スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
昼からは誰が見てくれるのかと思えばオルガでした。
ちっ、普通すぎてつまらないです。
「おい、ミーア。今、オレが来てガッカリしただろ? ったく失礼な奴だぜ。オレだって忙しい中、せっかく時間割いて来てやってるってのによぉ……」
ぐぬぬ、オルガめ、脳筋の癖に嫌味ったらしいです。
そりゃあ、確かにちょっというか、かなりガッカリしましたけれど……。
「あ~あ、せっかくお前の実力を確認するってことで修練場で思いっきり暴れてもらおうと思ってたんだがなぁ……。残念、やめとくかぁ?」
な、なんですと!
私はオルガの腰にぴとっと張り付き、お腹あたりからオルガの顔を見上げるようにして、我ながらあざといしぐさでお願いした。
「おるが……、ごめんなさい。わたしがんばる、いっしょうけんめい、やる! おねがい」
じーっとオルガを見つめる。
根性で見つめる。
「くはっ、ほんとにお前はよう、得な性格してるよ。そんな
くやし~、からかわれました。
おバカな脳筋に。
まぁいいですけどっ!
「むう……、どこで、やるの?」
抱き着いたまま聞いてみた。
「ギルドの奥から外に出られるようになってる。町中のくせしてすげえぞ。よっしゃ、じゃあ行くとすっか。おらよっ」
「にょわっ?」
一気に持ち上げられて、肩車された。
相変わらず私の扱いが雑いです!
おおっ、でも目線高くて気分良いね!
***
ギルドの受付前と酒場を通り抜け、会議室や物置っぽい部屋が連なる静かなエリアを通り抜けると、建物の裏側に抜けられました。
ちなみに「室内で肩車は危ないからやめてください」って、知らない受付嬢さんに怒られたので、すぐ下ろされました。やっぱオルガは馬鹿でした。
目の前は広々とした土地が広がっていて、ちょっと運動場っぽい感じです。でも両側に目をやれば、表からも見えた平屋の倉庫みたいな建物がまだ続いていて、ちょうど凹形状になってる感じだと思います。
ギルドの人が働いてる姿もちらほら見受けられます。きっと魔獣解体とかやってるわけですね! すごいすごい。
「ほれ、先の方に川が見えんだろ? その川にでけぇ中州があるんだがな、そこにだだっぴろいギルドの修練場があるんだ。普通は目の前の修練場で済ますんだけどな。今回は特別らしい、中州の修練場を使ってやるそうだ」
「すきにしていいの?」
私は今まで見せてきた表情の中でも、最高と思われる、可愛らしくも不敵に見える笑顔を作って見せました。
「お、おおっ、そりゃまぁ……、いいぜ。お前の能力を見たいってんだ。無理しない範囲でがんばって見せてやれや!」
珍しくちょっと引き気味なオルガに連れられ、川沿いに設けてある運動場、いえ、修練場に沿って進んでいけば、木造の立派な橋が架かってました。中州までは浅いのか葦原がかなり広がっていて野鳥が普通にいっぱいいます。
あれもごはんになるかな?
のん気なことを考えてる私なのでした。
***
「ほぁ~」
人が余裕ですれ違えるくらいの幅の橋を渡り、中州に乗り込んでみれば想像以上に広かった。
中州舐めてました、ごめんなさい。
右手側、川の向う側に高い塔が見えます。町に入る前、丘の上から見えたやつです。あれって監視塔だよね、アンヌたちがいた警備隊の砦にもあったやつです。
そのうちここにもワイバーン飛んできたりしてね?
ワイバーンは、以前せっかくやっつけたのに吸収することが出来なかったから、機会あればぜひお願いしたいところです。ワイバーンさん的にはいやでしょうけれども。
そして正面、こちらも川を隔てた対岸のかなり遠くにすごくデカくて立派な建物が見えます。かなり離れてるのにそれでもデカいんだから相当デカいです。今まで見た建物の中で一番デカいです。
デカいのオンパレードです。
「あれ、なに?」
「お、あれかぁ、あれはな、この町をソールバルグ侯爵家から任されているレイナール子爵の館だ。めんどくせぇから絶対関わりたくねぇ相手だぜ。おめぇも精々気をつけるこった」
そう言いながらいつもみたく頭にボスンと手を乗せられた。
私の頭は手休め台じゃないですの。
「ほれほれ、そんなことよりやっと着いたぜ。ここでならどれだけ魔法ぶっ放そうがお
オルガがここを管理してる人に話を通したので、もういつでもぶっ放せます。
修練場は例えていうなら打ちっぱなしゴルフ場とか、射撃場みたいなものをイメージすればいい感じです。四メートル間隔くらいで五人並んで魔法を放てる場所が確保されていて、前方はるか遠くまで軽く
放つ方向に二十メートル間隔くらいで丸太を組んで作った的が設置してあって、それが十個以上確認できるので、一番遠いところでだいたい二百メートルってところでしょうか。
でも正直これではしょぼい……。ストレス発散にはドカーンとやりたいものです。そういうのはまた違う場所で、なのでしょうか?
でもまぁ久しぶりですし物は試しですし、やっちゃうし。
「お頭の風、しゃーぷエッジ!、しゃーぷエッジ!」
まずは一番手前、お頭にいっぱい撃たれたので覚えたやつ。
サービスで二連発!
細く絞られた風が
ふふっ、風の制御完璧だね!
「続いてー、なんだっけ、しゃーぷエッジ束にしたやつぅ、ういんどブラストっ!」
狙いはさっきの丸太の二十メートル奥の丸太。四十メートル先。
私を中心に、バスバスバスッて感じで放射状に広がって粒粒穴を穿つ風が放たれちゃうよ~!
散弾みたいな
ちょっと広げすぎました、失敗失敗。
よーし、風が続いたし、次は久しぶりに火でいっちゃおっか。
「ちょ、ちょっと、ちょっと待てやミーア!」
いいところでオルガが後ろから羽交い絞めにしてきて、そのまま持ち上げられました。
小さな体がうらめしい。
「な、なに? おるが」
「何ってお前、そんなにぶっ続けでデカい魔力使って大丈夫なのかよ?」
何言ってるんでしょう、この人は。魔力なんてまだ全然使ってないし、むしろこれからが本番でしょうに?
っていうか使ってる魔力量がわかるの?
首をまわし、オルガの後ろを覗き見ればいつの間にかエリーネさんが魔導ボードを持ち、驚きの表情を浮かべて立ってました。当然横にはギルドマスター。ついでにこの施設を管理してる人。
ああそれ、人の魔力の状態見るやつ? アンヌも持ってたやつだ。離れた人の状態もわかるなんて、それってエリーネさんがすごいの?
まぁいいけど。
これで終わりになんかしないんだもんね!
「まだじゅんび運動! 今からがほんばん、だよ? はい、お約束、火のたま、ふぁいあーぼーる!」
オルガに抱えられたまま放ったそれは、一メートルに満たないくらいのサイズで、目標にと見据えた一番遠くの丸太目指し、すっ飛んでいきました。
これ、初めて撃ちましたけどうまくいきました~。
だってファイアーボールって、日本での火魔法認知度ナンバーワン(独断)ですから、それはもうイメージしやすくって、はい。
可哀想に丸太組みさんは当たったそばから、一瞬で燃え上がって爆発し、はらはらと火の粉が大量に舞い降りてくる有様なのでした。
気持ち良いです。
「こんのお調子もんが! 一旦休憩だ、休憩。今度撃ちやがったら、おしりペンペンするからな、覚悟しとけや!」
「ふぎゃっ」
ゴスンと頭を後ろから頭突きされました。
幼女虐待です。
好きにしていいって言ってたのに……、うそつき。
ぐっすん。
続くっ