スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
ちょっと短め
私は呼び出し主が気になるため、ギルドに寄こされた立派な馬車にこっそり便乗することにしました。
黙って姿を隠したせいでドリスには悪いことをしました。
けど変に感傷に浸って声をかければ、ろくなことにならないと相場は決まっています。
騒ぎにもなるでしょうけど、後のことはもう知りません。
どうせここには戻るつもりもないですし。
馬車での私の席は、見晴らしの良い
ミーアの体の機能を極限まで落とし、さらにスライム体による光学迷彩で体を隠すことで、気配と視覚両方から見つかりにくくなるよう工夫しました。
それに屋根の上って案外気付きにくいんじゃないでしょうか?
わからないけれど。
あのままギルマスについて行ったとしても、もしかすると問題は起こらなかったかもしれません。
けれど、その逆も
呼び出し主が私の想像通りなら、素直について行ってまた前みたいに閉じ込められてはたまりません。
ただ、好奇心を抑えることも出来なかったため、今こうしてここにいます。
もちろん何かあれば自重なんてせず、全力で逃げ通す所存です!
***
結果は予想通りでした。
馬車は代官様の館へと向かい、そのまま広い敷地内へと吸い込まれていきました。
ギルマスさんは私が居ないことで怒られちゃうかもしれませんね。
ま、知ったことではありません。
私は馬車から離れ、館の壁伝いに屋根に上がります。ギルマスの動向を探るため、久しぶりに目の代わりとなるスライム体を伸ばしますが用心のため、一つだけにしておきましょう。
お貴族様の館だけに何があるかも知れませんし、出し過ぎは私自身の隙に繋がってしまいますからね。
さて、馬車に乗っていた時同様、気配を消し動向を
***
執事らしき人に案内されて歩いているギルマスは、ギルドでの様子と違いかなり緊張しているようです。館の佇まいは前世での欧州貴族の館を
それにしても前から思っていることですが、人が暮らしていく中で、建物や道具、服装に趣味趣向、食事に至るまで……、人にかかわってくる様々なものが前世の物と似通ってくるのは必然と言うものなのでしょうか?
私がこうして生まれ変わっていることも含め、とても興味深いです。
とは言うものの、ギルマスの緊張はきっと私のせいに違いないですね。
案内された部屋の中でギルマスともう一人、見覚えのある強面イケメンが話を始めました。
アレが呼び出し主に違いなく、聞き取った会話から強面さんはソールバルグ卿ってことがわかりました。
ちょっとハンバーグっぽいって思ったのはナイショです。
あと二人居たのですが、その中の一人のせいで私はギルマスたちの話なんかどうでもよくなってしまいました。
「あ、あんにゅ……」
もしかして……とは思っていましたけれど……。
あまりにも久しぶりに見る、無知だった私にこの世界で生きるための知識を色々教えてくれたアンヌが居ます。
何より私にずっと優しくしてくれた、大事な大事なアンヌが居ます。
私の舌ったらずな口は相変わらず名前がちゃんと言えません。
アンヌが聞いたら、ちゃんと言えるまで何度でも言わせられるかも知れないです。
ほんとうに懐かしいです……。
それがちょっとした隙を生み出しました。
私のホッとした気持ちが、抑えていたミーアの魔力をほんの一瞬、普通だったら気にすることもないほどの一瞬だけ、けれど大きく漏らしてしまいました。
「誰だ!」
うっそでしょ?
強面イケメンさんがそんな一瞬の私の魔力に気付きました。
私自身は館の屋根の上に居るにもかかわらずです。
特に魔力測定の魔道具とか持っている様子もなかったのに……。
ミーア、一生に何度目かの不覚です!
もっとアンヌの姿をこの目に焼き付けて置きたかったのに~!
さっきのアレに気付ける人です。ここに居続けるのはちょっとよろしくありません。
残念ですが撤収です。
っていうかあの強面さん、窓枠からにゅるりと侵入しているスライム謹製目玉を確実に認識してない?
ヤバい、早く引き戻さなきゃ!
「風の尖刃、シャープエッジ」
くぅ!
スライム体を戻すタイミングが遅れました。
「あっ」
視覚と音声の情報が途切れました。
切断された……かな。
遠くなり、長く伸びてしまっていることが
完全に油断していました。
情けないです……。
すぐ取り戻せれば別ですが、離れてそのままの状態が続けばいくら万能スライム体であっても、もう私の意志ではどうすることも出来ません。
以前にもありましたが、魔力での繋がりがなくなったスライム体は、私という意志の下で連携していた命令がリセットされてしまい、その場にある
そこにはもう自ら動く意志というものはありません。
ただ、厄介なのがスライム体自身、微力な魔力を出しているのでなかなか死滅しないことです。
ものの数十秒で伸ばしていたスライム体は戻って来ましたが、やはりちょっとだけ減っています。小指の先くらい、ほんのわずかな量ですが、それだけあれば二、三日は持つかもしれません。
ごめんね私。
でも、出来れば早く死んじゃってくれると助かるよ!
おっと、のんびりしてはいられません。
あのお貴族様なら、魔力の
一体どうやってぷにょや私の魔力に気付けたのでしょう?
私のスライム体謹製魔力センサーみたいに魔力感知が出来たりするのでしょうか?
アンヌとの再会も果たせず、ドリスやオルガとのお別れもしていませんが、このままの流れでこの町を出たいと思います。
冒険者登録も結局できず、
とっとと撤収、撤収です!
なんておばかさん