり真面目な顔になっちまって」
「うるせぇ、少し黙れ。なにか来やがるぞ」
あれれ。これは予想外です。
スライム目玉で覗いて見れば、一緒に飲み食い、大騒ぎをしていた周囲の人を黙らせています。こいつがお頭ですね。あらやだ見た目イケオジ。抱き着いてた色っぽいお姉さんも脇にどかしています。
「そこに居やがるのは誰だ? 見張りの奴らはどうした! 風の尖刃、シャープエッジ!」
いきなり魔法放ってきた!
壁越しに様子を窺ってた私に向かって一直線。完全に居場所ばれてます。放った魔法はあっさり壁を貫いてきました。
「ぷはぁ、やばかったです」
身体能力あげてるから何とか
なんかもうやたら判断が素早い感じ。なんでわかっちゃったの? 私の魔法のせい? そんなのでばれちゃうものなの?
このお頭さん、もしかしてすごい人?
もう面倒です。
一気に中に突入しました。
さっきの魔法が次々撃ち込まれてきますが魔力感知と身体能力でなんとかよけながら進みます。手間のかかる光学迷彩は集中の妨げになるので解いてしまったので私の姿は丸見え。この辺私もまだまだです。他の奴らも、まだ戸惑いながらも剣とかで次々切りかかってきたりと子供相手に大人げないです。
「なんだ、ガキじゃねえか!」
「お、おまえ、俺がさらってきたっ!」
外野がごちゃごちゃうるさいです。
もう魔力に遠慮いらないよね? レナートが使ってた魔法、今使えばいい感じじゃないかしらん?
「強風で辺りをぐっちゃぐちゃにかき乱せ~! ヴァイオレントウインド?」
唱えたとたんに部屋の中にそよ風を感じ、それが急激に流れ始めました。ちょっとこれ、私も巻き込まれちゃうんですけど~! 大きくなる前に床に伏せ、スライム体で慌ててぺったりへばりつきました。
「な、なんだよこれはっ」
「うぎゃぁ~」
「うそだろ? 今の上級魔法じゃないのか?」
そんな言葉が聞こえては流れて行きます。色っぽいお姉さんも出してはいけない声を出してます。
もう部屋の中で風が縦横無尽に吹きまくり、置かれていた物も飛ばされ砕かれ、大変なことになりつつあります。ちょっと天井がみしみし、石造りの壁がパラパラ粉を散らし始めました。そろそろ止めないと水車小屋崩れちゃうかも。
野盗どもは、飛んできた家具や破片、大小の屑が入り混じった暴力的な風で、すでに生きてるかどうかも怪しい様相です。
さあて、お頭さんはどこでしょう?
おっかしら!
…………。
あれ?
お頭いなーーい!
終わり切れませんでした……
つづくっ