スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
たまには外にでないとね!
見習い実習の一環で、久しぶりに町の外に出ます。
ここに来て以来なので、ニ週間は経ってるんじゃないでしょうか?
入るときは苦労した通行門も、ギルド支給の見習い登録プレートを見せ、通行税を払えばあっさり通り抜け出来ました。通行税は銅貨四枚必要で、入、出どちらでも払う必要がありとてもがめついです。でもレイナールギルド以外の登録ならその倍の八枚が必要となるそうなのでまだましなんだそうです。
「今日は門の外の農耕地で
ドリスが相変わらずの元気の良さで、受けた依頼の説明をしてくれています。
「
ネズミといえども魔獣、魔力を持つ生き物は侮っては大変危険です。
「でね、畑の下にいっぱいトンネル掘って、作物の根っこを食べちゃうし、夜は出てきてみのった実を食べるしで農家のみなさんが困っててね。駆除依頼だって常設依頼化してるんだけど面倒くさくて危険な割に取れる魔石は小さいからさ~、不人気な依頼なんだよね」
なるほど……、私も面倒なのは嫌なんですけれど、まぁ外に出られたことだし、その辺は我慢です。
門の外はいかにも中世の田舎といった感じの風景に変わりますが、こちらも少なくない人々が暮らしているようで壁の外郭にも集落が所々にある感じです。きっと私も町に入れなければその中の一員になっていたのかもしれません。
そうやって仕事の話を聞き、辺りの様子を見ながら目的地へと歩みを進め、半刻ほどで依頼主の農地へとやってきました。
そこそこ広い農地です。
依頼主に案内され、この範囲をお願いと頼まれたのは広さで言えばサッカー場を四面ほど敷き詰めたほどの面積でしょうか、これ見ただけでもうかなり面倒くさい。
「むうぅ……」
「もうミーアちゃん、そんな嫌そうな顔をしないの。ふふっ、これだけの広さを時間かけて作業すればミーアちゃんも健康的なお肌になれるよ、私みたいにさ!」
ドリスは小麦色のお肌で、そばかすがチャームポイントの、茶髪をおさげにした素朴な女の子です。高校生くらいと予想してましたが正解は十六歳。まぁまぁいい線ついてました。
でも私のお肌が青白いのはスライム体
なのでドリスが考えるようなことには決してならないでしょう、残念!
「じゃあ早速はじめよっか。やり方としては私が地下のネズミを探知して追い込むから、ミーアちゃんが魔法で仕留めるって感じでどうかな?」
どうかなと言われましても……、どうなんでしょう?
よくわからないですね。
けどまぁ……、
「うん、だいじょうぶ。やってみる!」
樹海の魔獣に比べれば楽勝に違いないです。
「あ、それと、畑を荒らさず、作物も傷めないようにしなきゃダメなんだからね? それが重なると減点なんだからね」
「はわっ、わかった」
まぁ、何ということでしょう!
やっぱ面倒くさいです、このお仕事。
「よし、じゃあ行こう!」
「おぉ……」
ドリスの指示で私は長く続く畑の
ドリスの斥候の腕のお手並み拝見です。
って言うかこの依頼に斥候はあまり関係ないのではないでしょうか?
「土壌にありし弱き震えをこの手に示せ、
遠目に地面に両手をついて詠唱を唱えるドリスが見えます。
探知魔法って感じでしょうか?
「見つけた! 掘り起こせ、ソイルディグアップ、アップ、アップ!」
早速見つけたみたいです。
実は私もこの辺りの気配を探ってましたからネズミの位置は
継続して使うのではなく、要所要所、ピンポイントで使ってこちらに向かうよう、うまく誘導しています。
「ミーアちゃん、そろそろ出るよ。失敗してもいいから、がんばってね!」
遠くから聞こえるドリスの声。
「進路をふさいで……、ソイルディグアップ」
「噴出させる! ヴォルケニックソイル!」
連続で違う詠唱。
私の目の前、三、四メートルってところで、硬いものが砕けたような音と共に地面から土が吹き出しました。ほんとに小さな噴出です。
でもそれで十分。
出来た穴からほうら出てきました。
「まってたよ~、
ほんと大きなネズミです。
某ランドのネズミと違い、女の子が見たらキャーキャー悲鳴をあげそうな外見をしています。
濃い灰色をしたまるまる太った体に、とがった耳、鋭い爪を持つ短い手足。赤い目がこちらを見つけて睨んでいるような気がします。太い尾は途中から三つに分かれ、それぞれが鋭くとがった
予備動作も音もなく、至近距離からそれは飛んできました。
けれど、それは目的を果たすことなく空中で唐突に静止しました。いえ、よく見れば、何かに突き刺さって止まっています。
刺さっているのはネズミが放った
ふふん、出て来るとわかっているのに防御をしておかないなんてことはありえないです。
ネズミが出て来る前に張っておきました――。
「透明で冷たい氷のかべ、でもめちゃくちゃ硬い、アイスウォール」
――です。
水の壁よりめちゃ薄いくせに超硬いです。
むっ、更に追加が三本飛んできましたがムダムダムダー!
合計六本、二連射してきましたが、どうやらそれで打ち止めのようです。新たな針毛をそう何度も生成出来ないのでしょう。大きいネズミとは言っても所詮はネズミ。この私に盾突こうなんざ十万年と四日早いです!
効かないとなればさすが野生、逃げようとしやがりましたがそんなことさせません。
「とがった針、うちだす! アイスニードル」
くふふっ、
針は外れることなく、ネズミの背中から喉元に抜けるように刺さり、短い悲鳴と共にあっさりこと切れておしまいです。
「ミーアちゃん、さすがだねぇ。お姉ちゃん手出しする必要が全くなかったよ。っていうか私よりよっぽど手際が良くて、こっちが教えて欲しいくらいなんですけどっ」
ドリスはすぐさまこちらに駆け寄り、私のことを見守ってくれてました。冒険者のたしなみ、ポーションもしっかり準備していたようです。
そうポーション、あるんですねぇやっぱり。どんな効き目なのか試してみたい気もしますが、相応にお高いようなので使わないに越したことはないです。
「ありがと。よゆう! どりすはだいじょうぶ?」
「もちろん! 私の魔器官深度は三だけど、少ないなりに魔力消費を抑えるよう工夫してるしね。ふふ~ん、駆除はこれからが本番だよ~」
こんな調子で駆除を進め、エリア分けしたすべての
***
「おおぉ、七匹も仕留めてくれたか。まだ若い娘さんたちなのにすごいのぉ」
依頼主さんに褒められ、私は頭まで撫でられ……、なんとも言えない気分。
締めに依頼票に魔力を通してもらい、魔力紋が浮かべば当人確認と了承となり依頼任務完了です!
依頼主さんに「またぜひよろしくなぁ」とお礼とお見送りを受けつつ帰途につきました。
「この調子でがんばっていこうね。ミーアちゃんなら見習いなんてすぐに終わりそうだよね~! でも冒険者登録って十二歳からだし、あと二年は我慢だねぇ」
ええ?
ちょ、ま!
じゅうにさい?
ええ?
私は呆然となり、ドリスの声掛けにもしばらく無反応のまま立ち尽くしていたのでした。
人の話はちゃんと聞かないとね……