スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

53 / 102

能書き多くてすみません

野郎しかでなくてすみません


ミーアの真実

「ご報告が遅れてしまったこと、このクリスティアン、心よりお詫び申し上げます」

 

 俺の目の前でゼスチャー交じりの大げさな謝意を見せる長身痩躯の男は、我が隊の魔法士であるレナートの父親であるダール伯爵だ。

 ダール伯爵家は魔法技術の発展に寄与することで、ヴィースハウン領主より古くから領都の貴族街の一角に館を構えることを許された魔導貴族であり、領地は持たないものの領都においては一目置かれている存在だ。

 

「ああ、久しいなダール伯爵。変わらず息災のようでなによりだ。手短にいきたい、早速わかったことを聞かせて欲しい」

 

 全属性持ちの幼子ミーアが創り出した虹色魔石。レイナール子爵館への侵入犯から刈り取った遺留物……こちらもミーアの物に違いないと(にら)んでいるものだ。

 それらをクリスティアンに託し、いかなるものなのか精査させていたのだが、その結果がまとまったという魔伝書簡(マナエピスル)を受け、自ら伯爵館に乗り込むに至ったわけだ。

 

「ずいぶんと気が急いてお見えのようだ。わかりました、早速ご報告させていただくとしましょう」

 

 重厚な(おもむき)のテーブルセットに勧められるがままに付けば、そこには幾つかの魔道具が用意され、その脇に置かれたガラスの器には起毛された織物が敷かれ、その上に虹色魔石が乗せられている。

 虹色魔石はミーアが姿をくらますまでに十四個創られ、そのうちの八個をギルドよりもらい受けた。その中から、クリスティアンには四個渡したのだが、さてどのような調べとなったのか。

 

「虹色魔石の精査を進めた中でわかった特性として、まず汎用性が恐ろしく高いということです。属性にとらわれない使用が可能で、いかなる魔道具においても使用可能でありました。また道具や武器への魔法属性付与(エンチャント)においてもその汎用性がいかんなく発揮され、それ一つで複数属性への対応が可能なのです。これは素晴らしき特性です。更に付け加えるならば、属性付与された武器等を使うことにより、その属性を有していないものであっても……」

 

 クリスティアンめ、置かれていた属性に統一性がない魔道具と、虹色魔石で実演しながらそれについて語るうちにどんどん饒舌(じょうぜつ)になっていくぞ。

 

 だがそうなるのも頷けるほど、虹色魔石の秘めたる可能性は高い。

 

 であるのだが……、

 

「わかったわかった。虹色魔石について短時間での精査、大変ありがたく思っている。詳細については書面にまとめて、報告をあげてもらいたい。だが今は遺留物について知りたい。そちらについてはどうなのだ?」

 

 俺が最も知りたいのは遺留物についてなのだ。

 

「なるほど、そうでしたか。もちろん調べております。こちらについては虹色魔石以上に興味深い結果が出ておりましてな、調べが進むにつれて、それはもう……」

 

「クリスティアン! わかったゆえ、報告をたのむ」

 

 まったく。いいから早く報告するがよい!

 

「ええ、ええ、わかりましたとも。では遺留物ということで渡されたものについてですが。結論から申し上げると、こちらは先代ダール伯爵である私の父より聞かされた『魔喰いの精霊』が住まうと呼ばれる湖由来のある物の組成とよく似ております。いや、そのものと言って良いかもしれませぬ」

 

 なんだそれは!

 

 また想像の埒外(らちがい)の話が出て来たぞ。

 思わず突っ込みを入れたくなったが、気持ちを抑え話を聞くことに努める。

 

「その湖と言うのはスヴェン様がご存じであるかどうか知りませぬが、ヴィーアル樹海の奥深くにある湖のことを言います。残念ながらその地に行ったことはありませぬが、数代前のヴィースハウン公がアールヴ征伐(せいばつ)を押し進める中、追いつめられた一部少数のアールブ族が海峡を渡りヴィーアル樹海の奥地へと逃げ延びたそうで、それを追った精鋭部隊が行き着いた場所がそこだったのです」

 

 アールヴ征伐の話は、俺も習った記憶がある。

 

 アールヴ族は額に角のあるその見た目から、魔獣との混じり物との(そし)りを受け、弾圧された種族で、魔法に秀でたものたちだったそうだが。

 

 当時も今と変わらず魔獣の領域であるヴィーアル樹海に精鋭部隊とは言え、追跡に貴族の子弟を送り込んだことで相当揉めたようだ。

 何しろ百五十人からを送り出し、生還したのがたったの二十人ほどだったとか。しかも追いつめたと言えば聞こえはいいが、実態は双方傷み分けの厳しい戦いだったらしく、逃げ帰ってきたと言うのが本当のところらしい。

 

 まあ、これは表には出せない話だが。

 

 アールヴ族に関してはそれを境に征伐の機運は一気に下がったようだが、その頃にはヴィースハウン領どころかフェイロー大陸全土においてさえアールヴ族の姿を見ることはほぼ無くなっていて、それはもうそうなるしかないだろう顛末だった。

 

 アールヴ弾圧を良しとしなかった何処(どこ)ぞの国において保護区があるなどという話を今も聞くが、確認出来ているわけではない。

 

 

「ほう、そのような奥地にある湖か。しかも魔喰いの精霊とはまた眉唾(まゆつば)な。どういった経緯でそう呼ばれていたのだ?」

 

「そう思われるのはもっともなのですが、これは確固たる事実に基づくもの。実は精鋭部隊の生き残りに当家の者もおりまして、その湖での体験を当時の当主に語り、また証拠の品として水筒にその湖の水を入れ、持ち帰っていたのです」

 

 

 

***

 

 

「なるほどな。湖で身を清めようとすれば魔力が急激に抜けていく感覚を覚え、その湖水をよく見れば何やら(きら)めきながらうごめく何かがあったと。その者はその怪しげな何かを湖水に入らぬよう工夫しつつ水筒へと収め、命からがらも樹海より持ち帰ったわけか……」

 

 魔獣ひしめく樹海の奥より戻ってくる最中、そのようなことまでこなすとは、見上げたものだな。

 

「はい。残念ながら当時のそれはさすがに失っておりますが、記憶魔石(メモリラピス)に記録が残っておりまして。今回の遺留物を見るにつけ、直感的にこれではないかと当たりを付けましたところどうやら正解を引き当てたようです」

 

 今の話を聞いたうえで改めて遺留物を見れば、今まで持っていたイメージと違う物に見えて来るから不思議なものだ。

 

「魔喰いの精霊……」

 

 かかさず魔力を与え続けていたおかげもあり、未だそれは子爵館で刈り取った当時のまま、瑞々しさを保っている。

 

「確かにこれは魔力を喰うという見方も出来る……」

 

「いかにも。それともう一つ。これも面白いですぞ。ミーアなる女児は、冒険者ギルドで魔力紋を登録しておりまして、その登録情報を精査しましたところ……ギルドではノイズと捉えたようですが、実は紋様は二つあることが確認できました。一つはもちろんミーアの登録紋なのですが……」

 

 目尻のしわを深め、黒味が強い深い(みどり)の目を細めて俺を見て来るクリスティアン。

 ダール伯爵はこれがなければもっと扱いやすいのだが、面倒なやつめ。

 

 ま、ここまでお膳立てされていれば、いやでも察しはつくというもの。

 

「いいから早く述べよ」

 

「ふふ、そうですな。非常に弱い紋様でしたのでノイズと間違えるのも無理はなかったのですが……、間違いなくそれは今回の遺留物より発する魔力紋と()()しております。更に言うならば、当時、湖水より採取した魔喰いの精霊と呼んでいたもの。それより苦心して取り出した魔力紋とも一致するのです!」

 

 

 俺はもう絶句するより他なく、とっさに言葉が出せるはずもなかった。

 

 

 





どうなってんの~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。