スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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飛ばしてもらってもかまわんのだぞ?


スヴェン、考察する

 まったく、何だというのだあの幼子は。

 

 こちらが馬車まで送って会う段取りを整え、懇意にしていたアンヌまでこの場を訪れ待っていたというのに……、来ないばかりかあの騒ぎだ。

 

 そもそも俺たちの存在は幼子には伝えていなかったはずなのだが、まぁギルドでの状況を聞くに及び疑念に思うような事柄を多く与えてしまったのは仕方がない。

 

 アンヌは、あの幼子が隔離されていたことを忘れられず、恐れてしまい来ることを拒んだと思っているようだが、俺はそうは思わん。

 

 アレはそんな理由くらいで逃げ出すような弱い存在ではないことは明らか。

 

 あの幼子には何かある。

 

 只ならぬ魔力量や全属性持ち(オールエレメンター)である事実。異常な自然治癒を見せ、仮死状態からのよみがえりまでやってのけた。

 

 

 俺は考えを巡らせながらも、目の前の品を見る。

 

 一つはなんとも不思議で美しい色彩を放つ、虹色の魔石。

 もう一つは先日の騒ぎの中、わずかながら入手できた侵入者の遺留物だ。

 

 虹色魔石はミーアが魔力を込め創り出したという代物だ。

 これについての調査ももちろん進めなければならぬが、今はもう一つの方の正体が気になって仕方がない。

 

 侵入者の遺留物。

 まぁ侵入者と言葉を濁しているが、ほぼ間違いなくミーアであろう。

 

 代官の館でこのような非常識なことを仕出かすものは無教養で常識無しのあの幼子くらいしか考えつかん。貴族の館に侵入し、更には室内の様子を窺うなどという舐めたことをすれば、通常なら禁固十年は固く、場合によっては死罪すらありうるところだがな。

 

 遺留物は指で摘まめるくらいの小さなもので、あの時気付けたのはシャープエッジでなにがしか切断した感触を得ていたこともあるが、何と言ってもかすかに感じ取れる魔力によってだ。

 

 

 ――俺はヴィースハウン領内でも数少ない二属性持ちだが、そのことは秘匿していて、知られているのは風属性のみ。

 

 もう一つの属性についてはあえて公表はしておらず、知っているのは領主一族と我が親族、それに警備隊の副官二人だけだ。その副官らも強制誓約(ギアス)により守秘を徹底している。

 

 貴族には色々あるということだ。

 わざわざ公表し、自らの優位を捨てる必要はない。

 

 強制誓約(ギアス)を使えることで分かることだが、俺のもう一つの属性とは闇属性だ。

 闇属性自体も珍しいものではあるが、居ないわけではない。最たる例が冒険者ギルドのギルドマスターであるボリスだ。数少ない闇属性でしかも特級。

 

 この俺と同じだ。

 

 風属性では上級一位を得ているので、本来であれば特級である闇属性の方が等級は上なのだが、そこが上位貴族の面倒なところで、あえて周囲には伏せているわけだ。

 

 アンヌら無属性魔法士たちは魔導ボードを使い魔力の測定を行っているが、無属性はその特性上受動的であり、相手が自発的に魔力を放出するなり、受け入れる意思を示さないとその能力を発揮しずらい。

 それに対し闇属性は発せられた魔力はもちろんのこと、更には相手の意志にかかわらず懐深く探りを入れることすら可能となる。

 

 もちろんそれを行うには相応の等級も必要になってくるのであるが。

 

 何にせよ、闇属性は人の意志や魔力にかかわる能力を中心に発展してきた歴史があり、あまり快く思っていないものも多いと聞く。俺に言わせればどんな属性でも使う人間によって良くも悪くもなるのだから、区別するのも馬鹿らしいとなるのだが。

 

 所詮持たざる者の(ねた)みだな――。

 

 

 遺留物を見つけられたのはその闇属性ゆえのことである。

 

 もっと言えば俺の体に埋め込まれている魔道具のおかげである。俺にとっての魔導ボードの代わりであり、それにより漠然と感じられる周囲の魔力を、確たる情報として認識できるようになる。

 

 遺留物はそんな俺の体内にある魔道具の魔力探知網に引っかかった。

 しかも過去にも感じたことのある感覚を伴ってだ。

 

 

 死んだように眠っていたあの時のミーア。

 あの幼子から微弱ながら感じた魔力。それと同じものをこの遺留物から感じ取れるのだ。

 

 

 見たところ微妙に青みがかっているものの透明に近い。液体のようにも見えるが、流れ出すこともなく小さくはあるが不定形で歪な形を維持している。

 一見唾液などに見えなくもないが、代官(やかた)の客室に(つば)を吐くような愚か者はまさか居ないであろう。まぁ、普通に観察すればそれと違うのはすぐわかるが。

 

 時が経つとともにまるで水分が抜けていくかのように(しぼ)んでいき、直感的に不味く感じたため、つい(つつ)いてしまったのだが、その際指先からかすかに魔力が抜き取られる感覚を覚えた。

 

「ぬぅ、なんだこれは? まさかこれで生きているのか……」

 

 俺はそれに興味がわき、指先を遺留物にあて意識して魔力を送ってみたところ、萎んでいたはずのそれがじわじわとその(かさ)を戻し、見つけた時の状態に近いものになった。

 

「なるほど……、これは重畳(ちょうじょう)。魔力を与えることでこの状態を維持できるのであれば、虹色魔石同様、クリスティアンに調査させることも出来よう」

 

 思わぬ偶然の発見に我ながら感心し、俺にしては珍しく口角をあげ喜びの表情を浮かべた。

 

 気を失った時ですら全身から感じとれたミーアの魔力。

 その秘密の一端を知ることが出来るやもしれぬ。

 

 

 

 ミーアという幼子にこれといって悪意を感じることはない。

 無知ゆえの無礼な行動はあるのだろうが、それは教育次第でどうとでもなる。

 

 一度は不気味さゆえに隔離したわけだが、ここに至ればあの時のアンヌに感謝するべきか。

 

 間違ってもミーアを他派閥の貴族どもに渡したくはない。

 ましてや他領などもっての他だ。

 

 あの非常識で何を考えているかわからない幼子に、そうそう食指を働かせるものも居るまいが、虹色魔石のこともある。

 

 やはり早いうちに取り込んでおくに越したことはない。

 

 幸いあの幼子はアンヌにとても懐いている。

 アンヌは嫌がるであろうが是非とも協力してもらわねばな。

 

 

 何にしてもだ。

 ミーアが見つからないことには話にならぬ。

 

 

 まったく、悪いようにはしないというのに。

 俺の前に現れた(あかつき)には、その頭に拳の一つでも落としてやらねば気が済まぬというものだ。

 

 

 

 くく、誰かの養女にするのはどうであろうか?

 

 

 ヨアンあたり、面白いかもしれぬな。

 





次はミーアでますから……
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