スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
遅くなりました
純然たる痛みなんか感じるはずがないスライム体のくせになぜか変な頭痛を感じたり、寝ててうなされるとか……、私にしてはありえない、わけわかんない現象に見舞われました……、
苦労多き元日本人の中年サラリーマン。
けれど、今はすこぶる快調だったはずのスライム娘、ミーア九歳です。
わからないことは忘却の彼方に葬り去ることを良しとする、お気楽仕様を信条としたいと思います。
何のかの、村人たちの相手をしてたらいつの間にか三日が経っていたくらい、ビックリなお気楽さが売りです。
「ミーア様、もう戻られてしまうのですか?」
甲斐甲斐しく用意してくれた朝ごはんをもぐもぐしてたら、シイ=ナがとても残念そうな顔をして私を見てきます。この人、今日までずっと私にべったりでした。初日の夜、うなされて以来、寝るときの抱きしめも余計力が入って大変でした。ま、至福の抱かれ心地でしたので悪いことでは全然ないのです。
「シイ=ナ、いい加減あきらめたら? 歓迎気分もほどほどにしないとね。ミーア様に戻ってもらった目的忘れちゃだめだよ?」
私のお目付け役をさせられているだろうリイ=ナが、朝からきっちりシイ=ナの家に居て、いたって普通の突っ込みを入れてます。なんかもう、私がアールヴの人たちのためにどうにかすることが確定事項っぽくなっててとても面倒くさいです。
まぁ、私としては特別なことするつもりもないし、いいんですけれど。
「言われなくたってわかってる、わかってるよ。
なんかリイ=ナと揉めだしたよ?
何というかあれです。
私が居ない間に魔獣の住処たる樹海から、
魔滓は魔獣に限らず、魔力を持つ生き物は全て……当然、人だって出してるってことなんだけど、普通なら自然の循環の中で消費されるからなんともないみたい、普通なら……。
でもヴィーアル樹海はそんな通常の自然のサイクルを上回るペースで魔滓が発生してるところらしいです。そりゃあれだけうじゃうじゃ魔獣がいればそうもなるかもしれません。
スライム体は長年、そんな魔力の
スライム体すごい!
私すごい!
とは言っても今まで特に意識することもなく普通に行っていたことなわけで、アズ=イやリイ=ナの話聞いてそんなこともあるのかと、初めて認識した次第です。
「だいじょぶ、だよ?」
うん、そうとしか言えないです!
心配そうな顔で、まだ何か言いたげなシイ=ナをスルーし、湖に向かうこととします。相手してるといつまで経っても湖に戻れません。
それに長年暮らしていた場所です、やっぱ気になるじゃないですか。
マジ面倒くさいのでシイ=ナの家を出て、とっとと湖に向かおうと歩き出したら両脇に二人の『ナ』世代さんが並んできました。
くふふ、揉めるよりお役目の方が大事みたいです。
っていうかもう付いてこなくていいのに。
「主フィーラヴ様、いよいよ湖にお戻りなさるのですなぁ。主様に我らからお願い出来る立場ではないことは重々承知しておりますのですが……、それでも期待させていただいてもよろしいですかのぅ?」
なんか計ったかのように
うん、ほんといい根性してます。だてに長老してないって感じでしょうか?
「きたい? かってにすれば、いい。わたしはいつもどうり、するだけ……だし」
そう、今までとおんなじ。アールヴ関係ない。ただ、のべぇっと自堕落に伸び広がってだらだらしてるだけだもんね。
久しぶりの故郷なんだし、思いっきりゆっくりしよう、うん。
***
歓迎の宴をしてもらった広場を過ぎ、まばらに建つ家々も通り抜け、結局付いてきたじじいたちを従え……というか、
空飛んだらすぐなのにとか思ったけど言わないでおきました。
空気読めるミーアはいい子です。
「うわぁ、なに、これ……」
我が生まれたる?母なる湖、久しぶりの故郷を前にした私は思わずそんな言葉を漏らしました。
どこまでも透明で、どこまでも深いところまでも底が見えるのではないかと思われた美しき湖は、その姿は跡形もなく、
その濁り方もよく日本で見た茶色や黄緑に濁るようなものではなく、なんとも不安を感じる、限りなく黒に近い紫っぽい色合いです。まぁ考えてみればもっともなことで、魔力の残滓、
けど、理屈はともかく、そんな色合いの水、ちょっと嫌かもしれません。
あ、でもジュースとかならそんな色合いのもの結構あったかもしれません!
懐かしい。コ〇ラとかファ〇タとか……、あれもある意味飲み過ぎは身体に毒になったかもしれません。
と、兎も角!
大変であることは理解しました。
相変わらず先が見通せないほど広い広い湖ですが、全域でこんな感じなのでしょうか?
「み、ミーア様? 大丈夫ですか?」
湖を見つめ、だまりこんでしまった私を心配してか、シイ=ナが腰をおって私の顔を
リイ=ナとアズ=イもさっきまでと違い、暗い表情を浮かべ私のことを見ています。
みかけ幼女の私を、大人たちがそんな顔して見つめてこないでください。
実際は私が天元突破で年上なのですけれども。
仕方ない。
何はともあれ、行くしかないですし。
あれくらいの汚染水、大丈夫でしょうけれど、念のためミーアボディをスライム体で薄膜コーティングしておきましょう。まぁ、ミーアボディもスライム体浸透してるので過剰かもしれませんが、何事も保険は大事です。
あと演出的な意味でも!
「ああ、ミーア様、体が水みたいに透明になって、輝いてきました!」
「おおぉ、やはり湖の精霊様、なんと気高く神々しいお姿でありましょうか」
水に入るから翅は出してないけどね、うん。
リイ=ナは慣れちゃっててもう無反応で面白くないです。
「じゃあいく、から。おせわになった」
波打ち際まで見送りに来ていた三人を背に、私はぽてぽてじゃぶじゃぶとリーチの短い脚で入水していきます。
湖の水は波打ち際の水であっても淡い紫に色づいていて、外は肌寒いけど、水はまだぬるいくらいの感覚が伝わってきます。
うーん、私の髪や目の色に類似してるのは、やはり魔力を通しての因果がある感じなのでしょうかね。
生き物たちはどうなっているのでしょう?
アールヴたちは恐れて水の中には入りません。まあそれは私が居た時からそうだったみたいですけれど。
考えてても仕方ない、いざ鎌倉、違った、いざフィーラヴ湖!
行ってきまーす!
あ、違うか。
ただいまー!
だね。
おかー!