スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
まじもの
前回あんなに苦労した海峡渡りでしたけど、今回は拍子抜けするほどあっさり渡り終えてしまいました。
風の魔法、最高です!
ああ、もちろん
さて、冒険者ギルドで教わった『ヴィーアル樹海』って呼ばれていたところが、勝手知ったる私の
以前湖から海岸までたどり着くのに、狩りをしたり、DIYしたり、ウロウロさ迷ったりで三ヶ月ほどかかっています。
けれど今回は以前と違って魔法もありますし、スライム能力の活用にも磨きがかかってますし、ぷにょ収納には日用品とかドリスに選んでもらった服とか、もろもろ入っています!
なんのかのありましたが、人との関わりも無駄ではありませんでしたネ。
ほどほど文明的な生活を送りながら
うきうきアウトドアライフです!
気分よく海岸から樹海に向かって歩み出せば、すぐさま以前との感覚の違いに気付き、我ながら驚きます。
ここはこんなにも魔獣の生命力に溢れた、ある意味、生き物たちの楽園とでもいうべき場所だったのですね。
人の治める世界では感じることの出来ない、重苦しいほどの濃厚な魔力に、私の魔器官は打ち震え、全身に浸透するスライム体にそれが及んで身震いが止まらないほどです。
とは言うものの、これからも私に向かってくる魔獣たちをヤッてしまうことに変わりはないのですけれどね。
それにしてもこうチンタラ進んでいては湖に着くまでどれだけ時間がかかるのやら。また三ヶ月かかるのは勘弁していただきたいところ。何かいい手立てはないものでしょうか?
空が飛べればどれほど楽でしょう。でもさすがの万能スライム体でも空を飛ぶのは無理スジです。
ああ、ラノベみたく転移とかできればいいのに。
それかワイバーンが懐いてくれて背中に乗せてくれるとか最高です。まぁ
あれ?
でも本当に無理スジかしらん?
今まで脳筋よろしくぶっ倒してきてましたけど、スライム体を相手に浸透させて操るとか……。
うう~ん、私から切り離してしまった時点でもう関係が切れてしまいますね。
繋がったままならワンチャン動かせるかもですけど、違う生き物の意志を操るってどうすればいいのでしょうか?
私自身みたく、中身入れ替えなら確実なのでしょうけど、その体を操れるようになるまでどれだけかかることか。とてつもなく面倒くさいです。
しかもミーアの中で並列思考するなら良いですけれど、別の体にスライム体を入れてそこでも体を動かして思考もして……なんてマジ勘弁って感じです。
ま、時間つぶしの妄想に浸っていても早く着くことはないので、せいぜい自分の体を駆使してがんばりましょう。
地道最強!
とか言いながらも、やっぱ道なき樹海を進むのはもうやだ!
獣道にしたってそう都合よく行きたい方に進めるものでもないし。
そこで我ふと思う。
魔法でどうにか出来ないものなのか? と。
そうです!
どうして今までそこに思い至らなかったのでしょう。
私には魔法と言う強い味方があるじゃないですか。
樹海に入って丸一日。
今の今まで気が付かなかっただなんて、ミーアのおばか!
元日本人のしがない中年サラリーマンだった男には応用力とか、臨機応変っていうのは期待しちゃダメなものなのです。
さて、魔法で空を飛ぶとするならどうすれば良いのでしょう?
古典的なところだと
だからなに?
何の解決にもならないですね。
あれって反重力的なものなのでしょうかね?
ああ、いけない。魔法に科学的なことを求めても……、っていうか反重力も科学的とはいえないですね。SF的なものですよね、あれ。
ああ、火とか風とかけっこう科学的解釈が役に立ったりしてるわけですが……飛ぶとなるとそれが逆に邪魔をしてくる感じが……。
けれど、そんなこと出来るはずがない!
なんて思ってはいけないのです。
そう、魔法は想像、創造といってもいいかもしれませんが。
空を飛ぶことを想像するのです。さすれば与えられるのです!
きっと。
あのワイバーンだってあんな大きな体で、たいして羽ばたきもせずに体の割に小さめの翼で飛んでるんです。絶対、魔法的な力が作用しているはずなのです。
ああ、そういえば私はワイバーンさんの魔器官を吸収したではありませんか!
これはもう、飛べるようになるのは約束されたようなものです。
よ~し、何事もまずは形から。
スライム体でワイバーンみたいな
背中にスライム体を集め、肩甲骨の辺りからみょ~んと左右に薄く広げながら伸ばしていきます。
う~ん、骨になるものがないのでちょっとイメージがワイバーンの
半透明で、ちょっとふにゃっとした感じです。
透けた翅に光の加減で虹色っぽい模様が浮かび上がって綺麗です。翅を広げた大きさは私の身長の倍くらいでしょうか?
形はトンボとセミの翅を足して割ったみたいな形です。
まぁとりあえずこれでいいか。
出来立てのスライム体謹製ミーアの翅です。
羽ばたかせてみます。
これもイメージが大切、なのですが……、
ワイバーンの翼だったはずなのに、もう昆虫系の翅の動きしか連想出来ないです。
最初に昆虫の翅みたいって思ってしまったのが運の尽きでした。
もうそれ以外の想像ができない!
固定観念って恐ろしい。
「おおっ、動いた!」
ちょっとふにゃりが入ってるので、パタパタって言うより、よりはふりゅんふりゅん……て感じです。なんだそれ?
「う~ん、なんか微妙……。でも要は飛べるかどうかが問題なのであって、形とか動きなんてどうでもいいのです!」
さあここからが肝心なところです。
ともかく飛ぶための準備は整いました。吸収したワイバーンの魔器官さん、仕事して!
イメージです、イメージ。
私は飛べるスライム娘。
背中の翅は、魔力を飛ぶための力に変えるための触媒!
きっとそう。
そう決めた!
背中の翅を横目に見れば、この前のワイバーン戦みたく淡い輝きを帯びてきました。つられるように体のほうも青白い肌が薄っすら透けてきて、同じく淡く光っています。
思うにスライム体に行き渡った魔力が飽和状態になることで、そんな状態になるような気がします。
そうして……、ついにその時がやってきました。
小さなミーアの体が、まるで重さなど無いかのごとく、ふわりと浮かび上がりました。
ドリスに買ってもらった、微妙に足に合ってない靴先が所在無げにプラプラしています。
「しゅ、しゅ、しゅごい……」
くっそ、ミーアの口、まじ舌足らずすぎっ!
ええい、もっと上へ!
私の余りある魔力をもってすれば、まだまだ余裕で浮かび上がれるはず。
そしてそのままどこまでも飛んでいけるに違いないのです。
「はゎ~!」
ついには樹海の樹々の頂点まで登り切り、視界を遮るものは何も無くなりました。
眼前に濃緑、振り返ってみれば遠くにきらきらと陽光に輝く
「しゅば……、す、すばらしい、です!」
ほんと、なんでもっと早くに気付かなかったのでしょう。
っていうかこれは魔法……になるのでしょうか?
ま、そんな些細なことはどうでもいいのです。
いま、この時こそが至高!
ああ、この万能感。
最高に心地よいです。
遥か前方に鮮やかな水色をした湖すら確認できます。
ふふ、ゴールはあそこです。
どこまで飛べるかわかりませんが、行けるところまで行っちまいましょう!
おー!
ちなみにまだ慣れてないので飛行速度は歩くのと同じくらい……、
デス!
なんでもありやな!