スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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リイ=ナ、出る!

 空を飛べてウキウキ気分になった私は、ふよふよ漂うような速度ではあるものの、かなりの時間と魔力を空中散歩に(つい)やしました。

 

 おかげで、地上に降り立った時にはへとへとで、地に足が付くやそのままへたり込んでしまいました。

 ハイになってた私は降りるまで自分のそんな状態にすら気が付いていませんでした、反省。

 

 こんなこと、初めて魔法をぶっ放して一気に魔力を消費し寝入ってしまったアレ。それに乗じて不覚にも閉じ込められてしまった、あの時以来ではないでしょうか?

 

 さすがにいきなり寝落ちするほどではないですが、樹海(ここ)で無防備な姿をさらすのはあまりよろしくありません。取り急ぎマッドドーム(土製かまくら)を作って、そこでゆっくりするとしましょう。

 

 それくらいならまだ十分作る余裕があります。

 

「土のかまくら、マッドドーム」

 

 私の詠唱ともいえない適当な文言でも、固いはずの地面がむくむく盛り上がってきます。もうちょっと厨二っぽい詠唱考えてたはずですが、どうでもいいですね、ちゃんと出来てますから。

 

 雪国のかまくら、土バージョン完成です。

 

 日が暮れるまでにはまだまだ時間はありますが、休むこととしましょう。

 

 私は出来立てのかまくら(マッドドーム)によたよた入り、入口を土魔法で塞いで完全密閉したところで、もう眠気に耐えられず、スライム体になんとかくるまったところで眠りに落ちました。

 

 ちなみに普通の人なら酸欠で死んじゃうと思います。

 

 

***

 

 

 おはようございます。

 

 久しぶりに魔器官燃料切れを起こしたミーア、きゅ、九歳です!

 

 ミーアボディはまだまだ軟弱ですね。

 魔器官も相当強化されてるはずなのですが、この体たらくです。というか慣れない空を飛ぶ行為にいきなりのめり込みすぎました。

 

 ほんと、反省です。

 

 それにしても、スライム脳はミーアボディに最適化しているせいなのか、体の状態の影響を受けやすくて困ります。

 

 でもだいじょうぶ!

 

 謎空間にあるスライム体は三大欲求とは無縁。今も昔も変わらない、ぬべぇ~っとした様子の癒されぷにょは、やる気のかけらも見えない有様ですが無敵万能なのですから!(自画自賛根拠なし)

 

 まぁぶっちゃけ、ミーアボディは(あきら)める手もありますが、せっかく強く育っているのだから、そうならないよう守ることは当然なのです。

 

 

 

 さて、昨日は何も出来ないまま眠ってしまったので整理しましょう。

 

 さんざん空中散歩したおかげで飛行速度は早足くらいにまではなりました。

 

 つか遅い……、遅すぎ!

 

 私はびゅびゅ~んと飛びたいのです。要改善案件です。

 それに対する魔力消費は慣れるほどに改善され、効率良くなっていきましたので最終的には息をするかのように飛ぶことが出来るようになるのではと踏んでいます。

 

 改善のための最たる候補は背中の翅かと思い、形状やサイズ、厚みなど色々試してみたのですけれど、結論から言えばどうでもいい感じです。ただし、どんな形にしろ翅に類するものがないと浮かんでくれないのはどうしたものか?

 

 ワイバーン由来の魔器官の性質なのか、私の固定観念のなせる業なのか?

 (はなは)だ疑問ではありますが、そうなってしまったものは仕方ないので出来ることで効率化していきましょう!

 とりあえず私なりにかっこいいなと思える形に整え、いつでも同じ形で即座に背中に出せるようスライム体に覚え込ませておきます。ミーアの体に呼吸の真似事をさせるのと同じ要領です。

 

 自動化は効率化の基本です!

 元サラリーマンおじさんの心がそう申しております。

 

 翅は大羽二枚に小羽二枚の四枚構成。菱形をバランスよく引き伸ばし、(かど)っちょは丸みを帯びさせた形状にし、長さは垂らしたときに地面に当たらないくらいとしておきました。

 

 よきよき!

 

 

 さて、一つ問題があります。

 

 着ていた服の背中部分、伸ばした翅が通り抜けたところが溶けたように無くなっていました。スライム酸で溶かしてそのまま突き出て行ったものと思われます。考えなしに行動するとこうなるって見本ですね。しょぼい見本です。

 

 ローブを羽織ってなくて幸いでした。

 けれど背中が大きく開いた服なんて持ってないし、どうしましょうね。

 

 まぁ悩むまでなく冒険者用にと(あつら)えたシャツの背中を開けとけばいいですね。半袖、長袖、生地も厚手、薄手色々ありますが、同じように加工しておきましょう。

 

 ふふ、こんなこともあろうかと、ソーイングセットもちゃんと用意してあるのですよ!

 

 うそです。

 

 ドリスや宿のブレンダさんに女の子だったらそれくらい持ってなきゃと渡されました。

 ですけどね、元おじさんの私ですが、布縫ったりボタン付けたりするくらい余裕ですから!

 

 はい、なにぶんずっと一人暮らし。作業服とか補修もしましたしね……、ええ。

 

 あと背中の開いたところはセーラー服の背中に垂れてる襟みたいなイメージで付け襟を作って、隠すことにしました。被せるだけだからそのまま翅も出せるし、前で結んでおけばいいだけだから、使いまわしもOKの逸品です!

 

 まぁおかげで一着服を潰しました。もちろん潰したのはひらひらワンピース。

 樹海で可愛い服なんて着ませんし、他にもなぜか大量に在庫あります、解せぬ。

 

 とまぁ、そんなこんなで色々やってたらまる一日潰していました。

 

 うん。

 

 明日からまた旅、がんばろー!

 

 

 

 

***

 

 

「主フィーラヴの崇高なる精魔力が再びこのヴィーアルの樹海に戻られた」

 

 じじ様にアールブ村の樹上宮(ツリーヴィラ)に来るように言われた僕は、会って早々そんな言葉を聞かされた。

 

 じじ様は村の守り神として(まつ)られている女神フェリアナ像の横に、並べるように置かれている主フィーラヴの器をじっと見つめたままだ。

 それは魔石を砕いて粉にしたものを練り込んだ特別な土で作られた、不思議と透明度の高い、大きなお椀の形をした器なんだけど、湖と共に在るフィーラヴのかけらと言われている淡く煌めく水が入れられていて、上蓋をし魔法により封印された上で、大事そうに置かれてる。

 

 その器に魔力を捧げるのが、この村に住むアールヴの民の日課なんだ。

 

「じじ様、戻られたってどういうこと? それと僕が呼ばれたことに何か関係あるの?」

 

「うむ、ロオ=ムの息子にしてノム=ムの生みし子、リイ=ナよ。お前にはこれより樹海に戻られし(あるじ)を出迎え、無事このフィーラヴ湖へと導いてもらいたいのだ。どうやら主フィーラヴは随分と気まぐれであるようで、中々こちらにお戻りにならんのだ」

 

 うん、そんな説明じゃさっぱりわからないよ。

 

 っていうか何で僕がそんなことを。ただでさえ危険な樹海に、どんな姿かたちをしているのかもわからない主様を迎えに行けなんて……どうかしてるよ。

 

 そんな僕の考えが顔に出ていたのかじじ様が言葉を続ける。

 

「このフィーラヴの器はの、知っての通り主のかけらが入っておっての。日々わしらが魔力を捧げることでその力を弱めることなく維持できておるのだ。ほれ、わしの属性は闇であるからな、ここ最近、器の主の精魔力に指向性が出ておるのに気付いたのだよ」

 

 じじ様は大事そうに器を撫で、僕に言う。

 

「器の主は主フィーラヴの元へと戻りたがっておる。そのようにわしは思うのだ。ゆえにその指向性を読み解き、強きを示す方向を導き出せば、おのずと樹海に戻られた主フィーラヴと遭遇できるであろう。リイ=ナよ。お主はわしと同じ闇属性。しかも風と土まで使える三属性持ちの出来た子よ。だからのぉ……、頼んだぞぉ」

 

 このくそじじい!

 

 なにが「頼んだぞぉ」……だ。

 体よく僕に面倒くさい役押し付けてるだけじゃないか。

 

 しかもじじ様(くそじじい)の言うことは絶対。

 断ることなんて出来はしないんだから……。

 

 

 もうほんと、最低(さいってぇ)ー!

 





じじぃ~!
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