スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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能書き多め


樹上宮にて

 夜遅くまで続いた歓迎の宴もようやく終わりを迎えました。

 私の目の前には酔いつぶれた村人たちが死屍累々といった様子で横たわっています。夜は冷え込んでくるようになったのでそのままだとやばいと思います。

 

 世話をしてくれていたシイ=ナ曰く、普段のアールヴの人々からは考えられない状況であるのだとか。

 泥酔するまで飲むくらいには歓迎されたと思えば悪い気持ちはしないですが、別に私はこの人たちのために何かしてあげたということは一切ないので、何とも微妙な気持ちになります。

 ま、こんな樹海の奥地の村、娯楽と言う娯楽もないでしょうし、はっちゃけた村人たちが多かったということにしておきましょう。

 

「ミーア様、じじ様が寝所を用意しているのでおいでくださいとのことです」

 

 夜遅くなっても元気なシイ=ナが駆け寄って来てそう言うと、私の手をぎゅっと握り引っ張るように歩き出した。横に付いていてくれたリイ=ナも一緒に付いてきた。

 

 案内された場所はといえば、宴の場所のすぐ上、アールブの人達が樹上宮(ツリーヴィラ)って呼んでたところでした。

 いくつもの木が複雑に()り合わされ、束ねられたかのように見える、けれど一本の太い幹の巨木。上に向かい複雑に枝分かれしつつ天を突くように伸びていている、太い幹の途中にその建物がありました。

 三階建ての校舎の屋上くらいの高さがありそうです。横に伸びたいくつかの枝を巧みに使い、うまくバランスをとるように建てられたその建物こそが樹上宮(ツリーヴィラ)らしい。

 

 ま、そのまんまの名前で、ひねりがないですね。

 

 場所が場所だけにそんなに大きなものではないけど、それでも前世の田舎にある神社のお(やしろ)くらいの大きさはありそう。お社に例えたけど、面白いことに建物の形自体、少しばかり神社のお社に似てる感じなんですよね。茅葺(かやぶ)きっぽい屋根に樹海の木をログハウスのように重ね上げ組み上げた建物。それの形とか雰囲気がお社っぽくみえる感じなのです。

 

 樹の幹に螺旋状に足場が(しつら)えられていて、リイ=ナが先導するようにひょいひょいと飛び跳ねる様に上っていく。

 いやこれ、普通の人なら恐がって登れないやつです。元日本の中年サラリーマンなおじさんなら、足がすくみあがって絶対登れなかったに違いないやつです。

 

 まぁ今の私にはなんの問題もないですけれども。なんなら飛んで上がれば一番楽なんですが。

 

「ミーア様、抱き上げさせていただければ、上までお連れいたしますけど、ど、どうでしょうか?」

 

 シイ=ナが吸い込まれそうな深い青の目で、期待を込めた眼差しを送ってくる。どうでしょうかって言われても、ねぇ。そんな目で見られたら、いや、もう好きにしてくださいとしか……。

 

 私だって小さいとはいえ、それなりの重さがあると思うんですけどね。

 

 

 ――無事上に上がれました。

 

 

 シイ=ナはオルガに匹敵するほど背も高く、しかもとても目の保養になる女性らしい容姿をしているのですが、そんな見た目とは裏腹にとんでもない怪力の持ち主でした。水属性ということですが、筋肉属性の間違いに違いありません。

 女性らしい柔らかさに富んだシイ=ナの胸に包まれるように抱きかかえられた私は、シイ=ナの首に腕を回し密着するような体勢でしたので、とても心地の良い一時を過ごせまして元中年おじさん的にはとても魂が癒されました!

 

 なぜか抱きかかえられたまま、シイ=ナに連れられ樹上宮の中へと入っていきます。リイ=ナが溜息をつくのを私の耳がしっかりと捉えました。思うところがあるのならはっきり言わないとダメだと思います。

 

 樹上宮の中に入ってみれば、そこは板張りの十畳ほどの広間になっていて、奥を見やれば、そこには欠片の記憶通り女神フェリアナ像と私の欠片を入れた器らしきものが祭壇(さいだん)のような台の上に並べる様にして丁寧に(まつ)ってありました。

 

 女神フェリアナとかいう、ほんとにいるのかどうかもわからないものを真剣にお祈りしてるのを欠片の記憶から理解はしてますが、無神論な元日本人の私は、ああそうって感覚でしかないです。

 同じように私の欠片の入った半透明の大きなお椀みたいな器もお祈りの対象になっていましたが、そんな祈りは私には全く届いていませんでした!

 強いて言えば物理的なものとして、ペンダントに入ってた欠片からは記憶をもらいましたから、ある意味祈りが通じた的なものになるのかな? ならないのかな?

 

 ま、どうでもいいですね。

 

 

 祭壇の脇にアズ=イ(じじい)が居ました。

 

 っていうか、じじい、まさか私にこの祭壇の辺りで寝ろとか言うのではないでしょうね?

 精霊様だから、祭壇でええやんとか思ってないよね?

 

 実際全然問題なしに寝ようと思えば寝れるわけですが……。

 

 つうか私、別に精霊違うし!

 違う……よね?

 

 最近ちょっと自分がわからない、いや、ずっとわからないと言えばわからないけど……。

 

「主フィーラヴ様、フィーラヴ湖へとお戻りいただき、このアズ=イ、感謝の念に堪えませぬ! 我らアールヴの民は主様のお力の一端によりて生きながらえることができておりましたゆえ、主様の支配精魔域(サンクチュアリ)が突如失われた時にはどうしたらよいものかと……それはもう生きた心地を失い、アールヴの将来を悲観していたのでございます」

 

 なんかアズ=イ(じじい)が面倒くさいことを語り出した。

 支配精魔域(サンクチュアリ)とか勝手に名前つけてるけど、私は別になにも支配なんてしてないし、ただ、そこに居ただけなのにね。じじいの戯言(たわごと)は聞き流しておくに限ります。

 

「それにいたしましても、よもや主様がなんともお可愛らしい幼女のお姿をなされていたとは……。このアズ=イ、驚きを感じますと共になんとも(いつく)しみの心が湧いてくるようで……、長く生きながらえてきた中で、感じたことがないほどに心が(なご)んでおるのでございます」

 

 あっそう、良かったですね。

 

「これもひとえに女神フェリアナ様のお導き。こちらもアールヴの民、皆で感謝の心をお伝えしなければいけませぬなぁ……」

 

 ああそう、ああそう。

 これまだ終わんないのでしょうか?

 

 じじいが今度は女神像に向かって祈りだした。

 

 私もつられてそちらを見ます。

 

 女神像は一メートルにも満たない大きさとはいえ、それなりの存在感を示していて、薄手のワンピースのような衣も長い髪も足元まで伸びていてなんとも動きずらそうな造形をしてる。

 まぁ木彫りの像にそんなこと言ってもなんだけど、頭部はアールヴの特徴である耳や角がしっかり造形されていて、それだけ見ればアールヴ族の女神様っぽく見えますね。

 汎人族の間でも女神信仰はあるって習った気がするけど、あっちの女神像がそんな造形してるとは思えないですし……、ま、実際見た人がいるの? って話だし、その辺は都合よく解釈してるんでしょう。

 

 そんな女神像を何ともなしにじーっと見つめていたら、不意に頭の奥がずくんって痛みを感じるほどの(うず)きを覚えました。

 我ながら、スライム脳に頭の奥があるのかいって突っ込み入れたくなるけど、思考をしているからには何某(なにがし)かの何かはあるのかな?

 

 いや、何言ってるんでしょう私は。

 

 

「じじ様っ、ミーア様の寝所はどちらになるのですか?」

 

 シイ=ナがしびれを切らし、祭壇と硬い板張りの床しかないこの場を見回しながら(いぶか)し気に問いかけました。

 

 頭にはまだ違和感が残っていますが、痛いほどに疼いた先ほどのようなことはもうありません。

 

「ふおぉ、寝所とな……。それはほれ、そのさいだ……、ひぇ」

 

 よくよく祭壇を見れば、女神像の横に小さな座布団のようなものが並べ置かれてるような……。

 

「くそじじいっ! ミーア様は精霊様とはいえこのように柔らかなお体を持って顕現されているのです。祭壇でいいはずないでしょうが!」

 

 もはや(うやま)う気持ちが少しも入っていなさそうなシイ=ナの剣幕に、じじいはおろか、その場の皆がすくみあがりました。

 

 私もシイ=ナの腕に抱かれながらも思わずビクってなってしまいました。

 ちょっと漏らしたかもしれません……。シイ=ナ恐るべし。

 

 ないしょですからね。

 

 

 祭壇の奥にもいくつか部屋はあるようですが、リイ=ナ曰く、とても私を迎え入れて就寝してもらうような場所ではない、ということで……、

 

 結局のところ。

 

 

「私が添い寝してさしあげます! ぜひ私の家にいらしてください」

 

 冷たい面持ちの美人さんのはずのシイ=ナが、鼻をひくひくさせながらそう提案してきた。

 

 

 

 

 そういう事になった!

 

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