スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
スヴェン隊長から、ヴィーアル樹海への遠征隊に私も加わるようにと申し渡されました。
ケービック砦の警備隊からはヨアン副長とクルトとかいうガサツな人が同行します。更に別の砦からの人員や、冒険者ギルドからも幾人か要員が出されるようです。
私のような支援要員を含めた遠征隊は総勢十二名です。少なく感じますが勝手のわからない見知らぬ土地、魔獣ひしめく危険な場所に
信頼のおける人員による、機動性と確実性を考えたうえでの人選なんだそうです。ヨアン副長の受け売りですが……。
私がそんな中に入ってもいいのかな?
ちょっと不安です。
遠征の目的は、ここ数ヶ月で
被害報告もそれなりに上がっていて、海峡を渡ってきたワイバーンが岸壁で営巣し、そこを拠点として領内の村々を襲撃する事例が増えたのだそうです。ケービック砦においても少し前に営巣するワイバーンを確認したと聞きました。詳細は一隊員に過ぎない私まで回ってはきませんが、漏れ聞こえて来た話からするとなんとか討伐に成功したみたいです。
それでも被害は多少出たようで残念なのですが、でも早期に対応出来て良かったな……とも思います。
けれど、ワイバーンの話を聞くとミーアちゃんのことを思い出さずにはいられません。
思い返せばミーアちゃんと出会ったソルヴェ村が、魔獣の海峡渡りの最初の被害となった場所でもあります。それ以降、ソルヴェ村ほどではないにしろ、散発的に魔獣被害の報告が上がるようになってきました。
レイナール領にミーアちゃんが居ると聞いた時には居ても立ってもいられず、スヴェン隊長のはからいもあり会いにまで行きましたが……、残念ながら再会することはかないませんでした。
スヴェン隊長は上級貴族であり思い至れないのは仕方ないのかもしれませんが、それなりの仕打ちを受けたミーアちゃんが、スヴェン様やギルドマスターからの呼び出しに
スヴェン隊長の中では許しを与え、もう済んでしまった出来事であっても、ミーアちゃんの中ではそれは終わってなんかなくて……、今も心に残ったままなんだと思います。
ああ、今この時もミーアちゃんはどんな思いで過ごしているんでしょう?
もし再会できたならこの胸でぎゅっと抱きしめてあげたい。
もう心配しなくていいんだよって伝えてあげたい……。
ああ、いけない……、考えが逸れてしまいました。
それと言うのもヨアン副長のせいです。
魔獣
不確かな情報ながら、ミーアちゃんが、あちら側に渡っている可能性があるというお話しなのです。
どうしてそんな危険なところへ? という疑問は置いておいて、それを聞いて行かないなんて選択肢は私には存在しません!
これを聞いたら、少しばかりの不安がなんだって気持ちにもなりますし、
お父様はきっと反対なさるだろうけれど……、そもそもこれを決めたのはスヴェン隊長。スヴェン=ソールバルグ様なのです。だから引き留めることが出来るはずもないのです。
私だってスヴェン隊長のやりように思うところがない訳ではありませんが、同じ隊に所属するとはいえ所詮私は下級貴族の娘でしかなく、どうすることも出来ません。
今はとにかくミーアちゃんに会うことを目的に、私なりにがんばりたいと思います。
あともう一つ気になることと言えば、遠征隊に参加する冒険者さんのことです。
ヨアン副長
オルガさんとドリスさん。
この二人の名前は以前レイナール子爵館に
ミーアちゃんは少しの間その二人と行動を共にしていたそうで、出会ったきっかけは野盗に拉致されたことだったとかで、怖すぎてちょっと理解したくない状況です。
なんと言ったらいいのか……、とにかく無事で良かったとしか言えません。
それにしてもあんな幼い女の子を拉致するなんて……、野盗なんて存在、この世から全て消えて無くなればいいのに。
それにしても……、ケービック砦から抜け出して二人に出会うまでずっと一人で
たった一人で夜を過ごし、人と関わることなく生きていくなんて……十歳、いえ、九歳で登録されているのでしたっけ? ……九歳の女の子がしていい生き方じゃありません!
聞けばミーアちゃんはレイナールの町でドリスさんと二週間ほど寝食を共にしていたみたいで、その間に冒険者としてやっていくため、色々学ぼうと頑張っていたらしいのです。
魔法の才が飛びぬけていたらしいです。
「ふふっ、当然です。私が知ってる限り、ミーアちゃんほど才能と魔力を持った人に出会ったことありません。領都の守備隊魔法士だってきっと足元にも及ばないです!」
会ったことはないけれどね。
他にも何か
そんな中で、レイナール領代官館への呼び出しを受けて……、それのおかげで行方知れずになってしまいました。
「ああもう、私はどうしてこんなに無力で、すべてが後手になってしまうんでしょう」
ほんと、どうしましょう。
ついつい独り言をこぼしてしまいます。
「ともかく! 行動あるのみです。お二人はどんな方々なのでしょう? ミーアちゃんが
平民のお二人に、下級とは言え貴族である私が素直に受け入れてもらえるでしょうか?
まぁ貴族とは言っても子爵令嬢というだけで私自身に爵位が有るわけでもなく、嫁ぐ先によってはどうなるものか、わかったものではないのですけど。
自分で決められるわけでもなく、歯がゆいばかりなのが実情なのです。
こうやって内に
遠征隊は近々出立するのだから、もうなるようにしかならないし、冬も迫ってますからそう長い時間もかけられないでしょうし。
お二人と仲良くさせてもらって、協力してミーアちゃんを見つけ出して……、そして願わくば私と一緒にヴィースハウン領へと戻って来てほしいな……。
これから向かう先にミーアちゃんが本当にいるのかもわからないし、危険なヴィーアル樹海を無事に抜けられるかもわからないし……、
そもそもどこを目的にしているのかすら教えてもらってないのだけど。
ああ、女神フェリアナ様。
どうかミーアちゃんと会えるよう、その聖なるお力でお見守りください――。
展開遅くてすみません……