スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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予想通りが過ぎる?


ミーアの行方

「ブレンダさん、ミーアちゃん見ませんでした?」

 

 朝起きたら木箱ベッドにミーアちゃんの姿がない。

 

 ミーアちゃんのベッドは収納用の木箱を並べ、その上にシーツを重ねただけの簡易なものだから寝心地最悪だろうし、早くちゃんとしたベッドを仕立ててあげないといけないね。

 最初、私のベッドで一緒に寝ようって勧めたんだけどね、やっぱ一人がいいみたいで木箱を簡易ベッドに仕立てたんだよね。まぁ、毎日一緒だとやっぱ落ち着かないかなと、残念だけど私も諦めたよ。

 

 っと、そんなことは置いといて、朝からどこへ行っちゃったんだろ?

 下に降りて、忙しそうに朝の支度をしているブレンダさんに尋ねてみた。

 

「ああ、ミーアちゃんならちょっとお散歩って言って半刻くらい前に出かけたわねぇ。背負い袋をしょって出て行ったから、朝市でも見に行ったのかも知れないねぇ……、聞いてないのかい?」

 

「うん、起きた時はもう居なかったから……。思い付きで出かけたのかなぁ? 小さい女の子の一人歩きは危ないけど……、ミーアちゃんだし大丈夫か。大好きな朝ごはんまでには戻ってくるでしょ」

 

 亭主さんの朝ごはん、いつもとても美味しそうに食べるんだよね。

 

 その時はそれくらいの軽い気持ちでしかなかった。

 

 

***

 

 

 結局、朝ごはんの時間を過ぎてもミーアちゃんは戻ってこなかった。八の刻の鐘も鳴り、ギルドに向かわないといけない時間が刻々と近づいてくる。

 

「おかしいよ、ミーアちゃん帰ってこない」

 

 ギルドマスターに来るようにと言われたのが九の刻だから、そろそろ出ないと間に合わなくなっちゃうよ。

 

「ドリスちゃん、もしかしてあの子一人で向かっているかもしれないでしょう? ミーアちゃんが帰ってきたら私が責任もってギルドに連れて行くわ。だから一度ギルドの方に行ってみてはどうかしら?」

 

「そ、そうかな? う~ん……」

 

 ああ、こんな時は風魔法の気配察知(ウインドセンス)が使えればと思う。風属性に才がない自分が恨めしいよ。

 私の地振動(ソイルバイブレート)探知(ディティクト)は個人を特定するほどの確度や精度はないし、ましてや町中。余計無理ってもので止めに探知範囲も狭い……、悔しい!

 

「じゃあお願いしていいかな?」

 

 ブレンダさんの言葉に私はすこし躊躇(ちゅうちょ)したものの、自分の魔法はあてにならず、他に出来ることもない。

 

 その言葉に甘えてギルドに向かうことにした。

 

 

 

***

 

 

「なんだと、ミーアの行方が知れないというのか?」

 

「はい、ドリスさんは朝起きた時点で姿を見ておらず、唯一、宿のブレンダさんがミーアさんを見かけていますが、散歩に行くと言っていたそうです。食事の時間になっても戻って来ず、それを最後に姿を見たものはおりません」

 

「うーむ、なんということだ。まさか姿をくらますとは。いや、まだそうと決まったわけではないが……。だがしかし、迎えの馬車はもう来てしまうぞ」

 

 俺としたことがミーアへの接し方に気のゆるみがあったことは否めない。昨日のあの話の持って行き方は、今にして思えばかなりまずかった……。

 ミーアは色々非常識なことを仕出かしはするものの、基本従順で目上の者の言うことも良く聞いていたから、接し方に油断が出てしまった。以前スヴェン様のところから逃げ出したという前例があるというのに。

 

 一人で生きていたせいなのか、ああ見えてあの幼子は自分の置かれている状況に対する判断が早い。いや早すぎる。

 

「変に話を伏せず、しっかりとどこへ何をしに行くと伝えるべきだったか……」

 

「私も同罪です。少し事務的な対応を取り過ぎてしまいました。冒険者登録はあの子にとって、とても大事な目標だったでしょうから年齢のことではかなり気落ちしてしまったようです。――特例処置の話、気を抜いてしまうといけないからと、ミーアさんにはまだ説明していませんでしたが、先送りせず早く教えてあげればよかった……と、思わずにはいられません」

 

 特例処置……か。それよりもすごいことになるかもしれなかったんだが。

 ここで二人して過去の行いを悔やんでいても話は進まん。

 

「まあ済んでしまったことは仕方がない。エリーネは捜索に出ている者たちの取りまとめと進捗報告を定期的に頼みたい。高くつくが連絡は全て魔伝書簡(マナエピスル)でかまわん。気が重いが俺は来た馬車に乗り、レイナール卿の館へと出向かねばならん」

 

「はい、おまかせください」

 

 

***

 

 

「あの小娘、またしてもか。しかし、どうして行方をくらます必要がある?」

 

 ソールバルグ卿の待つ部屋に入室し、ミーアの姿がないことを報告した際の第一声がこれである。あなたがそれを言うか? と思ったが……、どう説明したものか頭が痛い。

 

「それについては私からミーアへの話の伝え方に問題があったかもしれません。こちらの意図としては招へいに近いものだったのですが、どこへ行くか、誰から呼び出されたかも告げておりませんでしたので、それがミーアの警戒心をあおる結果となったものかと存じます。貴重なお時間を無駄にしてしまい大変申し訳ございません」

 

 ひたすら(こうべ)を垂れることしか俺には出来ない。

 

「そんな、ようやく会えると……、ミーアちゃんはもう居ないのですか?」

 

 ソールバルグ卿の後ろに控えていた、淡い金髪に空色の目をした美しい女性が、前に進み出て俺に問いかけてきた。紹介はされていないがこの方も貴族で間違いないだろう。しかもミーア絡みとなれば、きっとケーヴィック砦での関係者なのだろう。

 

「アンヌ、そう結論を急ぐな。まだ居ないと決まったわけではない。この者たちが今も探させているのだ、あきらめるには早いぞ」

 

「は、はい。後ろから突然すみませんでした」

 

「良い、そなたのミーアを心配する気持ちは理解している。ボリスよ、前後したが紹介しよう。こちらの女性はハウゲン子爵令嬢だ。領境警備隊での私の部下でもある。以前話したかどうかわからんが、ミーアを最初に保護したのはこの者だ」

 

「アンヌ=ハウゲンです。この地でミーアちゃんが過ごしていると伺い、居ても立っても居られず……、スヴェン様を追って来てしまいました」

 

 色白で華奢な姿ながらその空色の目からは強い意志が感じられる。お貴族様とはいえ、さすがは領境警備隊の一員といったところか。

 

「レイナールの冒険者ギルドでギルドマスターを拝命しております、ボリスと申します。以後お見知りおきください」

 

「こちらこそ、いきなりの非礼をお詫びいたします。以後よろしくお願いします」

 

 

 やれやれ、ミーアにはとことん苦労させられる。

 が、今回ばかりは俺も少しばかり責任を感じるからな。可憐なアンヌ嬢のためにもなんとかしてやりたりところだが。

 

 ミーアよ、遠くへ逃げ出してしまうような早まったことはしないでくれよ。

 

 頼むぞ!





ミーアさ~ん、出ておいで~
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