スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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すれ違う思惑

 実習と言う名の駆除仕事を終えたものの、衝撃の事実を前に意気消沈してギルドへの帰途についています。

 

 終始上の空で、立ち止まってしまうのでドリスがずっと手を引いて歩いてるくらいです。

 

 冒険者登録が十二歳からだなんて一体誰が決めたのでしょうか?

 見つけたらスライム酸で跡形もなく溶かしてやって、そんな規則なかったことにしてやるのに!

 

 くぅ~、出来るわけもないことを考えてしまいます。

 はぁ、一気にやる気がなくなってきました……。

 

 そういえば私は今十歳ということですが、何ヶ月くらいなんでしょうね?

 誕生日がわからないのですから、もう十一歳になっていてもおかしくないくらいです。

 

 だとすれば待つのはあと一年くらいに短縮します!

 

「どりす! わたし、たんじょうびわからない。じゅうにさい、いつくる?」

 

 疑問に思ったら即行動。早速ドリスに聞いてみました。

 

「うーん、どうなんだろ? たぶん見習い登録時にその辺なにか考えてあるかもしれないし、ギルドに戻ったら聞いてみよっか?」

 

「うん!」

 

 ドリスの提案には一理あります。

 あのギルマスやエリーネさんならその辺、抜かりなく処理しているはずです。

 そうと決まれば急ぎましょう!

 

「ああ、こら。急に走り出さない~。ふふっ、ほんと、しょうがないんだから~」

 

 

***

 

「ミーアさんの生まれたというソルヴェ村は古いしきたりが引き継がれていたようで、ギルドの資料によると年齢についても一般的な数え方をしていなかったことがわかっています」

 

 エリーネさんに依頼達成の報告に続き、流れで自分の誕生日のことを尋ねたところ、なんか面倒な話が始まりました。

 

「年齢で言えば、一般的には誕生後、一年経過したところで一歳となりますが、ソルヴェ村では生まれた年を一歳と表していました。年を越すことで加齢していく考えなので何月に生まれようが同じで、翌年になった時点で一斉に二歳となります」

 

 うげ、なにそれ!

 要は満年齢じゃなく数え年ってこと?

 

「ですのでそれに(なら)うならミーアさんは来年十一歳になりますが、当ギルドもヴィースハウン領も年齢は満年齢を基準としています。従ってミーアさんは八歳と何ヶ月かになっていることになります」

 

 くう~、藪をつついて余計まずいことになってしまったんですけど!

 まさかの年齢下がっちゃた事件です……。

 

「み、ミーアちゃん……」

 

 ひどく落ち込んでしまった私を見かねたドリスが、頭を撫でたり背中をさすったりしてくれますが、残念ながら私のテンションだだ下がりです……。

 

「はいはい、まだ続きがありますよ。話を戻しますが、管理の都合上誕生日がないというのは困りますので、ギルドが独自に入手した情報によりミーアさんが保護された日時を誕生日とすることで結論が出ています。具体的には七月七日です。良かったですね、誕生日は越えていますから現在は既に九歳となっていますよ。それとミーアさん、この情報は支給した見習い登録プレートの内容を閲覧してもらえば確認できたはずですが?」

 

 ぐはぁ!

 

 しょ、しょんな……、面倒くさくてまだ一度も確認してないぃ。

 だって、魔装ボードとやらで閲覧しなきゃだし、手数料いるし、まだ見るようなこともしてなかったし……。

 

 ああ、私の冒険者ギルド正式登録の野望が大きく遠のいていく~!

 

 見習いをあと三年!

 三年近くも続けなきゃいけないの~?

 

 

 そんな時です。

 ギルドマスターが現れたのは。

 

「おおミーア、ちょうど良いところに。明日の朝、九の刻にギルドに来てもらいたい。お前に行ってもらいたいところがある。迎えの馬車が来る手筈となっている。もちろん私も同行する」

 

 むむぅ、急に言われてもねぇ。

 それにどこに、何をしに行くというのでしょう?

 

 私は(いぶか)しんでギルドマスターを上目で睨みつけます。

 

「そう睨むな。この場で詳細を言うことは出来ないが、お前にも身に覚えがあるだろうことについての話だ。拒否することは出来ないところからの呼び出しだ。しかし、悪いことにはならないはずだ。素直に来てもらえると助かる」

 

 ギルドマスターは忙しいのかそれだけ言うとさっさとその場から去っていきました。

 

 冒険者ギルドではギルドマスターの言うことは絶対です。領主様、町長……いえ、ここは町長じゃなく代官様が治めているそうですが、そんな偉い人たちの次に偉い人なのです。

 まだ仮登録とはいえ、従わざるを得ないのです。全てのギルドにおいて、そういう誓約をもって登録しているのです。

 

 ちょっと不穏な空気になりながらも私とドリスはその場を後にしました。

 

 ちなみにしらけちゃいましたが依頼達成報酬は銀貨三枚。

 銅貨なら六十枚の稼ぎです。ネズミのお肉は依頼主さんに譲渡し、小さな魔石だけゲットしてきたので、その辺も鑑みての報酬となっております。

 

 

 

***

 

 

 ブレンダの宿でおいしいごはんを頂き、部屋に戻って一日の汗を(ぬぐ)うわけですが、ドリスと共同生活を送るうえで綺麗すぎると訝しがられるため、敢えてその時点ではスライムパックはしていません。

 

 生活魔法で水を出し、濡れた布で拭き拭きします。

 

 ドリスの背中は私が拭う役目です。前はいいからと断られますが、「あ、すべった」と私はわざとらしく胸にまで手を回し、成長するよう願いを込めて揉んであげます。

 

「も~、ミーアちゃんったらいつもいつも、絶対わざとでしょ~」

 

 そう言ってきますが別に怒ってなくて、かすかな記憶にある母親を連想しそうな優し気な目で見て来るのです……、むむぅ。

 

 仕返しとばかりにドリスは全身くまなく拭おうとして来るので、きゃっきゃと逃げ回る私です。

 でも結局捕まって、言えないところまで全て拭い倒されるわけですが。

 

 髪の洗いっこだってします。

 

 ドリスの茶髪はくせっ毛なので、私の淡い紫色した癖のない長い髪をとてもうらやましそうに撫でながら洗ってくれます。

 私はこっそりとスライム謹製トリートメントもどきを使い、ドリスの髪を洗ってあげています。効果が表れた時のドリスのことを思うと思わず硬い表情筋にも笑みが浮かぶというものです。

 

 恥ずかしくも何とも穏やかな日常です。

 でもいい歳したおじさん精神のはずの私は、一体何をやってるんでしょうね。

 

 

 とはいえ、寝入ったころ合いを見て完全版スライムパックをしていますけれど。

 ドリスすまない。中途半端に汚れたまま寝るなんて元日本人の心が許さないのです。

 

 

 

 木箱ベッドに横になり私はギルドでの出来事を振り返ります。

 

 エリーネさんは言いました。

 

「ギルドが独自に入手した情報によりミーアさんが保護された日時を誕生日とする――」

 

 私が保護された日。

 独自に入手したって……、それがわかるのはアンヌがいたところ以外にありません。私を閉じ込めてくれちゃったところ。なんちゃら警備隊だっけ?

 

 その警備隊とギルドで何らかの繋がりがあって、私のことバレちゃったのかもしれません。

 

 正直、あそこの人達には色々良くしてもらったし、何よりアンヌがいます。

 嫌いなわけではありません。

 

 でも、それでも隔離された理由、私が死んだかのような状態を見られています。

 

 それとギルマスのさっきの要件。

 一体どこからの呼び出しでしょう?

 

 すぐどこに行くか教えてくれなかったことといい……、もう怪しさMAXです!

 

 

 

 楽しい日々でしたが……。

 

 

 もう潮時なのかもしれません。

 

 

 残念です。

 





はやまらないで~
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