スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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ほんと中々に進まない……


属性魔石

 胸の奥で一瞬、何かが失われる感覚がしました。

 

 ほとんど同時にギュッと握り込んだ魔石がすごく熱くなっている感覚が伝わってきて、反射的にポイってしてしまいました。

 

「うそ……、なにそれ……」

 

 エリーネさんがテーブルに転がり落ちた魔石を見て、驚きの表情を浮かべています。

 

 ほとんど無色だった魔石は、今や色々な色が混ざり合い入れ替わりながら、目まぐるしい変化を繰り返す、けばけばしさを感じるほどの色合いを見せています。

 

「に、虹色の魔石……。なんて不思議な……」

 

「ほえぇ……」

 

 私も驚きのあまり、間抜けな声を出してしまいました。

 エリーネさんがその魔石を取り上げようと手を伸ばします。

 

「あっ」

 

 かすかに聞こえた、ガラスが(こす)れたような乾いた音。

 

 その音をきっかけに、魔石にピシリピシリと亀裂が入りだし、それはあっという間に魔石全体に広がっていきました。

 

「なんてこと……」

 

 伸ばした手を止めたエリーネさんが、落胆の声を上げます。

 

 無数の(ひび)は魔石の奥にまで及び、その形を維持することも出来なくなると、あっけなく崩れ、細かな結晶の寄せ集めになってしまいました。

 

 エリーネさんが魔石屑を摘まみ上げ、手のひらに落としてじっと睨みつけています。先ほどまでの派手な色彩はすでになく、元の透明に近い色に戻っています。

 

「はっ、み、ミーアさん、体に異常はありませんか? だるいとか、フラフラするとか……、少しでも変に感じることがあるのなら隠さず教えてください!」

 

 魔石屑を見ていたかと思えば、今度は肩を掴まれ、ゆさゆさしながら私の体調を気にしてくれます。

 

「はにゃにゃぁ~」

 

 そんなに揺らされたら、それこそフラフラします。

 エリーネさん落ち着いて!

 

「ご、ごめんなさい。大丈夫よね? 私はマスターを呼んできます。ミーアさんはここで大人しく待っていてくださいね」

 

 なかなかに貴重な体験です。動揺してるエリーネさんを見れるなんてスーパーレアに違いないです。

 小走りでギルドマスターを呼びに行くエリーネさんを見送りながら悦に入る私なのでした。

 

 

***

 

 

「ミーア、お前は普通に座学を受けることも出来んのか……」

 

 ギルマスは来て早々、疲れた様子をありありと見せて私に言いました。

 そんなこと言われても……、私は至って普通。何かしてやろうと思ってる訳じゃないです。

 

 私はとっても心外です、むむぅ!

 

「あぁ悪かった。ワザとじゃないことはわかってる、俺が言い過ぎた。だからそんなに膨れるな」

 

 ふふぅん、わかればいいのです。 

 

 私だってけっこう表情を作ることが出来るようになったのですよ?

 もうアンヌに心配かけることだってないはずです。

 

「魔石をおかしな具合に変化させたとか? 複数の属性色が入り混じったような状態だったらしいじゃないか。昨日の今日でこれとは、本当にお前というやつは……、っと、そんなことを言っていても仕方ないな。まずは俺も見てみたい、出来るか?」

 

 出来るかと問われれば、わからない! と答えよう。

 さっきも意識してああなったわけじゃないし……。

 

 でもミーアはばかじゃないので、魔力込めればいいんだろってことは察しが付くのです、えへん!

 

 なので石ちょーだい。

 私はギルマスを見つめながら、おもむろに手を差し出しました。

 

「ふむ、いいんだな? では、この空魔石で試してみて欲しい」

 

 手に乗せられた魔石はさっきの倍は大きくて厚みもあり、見るからに価値がありそうです。

 

 いいのかな?

 さっきみたく崩れちゃっても知らないよ?

 

「心配するな、崩してしまっても文句は言わん、気にせず存分にやってくれ」

 

 ほーそうですか。

 なら遠慮なしにやっちゃいます。

 

 要領も何もないので、とりあえずぎゅーっと、握り……締められないので、両手で包み込みましょう、そうしましょう。

 

 ()しくもお祈りのポーズみたいでイメージしやすいです。

 うん、祈る感じで魔石に魔力どんどん送ってみましょう。

 

 ふん、む~!

 

 さっき胸の奥で感じた喪失感。なるほど、魔器官(そう呼んであげます、悔しいけど)から魔力が抜かれる感覚だったんですね。

 

 いや、やばいです。

 

 空魔石ってば、乾いた砂のごとく、どんどん魔力を吸い込んでいきます。しかもさすがは大きな魔石です。さっきはすぐ熱くなっちゃいましたが、なかなかそうはなりません。

 

 とは言っても、さすがに吸い込む勢いに衰えが見えてきました。

 私はお祈りポーズをやめ、手のひらを広げて魔石が見えるようにし、様子を(うかが)います。

 

 みんなして魔石を食い入るように見つめます。

 

 変化が現れました!

 

 今度はじっくり様子を見ながら魔力を注いだせいか、それとも魔石が大きいからか……、色の変化は穏やかで、落ち着いた様子です。

 魔石の中心から表面に向かい色彩の対流がいくつも起きています。赤、青、緑に黄色……まさに属性を表すかのような色彩の流れを見せ、その色は次々入れ替わり留まることなく変化し続けています。

 

「ううむ、全属性を持つものが魔力を注ぐと、まさかこのような変化が起きるとは……、誰も知りえなかったことだ。驚嘆せざるをえんな」

 

「まるで魔石が生きているようです」

 

 うんうん、そうでしょう。

 

 おかげで私は魔力制御が大変なんです。

 でも、これは魔力を扱ういい練習にはなりそうです。

 

 じわじわ熱が(こも)ってきました。

 この辺りがきっと魔力の止め時です。

 さっきは持てないほど熱くなりました。きっと石のキャパを超えた魔力を押し込んだせいです。だから崩れちゃったんでしょう。

 

 

「できた。これで……いい?」

 

 私はやりきりました!

 魔力を注いだ魔石をギルドマスターに手渡します。

 

「これは……、とんでもないな」

「綺麗です。綺麗すぎて涙が出てしまいそう……」

 

 魔力を十二分に吸収した魔石は、止めた時点の色彩そのままに、鮮やかな虹色で固定化されています。多面体をした魔石は見る角度によってもその様子を変えますし、どこから見ても華やかで美しい色彩を見せてくれています。

 

 

「――わかっていると思うが、このことは当面他言無用だ。ミーア……、いいか? これはお前を守るための処置でもある。そのことは理解できるか?」

 

 ギルマスが真剣な眼差しを私に向け、問いかけてきました。

 うう、迫力あります。

 

「わ、わかる……」

 

 虹色魔石なんて、まぁ、何が出来るかわかりませんけれども、いかにも貴重なものっぽいです。

 やばい人たちに目を付けられたりするのは困ります。

 

「そうか、ならば良い。エリーネ、君も気にかけておいてくれ。ミーアは何をしでかすかわかったものではないからな。それとだ、この虹色魔石について詳細な……」

 

 ギルマスは矛先(ほこさき)をエリーネさんに変え、あれやこれやと色々話しています。

 エリーネさん大変そうです。いい迷惑ですね。

 

 まぁ私のせいなのですが。

 

 うん、これ以上面倒かけないためにも、ここは大人しく崩れた魔石をいじいじして遊んでましょう。

 

 この細かい結晶たちに魔力通したらどうなるかしらん?

 

 

 そういえば昼からは実技の予定でしたけど、何するんでしょう?

 最近ストレスがたまることが多いです。

 

 ドカーンと一発、ぶっ放してみたいんですけど……。

 

 

 ダメでしょうか?

 





余計なことはしないで!
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