スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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説明回めんどくさい


レイナールの通行門

「おめぇ、可愛い顔してほんと、いい根性してやがるよなー」

 

 御者台に座らされ、オルガに散々お説教をされているスライム娘、ミーア十歳です。

 オルガやドリスを目の前にして逃げ出すわけにもいかず、そのまま抱っこで連行されました。

 

 もう日常的な会話ならほぼ無難にこなせます。一度聞いたら忘れない、底なしスライム脳の賜物。あとはどんどん語彙(ごい)を増やしていくだけです!

 

 それだけにお説教つらいです。

 無駄に長い結論の出ない会議よりつらいです。

 

「こーら、聞いてるか? ミーアがどうやってレイナールの町に入るつもりだったかは聞かねぇさ。だがな、ここで会ったからにはもうお前を一人っきりにさせるわけにもいかねぇ。例えお前がどんなに強くて、一人で生きていけると言いはったとしてもだ!」

 

 そう言ってオルガは綺麗な(みどり)色の目で私のことをジーっと見てきた。

 前見て欲しいなぁ、なんて……。

 

「はう……」

 

 どうして私なんかのことをここまで気にかけてくれるんでしょう?

 赤の他人で怪しさ満点、私なんかのことを……。

 

「ミーアちゃん、もう諦めなよ。オルガさんは君みたいなちっちゃな女の子を一人っきりで放っておけるような人じゃないんだからさー」

 

 幌の中で他の三人のケアをしてるらしいドリスが、御者台の方に顔を覗かせそう言い放つ。

 あの三人を見捨ててないだけでも、私からすればお人好しが過ぎる気もするけど。まぁそんなだから私のことも放っておけないのかも知れない。

 

「そうそう、オレ様の手の内に入ったからにはもう逃がしゃしないぞ、あきらめなー」

 

 お、オレ様って……。

 確かに大きくて男(まさ)りに過ぎるお姉さんだけど、素材は良いのだし、お化粧して着飾ればかっこいい美人さんになると思うんだけど……。

 

「はぁ~」

 

 私にしては珍しく大きなため息をついてしまいました。スライムらしくない。

 

 仕方ない、しばらく付き合ってみましょう。

 それでやっぱりダメとなれば、また逃げればいいだけです。

 

「クハハッ、ついにあきらめたかっ! そうそう、素直に大人を頼りな。よ~し、話が付いたところでさっさと町に入って面倒ごとを片付けるとしようぜ」

 

 

***

 

 

「よぉオルガ、お前さん徒党を組んだ野盗の一団に(さら)われたんじゃなかったのか? もうおっ()んじまったかと思ってたぜ」

 

「うるせぇ、このオレ様がそう簡単にくたばってたまるかよ。いいから、とっととてめぇの仕事をしやがれ」

 

 これ、町の入り口での門番さんとの会話です。

 どこのチンピラどうしの会話だよって感じで、長旅の末やっと町に到着した感慨(かんがい)も吹き飛んじゃいます。

 

「へいへい、わかりましたよ。なじみでも通行税はきっちり徴収するからなー」

 

「わかってる、わかってる。ほれ、ドリスは知ってるな、オレと同じで冒険者ギルド登録者だ。で、そこの女三人は商人ギルド。――で、子供はレイナールは初めてで、ギルドも未登録だ」

 

「あちゃ~、未登録ってまじか? おめぇ、面倒そうなのつれてきたなぁ」

 

「ふんっ、ほっとけ。ほらほら早くやれや!」

 

 オルガが門番さんをどやしつつ、町に入る手続きを始めました。ドリスはオルガと一緒に冒険者ギルドの所属を示すドッグタグみたいなプレートを見せています。

 

 三人のお姉さんたちもギルドのプレートを見せてます。

 

 レイナールの町に出入りする際は、通行門脇にある徴収所で身分証明となる所属プレートを見せ、通行税を払う決まりみたいです。その奥には衛兵詰め所もあり、不測の事態に備え幾人か待機してるそうです。ドリスがさっきドヤ顔で説明してくれました。

 

 それを踏まえ、問題は私です。

 

 当然私はそんなもの持ってません。

 一人の時はこそーりと……、アレするつもりでしたし。

 

 普通小さな子供が一人で通行門を抜けることなんてないそうで、親や保護者が同行し身元を証明し、通行税を払えばようやく通れます。

 

 それが出来ない私はどうするか?

 そう、困った時は金で解決です!

 

 通行保証金として金貨十枚を出せば、ひとまず入れはします。金貨十枚は職人さんとかの給金二ヶ月分ぐらいの価値で、農民とかだったら数年分の稼ぎが必要な額らしい。高額がすぎる。そして、格差ひど……。

 

 更に条件まであります。

 

 町に入ってからは、いずれかのギルドで見習い期間を経ることが必要です。期間はギルド判断ですが、問題を起こさず認められれば正式に所属が認められ、それで身分保障がギルド責任で受けられます。

 預けた保証金は半分取られ、半分戻ってきます。かなり理不尽な気もしますが、嫌なら町に入らなければ良いと言うことで、弱みに付け込んでひどい。

 

 ちなみに認められなかった場合、町から放り出され保証金も没収の憂き目となります!

 

 もう一つの手。

 

 町長さん、あるいは領主様にお願いして直接、ミーアの身分保証をしてもらうことです!

 

 

 あ、あり得ませんね、あはは。

 

 

 まあ親とかいて普通に生きていれば、そんな苦労はしなくて済む話ですし、もっと言えば町や村から出ないで、一生をその土地で暮らすのが当たり前なんでしょう。

 

 けど野良スライムではそうもいきません。

 

 別の懸案事項で、砦から逃げ出した私が悠長に登録なんかして大丈夫なのってこともありますけど。

 これはまぁ、私の扱いがどうなってるかわからないし今考えてもしかたない。

 

 

 

「それで未登録の嬢ちゃんは、オルガの隠し子か? 良かったなぁオルガに似てなく……いってぇ」

 

 オルガが門番さんを軽く小突きました。

 

「んなわけねぇだろが! オレ様はまだ十八だぞ。子供なんぞいてたまるか。だいたいオレはまだ……、って、何言わせんだよっ!」

 

「ぐほわぁ!」

 

 門番さん、今度は背中から思いっきりオルガに(はた)かれ、前に思いっきりつんのめってこけそうになってます。

 

 口は災いの元。気を付けましょう。

 

 それにしてもオルガ……、十八歳ですか。アンヌも確か十八と聞きました。

 ふ、二人が同い年(おないどし)

 

 ええええぇ……。

 人間の神秘を垣間(かいま)見た気がします――。

 

「くおらミーア、なにぼけっとしてるんだよ。通行保証金はお前が払いな。あぶく銭あんだろが?」

 

 オルガが私の頭をグリグリしつつ、ニヤニヤと訳知り顔で言ってきます。

 何をおっしいますやら? あれは正当な報酬です。

 

 プンスコ!

 

 

***

 

 

「よーし、通行税も払ったし、まずはギルドに顔を出さないとな。お前らもそれでいいな?」

 

 ドリスは勢いよく頷いてます。

 三人の女性もようやく安心した表情で頷いてます。まぁ、よかったね。

 

 面倒くさいことにはなりましたが、とりあえず町に入れました。

 かなりというか、すさまじく不安要素がありますが、まぁ、なるようになれの精神で行くしかないです。

 

 だめなら得意の逃げ出し戦法炸裂です!

 出来れば楽しくいきたいものですけどね。

 

 

 

 む、無理かな?

 




無理でしょ
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