スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
ブレンダさんは少々ふくよかな体形をした、お上品な雰囲気を持つご婦人でした。
雰囲気はほんとにとてもお上品なんですが、実際に触れあってみれば……、
……それ以上の人でした。
「ドリスちゃん、あなたって子はもう! 生きていたのならもっと早くに顔を見せに来てちょうだいな」
中に入ったら、そんな言葉と共にドリスがふくよかな体で抱き締められてました。ぎゅうぎゅうが過ぎて中身が口から出ないか心配です。
ふくよかなご婦人は私が入ってきたことに気付くと今度は標的を私に切り替えました。
背の低い私に目線を合わせようと勢いよくしゃがんだため、スカートがふわりと膨らみます。手で押さえながらいたずらっぽくも優しい目で私を見てきます。
「小さくて可愛らしいお嬢さん、うちの宿に泊まってくれるんですってねぇ。ここはね、そんな上等な宿じゃあないけれどね。もてなす気持ちだけは……どこにも負けないつもりなのよ? だからあなたもお家にいるつもりでね、ゆっくり体を休めてちょうだいね」
とても暖かくて優しい声です。
この人がきっとブレンダさんなのでしょう。笑うと目元に小じわが出来る、四十前くらいの女性です。白無地のフリルが付いた帽子の下からまとめられた艶やかな黒髪が
優しい手つきで頭を撫でてくれます。
ガサツなオルガと違って本当に丁寧に優しく撫でてくれるのでとても気持ちが良く、このままずっと続けて欲しくなります。
今までも私に優しく声をかけてくれる人はいました。アンヌには今でも会いたいと思います。初めて会った人で、見ず知らずの私に優しくしてくれた人です。
ドリスやオルガもタイプは違うけど、それなりに優しいとは思います。
でも違うんです。
これは反則です。
心をえぐってくるんです。
私が遠い過去に忘れ去った何かを思い起こさせる力をこのナデナデは持っているんです。
だからでしょうか?
中身は元日本人、中年リーマンおじさんのはずなのに……。
「あらあら、まぁまぁ」
「わぁ、ミーアちゃんの甘えん坊!」
初対面、今しがたあったばかりのご婦人にも関わらず、衝動的にその胸の中に自ら飛び込み、顔をうずめるように抱き着いてしまいました……。
柔らかくってなんだかいい匂いもしてすごく安心できます。
私は一体どうしてしまったのでしょう?
…………。
ま、まぁいいです。
黒歴史になってしまいそうな行いは、即刻、忘れましょう。
ドリスに連れられて入ったのは、少々きしむ階段を上がった二階の更に上、梯子みたいな階段を上った先にある三角屋根スペース、いわゆる屋根裏部屋です。
斜めになった天井途中に外から見た時に目に付いた小屋根付の出窓があり、多少なりともスペース確保に貢献してるみたいです。
普通の四角な部屋の方が余裕あがっていいのでしょうけど、屋根裏空間って隠れ家っぽくて、忘れそうになる男心をがっちり掴んできてちょっとワクワクします。
ドリス的この部屋にした理由は、単に屋根裏部屋の方が安いから――、だそうです。
そっすね……。
ちなみに宿では、というかどこの建物でもですが……、前世日本と違い、当然靴を脱ぐなんて文化はありません。なのでどこまでも土足のまま突き進みます。
ああ、いぐさの匂いのする畳が懐かしい。床に寝そべって昼寝したり、はだしで踏みしめる柔らかな絨毯の感触とか、もう味わうことは出来ないのでしょうか?
樹海をはだしで素っ裸のまま駆け回っていた私が言うのも何なのですが――。
「ふぁ~、無事に帰ってこれたよ~。野盗に捕まってからずっとろくな環境じゃなかったもんね。ああ、やっと体も綺麗に出来るし、少しの服を着まわしてたのも着替えられる~。ミーアちゃんは、とりあえずその辺の木箱にでも適当に座っててね」
抱えていた荷物を床にドサリと置き、ドリスはさっさと着ている服を脱ぎだします。部屋はベッドに一人用のテーブルとイス、それに今言われた木箱がいくつか置いてあるだけです。
「まずは水を用意だね~、アクアフォンス」
テーブルの上に置いてあった大きくて深い皿に手をかざしてそう唱えれば、いつかのアンヌみたいにそこに水が湧き出します。
ふふん、もう驚いたりしませんから!
防具代わりにもなるコルセットを外し、キャミソールすら脱いで、恥ずかしげもなくパンツ一枚の姿になったドリスは、そこで体を
ドリスは残念体形ですが一応女性らしいふくらみがないこともないです。ただ、すでに高校生くらいの見た目であり、胸部装甲のこれからの成長については……。
元日本の健全だったおじさんとしては、若い娘の半裸姿を見てグヘヘとなりそうなシチュですが、そんなことにはならず、もっと言えば
そう考えると私はなんて枯れ果てたおっさんなんだろう……と思うところもありますが、所詮私自身の現在の本性はスライムなわけで……、人を見て性的に興奮することはきっとないのだろうと思います。
とは言うもののミーアの体自体は人ですから、もちろん色々なことをいたすことは可能ではあります!
あ、けどまだ幼女なのでNGですからね?
「ふう、生き返った気がするぅ。ミーアちゃんも身ぎれいにし……、ああっ! っていうかさ! ミーアちゃん、いつ見ても汚れてないし、体臭とかも全然してなくない?」
ドリスが半裸のまま私に寄って来てクンクン臭いをかぎだします。髪も洗ったのか、普段おさげにしてる茶髪がほどかれ、その髪の先からぽたぽた雫が床に落ちてます……が、全く気にしてなさそうです。まぁ、床も土足ですしね。
けれどなにげに失礼な小娘です。
でもいい大人である私はそれに文句を言ったりはしませんよ。
「やっぱ臭いしない、臭くない! どういうこと~? ずっと一緒に居たのに~、私とかオルガとか言わないけど、言っちゃいけないけど、すっごく臭ってたと思うのに、ど、どういうこと~?」
スライムパックです。
もちろん言えないので誤魔化します。
「まほう……、かな?」
困った時は魔法で解決。これ
「ええ~! そんな魔法、あったかな? 生活魔法でさっきみたいにお水は出せるけど、びしょ濡れになっちゃうよね? それ私にも出来る?」
なおも追及してきますがそんなこと言われても困る。
「わかんない。できないんじゃない、かな?」
ドリス、スライムじゃないしね。
体の表面の老廃物だけ取り除くなんて器用な魔法……、頑張って、頑張りぬけば、もしかして、もしかしたら、出来る未来もあるかもしれないけど……。
それするくらいならお風呂入った方が早くない? とも思う。
ああ、公衆浴場とかあったりするのでしょうか?
「そんなぁ……」
ドリスが「ミーアちゃんの魔力ありきなのかなぁ……」などとぶつくさ言いながらも、あきらめたのかまた身だしなみを整えに戻っていきました。
おっぱい見せたままうろちょろしないで早く服着てください。
おじさんからの苦言です。
私は大らかなドリスの様子に呆れながらも、でも、こういう生活もまたいいものだと感じ、明日からもこんな日々が続くといいな……と、思わずにはいられないのでした。
続くといいね!