スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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別に話は終わりません(笑)


短い旅の終わりに

 オルガから聞いた話からするとレイナールの町までは馬車で二日と少しくらいの距離らしいです。

 ついでに領都まではどれくらいかも聞きましたが、倍以上の六日はかかるそうでかなり遠い感じです。

 

 はぁ、徒歩だと普通に行けば五日くらいはかかる感じですね。萎えます。

 ぼっちコミュ障ぎみの元リーマンおじさんの私は、本来運動とか好きじゃありません。だんだん町に向かうのが億劫(おっくう)になってきました。

 でもそんなこと言ってても仕方ないし、気晴らしのご飯探しでもしましょう。アジトを出てからずっと平原のような風景が続いてましたが、ようやく森林地帯に差し掛かりましたし、ご飯はいっぱいいそうな感じです。

 

 

***

 

 

 森に入ったら入ったで延々森です。道は相変わらずでこぼこの荒れ荒れですが、迷わない程度にはしっかりした道なので助かります。

 ご飯はたくさんいたので腹ぺこ状態とはおさらばです。ああ、湖にいたころは腹ぺことは無縁だったのに、陸に上がってからは普通にお腹がすくようになりました。陸は湖みたいにそこに居るだけで栄養吸収できるって環境じゃないんですよねぇ。今思うとあの湖は栄養の宝庫だったのでしょうか?

 そういえば湖の生き物たちには謎器官、いえ、魔力受容体(マナレセプタ)もなかった気が……。スライムにも無かったけど、そもそもスライムには臓器の(たぐい)、何も無いね。

 

 うーん、謎です。

 

 

 森の動物や、時折でる魔獣をおいしく? 吸収し、夜は土製かまくら(マッドドーム)とスライム寝袋(シュラフ)でぐっすり眠り、旅は三日目を過ぎました。

 

 こちら側の陸地の生き物は弱いのでお食事は相変わらず楽です。

 やっぱヴィーアル樹海(でしたっけ?)の魔獣たちは一応強かったんですね!

 

 でも文明的な食事とはかけはなれたものに戻っちゃいました。

 ああ、アンヌに甘やかされた生活が懐かしいです。出されたお食事もちゃんと人の食べ物でしたし。食事もたまには普通に口からとらないとミーアの胃とか、内臓が退化してしまいそうです。

 

 この森で一番の敵は狼っぽい見た目の魔獣です。そのまんまですが、フォレストウルフ(森林狼)と名付けました。大柄な体格に魔獣らしく牙が異常に発達しているのが特徴と言えば特徴です。

 一匹だけなら雑魚(ざこ)ですが、必ず三匹以上で連携して襲ってくるのでちょっと面倒な奴らです。

 こういうすばしっこいやつらは、やっぱり風の魔法で対処するのが楽ちんです。お頭さんが色々見せてくれたので風魔法のバリエーションが増え、大変はかどります。

 

 火魔法は派手で、いかにも魔法って感じだけど、火事とか延焼が心配で使い処に困る印象です。

 

 そんな狼さんたちの群れを三つくらいは壊滅してあげました。魔力がしょぼくレセプタの発達程度もお察しです。あまりうま味はありません。

 

 

 更に二日が経ち、ようやく深い森も終わりが見えてきました。

 

「はぁ、やっと森を抜けられます。もう森歩きはお腹いっぱいです……(色んな意味で)」

 

 薄暗かった森の中から日の光が燦々と照り付ける広々とした風景へと、見える眺めが変化していきます。つられて気分も上がってくるというものです。

 

 馬車が襲われてるとかのイベントもなく、普通に森を抜けちゃいました。ちょっと残念です。

 

 

 遠くに何か見えてきました。

 

「おおぉ、あれ町? 町だよね!」

 

 小高いこの場所からだと町の様子が一望できます。周囲は壁とか柵で囲まれています。港寄りの町中に高い塔が見えます。川が町の中を縦断して流れ、その先には港らしきものも見えます。あの川は水車小屋まで(さかのぼ)れるのでしょうか?

 

 はっ。もしや川を下っていればもっと楽に町まで……。いや、源流は違うかもしれません! か、考えない様にしましょう……。

 

 とりあえずの問題として、町には普通に入れるのでしょうか?

 入口には関所があったり、門番みたいな人が居たりするのでしょうか?

 

 さすがにそこまではオルガにも聞けてません。お金払って通してもらえるならいいですが、通行証みたいなものがいるのであれば別の手を考えないといけません。

 

 まぁ、なんとでもなりますね、くふふっ。

 

 町の様子を眺めながらそんなことを考えていたら後ろから騒々しい音が聞こえてきます。

 何でしょうか?

 

 振り向いて見れば、おお、荷馬車です! 荷馬車がこちらに向かって砂塵(さじん)を巻き上げ、それなりの勢いで走ってきます。

 くうぅ~、もう少しタイミングが早かったら森の中で乗せてもらうとかできたかもしれないのに~。

 

 馬車を通すため、脇に避けます。

 

 ヒズメが地面をける音やガシャガシャキシキシ色々騒音をまき散らしながら荷馬車が通り抜けます。幌付きの荷馬車です。私も簀巻きにされてああいうのに放り込まれて運ばれたんだよねぇ、と感慨にふけってたら馬の(いなな)きと共に急停車しました。

 

 なにがって、馬車が!

 

 御者の人が下りてきました。でっかい人です。この人もローブを(まと)っています。砂埃(すなぼこり)もあるし日差しも強いですからね。必要でしょう。

 

 嫌な魔力も感じませんし悪い人ではなさそうですが……。

 

 

「え? ええっ?」

 

 

 私の前まで来るやぐいと腰をおり、フードで覆われている私の顔を覗き込んできました。

 

 

 目が合いました。

 相手の目が細まった気がします。

 

 そして私の目線はぐぅーーんと、一気に高くまで上がります。

 

 

「はっはーっ! やーっと追いついたぜ、このお転婆嬢ちゃんめ~!」

 

 さすがの私も唖然として、その声の主を見下ろします。

 

 そう、私はぐいと一気に持ち上げられ、高い高ーいをされていたのです。

 くぅ、元サラリーマンおじさんが、高い高い……。

 

 は、今はそんなことはどうでもいいです。

 

「お、おるがさん、です……か?」

 

 そう、声の主の正体はオルガさんでした。

 フードが外れ、肩までもない豪奢(ごうしゃ)な金髪が風になびいてます。(みどり)色の目がちょっと(とが)めるように私を見ています。

 

「そう、オルガさんだ! ミーア、お前ほんとやりたい放題してトンズラこきやがって……まったく」

 

 高い高いから今度は片腕で抱っこされ、頭をグリグリと勢いよく撫でられました。

 相変わらずの力加減で威力たっぷり。それもう撫でるとは言わないから! 頭の中のスライムがちゃぽちゃぽいいそうです。(いや比喩ですからね?)

 

「ええー、やっぱりミーアちゃんだった? もう、ミーアちゃん、心配したんだからね! 一人であんな危ないことしちゃだめだよー!」

 

 荷馬車からドリスまで飛び下りてきて、駆け寄って来るなり叱られました。

 

 

 どうやら見捨ててきたはずの二人と、期せずして再会してしまったようです。

 

 

 どうしましょう?




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