スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
「なんなんだ、あのくそガキは!」
俺は今もアジトの広間で猛威を振るっているだろう小さな襲撃者を思い浮かべ、悪態をついた――。
ことの始まりは隊商襲撃成功を祝い宴を開いてる
魔道具のサークレットで、魔力紋を登録していない魔力が使われると、振動し装着者に知らせてくれるものだ。振動の強弱で大雑把ではあるが魔力の強さも知れる。この振動はうざったくて仕方ないし、感知範囲もたいして広くないが命には代えられねえ。
あとは俺自身、風属性の中級三位の実力を持ってる。これでも野盗に落ちぶれる前は……って、どうでもいい話か。とにかく使える魔法の中に
魔道具が振動し未登録魔力が使われたことがわかるやいなや、その魔法を使った。俺の実力では探索範囲は広くないがアジトで使う分には十分すぎて釣りがくる。
微弱だが魔力を使っている奴がいた。こそこそとアジトの周りをうろついてやがったが、こっちへ向かってきやがる。見張りの野郎共はどうした?
広間の前まできたと同時、俺は言葉をかけて動きを止め、機先を制して壁越しでも構わず攻撃を仕掛けた。当たるとは思わなかったが、くっそ、完全に避けきりやがった。見えてないはずなのに
そのまま突っ込んできやがった!
思い切りがいいな、おい!
つうか子供? 年端も行かねえガキじゃねぇか!
「くそくそくそ!」
俺はシャープエッジを連発した。なのにそれを全部避けやがる。
シャープエッジは出が早くて見切りも難しいから避けるのは相当難しい魔法なのによ。
野郎共も切りかかっていくが、すばしっこくて難なく避けやがる。普通おめぇみたいなガキはビビッてしょんべんちびって
仕方ねぇ、仲間も巻き込むが範囲魔法を使って奴の足を……、
「ぬあっ」
サークレットが馬鹿みたいに震えやがったからつい声を上げてしまった。なんなんだよ、おい。
あのくそガキ、やたらデカい魔力を練り上げてやがる。
「ちぃ」
俺はとっさの判断で隠し扉に飛び込んだ。これも魔力登録したものだけが通り抜けられる魔道具だ。
野郎共に声をかける余裕も、気に入ってる女を連れ出す余裕もなかった。
背後から野郎共や女たちの叫び声と共に凄まじい破壊音が聞こえてくる。一体何が起こってやがるんだ? くっそ、あのガキ、容赦なさすぎだろ!
俺はそう思いつつも今は逃げることに集中するしかなかった――。
隠し通路の先、水車の裏側に出た俺はとりあえずの一息をつく。水に浸かってずぶ濡れだが仕方ねぇ。なんとかあのガキが唱えたやばい魔法から逃げおおせた。なんなんだよ、あのガキは。あんな幼子といってもいいようなくそチビが、なんであんな魔法ぶっ放せるんだよ。詠唱は無茶苦茶だったが、ありゃ上級三位以上で使える魔法だろうが!
俺ですら死ぬ思いで一発撃てれば
これからどうする?
あいつはたぶんペトリが
ったくよう、余計なトラブル引き込みやがって。生きてやがったら、鞭打ち百は食らわせないと気が済まねぇ!
……とりあえずはあれだな。
拉致った女どもを人質にして、あのガキをどうにか抑え込むしかって、ぬおぁ、痛ぇ!
サークレットが痛みを感じるほど激しく震え出した。
「みーつけたっ!」
俺の背後、水車の先、川の深い方からかけられた幼子の高く甘ったれた声。
なんでそっちにいるんだよ? おかしいだろっ!
サークレットがビンビンに反応しまくっている。くそがっ!
「……シャープエッジ、シャープエッジ!」
振り向きざまに二連射した。正直もう魔力がやばい。
「なにぃ!」
居ないだとっ?
後ろに居たはずだ! どうして居ない?
サークレットは変わらず激しい反応のまま。
「こっちだよー」
頭上から聞こえる声。
くそガキの声に慌てて上を仰ぎ見る。
「うそだろ、おい」
空中に浮いたガキがいた。
高いところから俺を見下した目で見ている。くそくそくそ!
どうなってやがる!
「舐めやがってぇ~! 吹き上げ散らせ、ライジングエアッ!」
どういう理屈か、上で留まってるガキに突風を食らわせ、落ちたところをシャープエッジでぶち抜いてやる!
「うわー」
ガキめ、思惑通り体勢崩してそのまま落ちやがった。
「やったか!」
落ちたところを狙う!
「残念でしたー、おっちませんー。くふふっ、フラグ回収ー」
落ちたと思ったガキはまた空中で突っ立ち、俺の前で腕を組んでふんぞり返ってやがる。わけわからねぇ。
くそがっ、てめぇみたいなガキがそんな格好つけても
だがチャンス。奴はもう俺の目の前の高さまで下りた状態だ。
俺は渾身の魔力を引き絞り、今出せる最大の範囲魔法を放つ。逃がさねえ!
「指したる往く手を吹き裂き散らせ、ウインドブラストッ!」
封じ込められた空気が破裂したかのような勢いで扇状に広がりながら、研ぎ澄まされた風刃となって襲い掛かる。シャープエッジを束にして放ったかのように極悪だ。
すばしっこく逃げようが巻き込んで終いだ!
ひらひらな服着て、空中で無防備に突っ立っているガキが浴びればズタボロどころじゃすまないぜ。
ざまぁみろ!
「水の壁、ぶあつい奴、ウォーターウォール! からの~、氷の檻、お頭閉じ込めろ~、アイスケージ!」
「な、なにぃ!」
ふ、ふざけるな! 後退しながら川の水を盾にして防いだだと!
あの一瞬でどうしてそこまで出来るんだよっ!
つ、つめてぇ。岸に早く上がらねぇとやべぇ。
周りがどんどん凍ってきやがる。緩やかだが流れてる川なんだぞ!
くそっ、氷の壁が立ち上がってきやがって身動きとれねぇ!
なんなんだ。
なんなんだよっ!
あいつは、一体……。
うそ……だろ……、くそ……がっ――。
「勢い余って氷のオブジェもついでに完成~! ちょっときたな~い」
***
お頭さん、凍り付いちゃいました。川の中に直径三メートルのケージに入ったお頭像が出来ました。
かなり温度低いんだけど、溶けた後、中のお頭さんはどうなってるんでしょう?
また動き出したりするんでしょうか?
ま、どうでもいいですね。
「魔法もだいぶ慣れました。要領
さて、お掃除も終わりましたし、当初の目的のブツだけ頂いてトンズラしちゃいましょう!
長居しても面倒くさいだけですしね。
後始末は
ふふっ、これで町に入ってあれこれできます。
楽しみです!
やっと終わった……