スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
うごきなし!
空中で大声出して気持ち良い気分に浸ってたら、今までに触れたことのない質の魔力を感じ取りました。
動物や魔獣、人とも微妙に違うように思えます。
とても気になるのでそろそろと空中を移動し、その魔力の出所を探ります。樹々が邪魔をして見通しが悪いですが、スライム体謹製魔力センサーにかかればそんなのはなんの障害にもならないのです。
魔力探索を始めてみれば、そちらも移動しているようで、どうやら私の方に向かって来てるみたいです。魔力を探れたりするのでしょうか?
空を飛んでるのでミーア魔器官が全開状態ですから、魔力探知できるのであれば居場所バレバレな感じかもしれません。
少ない魔力で飛べるよう精進しなきゃ、ですね。
むむ、あれでしょうか?
ちょうど樹々の切れ目になったところで魔力の発生元っぽいのを見つけました。何あれ……、人、かな?
こんな
見つけたそれに思わず首をかしげます。
「
なにゅ?
遠いところから、まだ高さもあるのにいきなり大きな声で話しかけてきました、この人っぽい人。
っていうか『あるじさま』ってだれ?
私に言ってる?
私は魔獣の楽園であるこの
う~ん、どう見ても人です。
男の子っていうより少年と言った方がいいくらいの見た目で、かなりの美少年です。
けれど!
そんなことよりです。
この少年は今まで見た人たちと圧倒的に違ってるところがあります。
そう、耳がっ、耳がとんがっているんです!
え、エルフきたー!
せっかく異世界に生まれ変わったというのに今まで普通の人しか見たことなかったのですが、ここへきてついにファンタジーっぽいのきたっ!
ゴブリンにオーク、オーガも居ないし、
更に高度を下げ、とうとう顔が向き合える高さにまでなりました。相対距離は三メートルほど、足を下ろすことまではしません。
なぜなら背の高さ全然違うし!
オルガには及びませんが、ドリスやアンヌよりは確実に大きい。地面に降りてしまったらチビな私は頭ナデナデポジションになってしまいます。
何事も最初が肝心、対等なお話には目線を合わすのです。
舐められたら終わりなのです!
「あ、あのっ」
うわっ、美少年がまたなんか言ってきた。
この美少年、髪はグレーに近い茶髪、ストレートな髪が肩まで伸びていて肌もとても白いのでちょっと女の子っぽいですが、
それに今気が付きましたけど額の両脇、こめかみの少し上あたりに小さな角があります!
何それ、属性が増えたよ。
鬼属性追加?
あ~、でもどちらかと言えば鬼と言うより、魔獣の属性に繋げた方が良いのでしょうか?
魔獣の特徴と言えば角や牙ですし……、なんて興味深いんでしょう。
「あのっ! 主様っ」
「ふぎゃ!」
び、びっくりしたっ。
おかげで変な声出しちゃったじゃないですか!
い、いけません、見知らぬ人の前で考えに
改めて少年の方をじーっと見つめます。私の視線に少年が少しひるんだ様子を見せましたが、意を決したのかしっかりこちらを見返してきました。
しかも手の甲をこちらに向けるようにし、両腕を胸の前で交差させて立っています。な、なにそれ。どういうこと?
「主様、突然声をかけてすみませんでした。驚かせてしまったことお詫びします。……えっと、その、僕の名はリイ=ナ。主様の湖であるフィーラブ湖のほとりに勝手ながら住まわせていただいてるアールヴ族のものです」
なんだか一気にいっぱい話してきましたが、半分も言ってることがわかりません。とりあえず名前はリイ……ナ? リイナかな? やっぱちょっと女の子っぽい名前だなぁ。でも美少年にはそれもアリだね。ちっ、
「主……様?」
おっといけません、リイナがとまどっています。せっかく話しかけてくれてるんだからちゃんとお相手しないといけません。挨拶は基本、元日本のサラリーマンとしてきっちりせねば。
「りいな? わたし、は、ミーア。よろしく、ね」
私の言葉に一瞬キョトンとした表情を見せますが、すぐに嬉しそうな表情へと変わり、またも言葉をかけてきます。
「ミーア……、主様の
そう言うや、今度は腕を交差したまま片膝を立てて腰を落とし、私を見上げ見つめて来るのです。満足げなその表情を見るにつき、私からは突っ込みを入れるのもはばかられます。
「う、うん?」
喜んでくれるのは良いのですが、なぜこうもへりくだった態度をとり、妙に持ち上げる話し方をしてくるのかがわかりません。私のことを『あるじさま』とか呼んでるのと関係あるのでしょうか?
あるじって、『主』でしょうかね?
わけわかんないです。
改めてリイナを見てみます。
エルフな美少年なことは置いておくとして、着ている服は腰下丈のありふれたチュニックで、腰にはベルトが巻かれ横に短めの剣が差されています。スリムなズボンに編み上げのロングブーツ。背負い袋をしょっていていかにも旅の途中のような
それに先ほどからリイナを見ていると私の体がムズムズ
どうにも落ち着けません。一体なんだというのでしょう?
だから更にじーっと見つめます。
そんな私の様子に、まだ何か言いたげな様子を見せていたリイナも戸惑いが隠せないようです。
「ん?」
「あっ」
リイナが驚きの声をあげますが無視です。そのまま胸に下げられたペンダントをむんずと掴み、引き寄せれば繋がっていた鎖やベゼルはぽろぽろと砂のように崩れ、広げた手のひらの上には濃い紫色をした
リイナがつばを飲み込む音が私の耳に届き、口をあうあうして物言いたそうにしていますが今は構ってられません。
私は虹色魔石を創る要領でその魔石に魔力を送ります。それもめいっぱい。
そうすればどうなるかは自明の理です。
魔石は七色の輝きが入り乱れ激しく色合いが変化したかと思えば、瞬く間に全体に蜘蛛の巣のような亀裂が入り、かすかな
中にあったものは手のひらの上でびろんと広がり、少しの間プルプルした後、手のひらに吸い込まれるようにしてこれも消えました――。
……………………。
「いつまでぽけ~と、してる? みずうみ、もどる、でしょ?」
仕方ないので声をかけてあげました。
「え、あ、はい! あれ? 僕そのことお伝えしましたっけ?」
ふふ、驚いてる。
「むふふん、じじさま……アズ=イにいわれて、わたし、むかえにきた。だよね?」
問いにずれた答えを返し、にやりと笑って上目でリイ=ナを見やる。
私って結構性格悪いのでしょうか?
「そ、そうですけど! え、ええぇ~?」
夕焼けに染まる樹海の空に、そんなリイ=ナの声が響き渡ったのでした。
強く生きて!