スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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そのころ探索隊は?

「うぉ~! 長かったぜー!」

 

 男性にも負けない上背とグラマラスな体が魅力的な冒険者の女性、オルガさんがようやく途切れた樹海から見える、大きく広がる湖を目にして感慨深げな声を張り上げています。

 

 彼女がそんな声を上げるのも仕方ないことだとは思います。

 

 なにしろこの魔獣蔓延る(のさば)ヴィーアル樹海に入って三十日以上が経っています。たぶん直線距離にすればそこまで遠い訳ではなく、ヨアン副長(いわ)く、普通に歩けたとすれば五、六日あれば……というくらいの距離らしいです。

 けれどそんなことは絶対無理なわけで、道といえば獣道くらい、至る所から魔獣が出て来るのですから、時間がかかるのは当然といえば当然で、このメンバーでその六倍以上の日数が必要だったのも仕方ないことだと思います。

 

 私が所属するケービック砦の警備隊隊長であるスヴェン様の意向で、ヴィーアル樹海にあるという湖を探索することになったのがひと月半ほど前。

 スヴェン様を隊長とした総勢十二名の探索部隊は、顔合わせや遠征準備が忙しなく進められ、あれよと言う間もなく出立しました。噂に聞くヴィーアル樹海は悪い意味で面目躍如(めんもくやくじょ)といった感じで、スヴェン隊長を筆頭に魔獣に対しているみなさんは本当に大変な日々であったと思います。

 

 目の前で大きな声を上げたオルガさんもその一人だった訳ですが、うちのクルトとかいう人以上に危ない方で、襲いかかってくる魔獣にひるむことなく、得意だと言う身体強化と手に持った剣を武器に勇猛果敢に挑み、道を切り開いていってくれました。

 それでも剣士の力だけで進んで行けるほど甘い処ではなく、魔法士と共闘しながらの探索行だったわけですが。

 

 私だって補助や癒しで多少のお役には立てたと思いたいです。

 

「なぁアンヌさんよ、オレの目には湖の先に壁で囲まれた、そのなんだ、人の村っぽいものが見えるんだが、あれってもしかするとアレか?」

 

 大きな声をあげていたかと思えば今度はそんなことを言ってきました。

 

「ほんとだ、村があります! かなりしっかりした柵というか、(つる)で覆われた土壁で囲まれてる感じだね。うわぁ、樹の上に建物があったりするよ、変わってるねー」

 

 遅れてオルガさんの隣に並んだドリスさんが、斥候(スカウト)の技能である遠目を使ったのか詳細な様子を驚きの声を持って私たちに伝えてくれます。

 

「ふむ、やはりあったか……」

 

 奥の方から他の部隊メンバーと共にスヴェン隊長が現れ、薄く笑いながらそう言います。

 そう、私たちも一応話では聞かされていました。アールヴという、過去に人族と争った魔獣との混じり物と言われた一族の話。それがこの樹海に逃げ込んだこと……。

 

 ただ、今現在もそのアールヴ族が生き残っているかまではわかっていませんでした。

 

 もしかしてミーアちゃんがそこにいるかも……。

 ここに来るまで、ミーアちゃんに繋がるような手がかりも全く得られませんでしたし。

 

 そう考えるのは都合よすぎでしょうか?

 

 でも、今の隊長の言葉だともしかしてあるとわかっていたのかも?

 ……まぁ、上の人達の考えを深く詮索することはやめておきましょう。

 

「隊長さんよぉ、あんたアレのこと何か知ってるのかい? 久しぶりの人里だ、出来れば休ませてもらいてぇもんだけどな」

 

「ちょっとオルガ、言い方。言葉遣いっ」

 

 オルガさんは相変わらずです。上級貴族であるスヴェン様への口ぶりに友人であるドリスさんがアタフタしてしまっています。まぁ、隊を結成するときに隊長から部隊行動中は、身分差は抜きとし、隊の中の序列を優先すればよいとのお言葉が出ていますからいきなり処分されたりはしないと思いますが……。

 

 それでもやはり心配なのでしょう。

 貴族の私だって上級貴族の方を前にすれば緊張しますからね。

 

 その点、やはりオルガさんは大物ですね。

 

「休む……か、そう都合よくいくものであろうか。……俺的にはあれらに対し思うところは特にないが……、どう出て来るであろうな?」

 

「はぁ? それは一体どういうことだよ?」

 

 隊長の言葉は少しつかみどころがなく、オルガさんが更に聞き返します。私もそう思います。

 

「あれはアールヴ族の村であろう。隊結成のおりに話したと思うが? アールブ族は過去に我らといがみ合った歴史がある。今の我らはともかく、あちらがどう出て来るかはわからんと言うことだ」

 

「けっ、めんどくせえなぁ。お貴族さまのやったことで面倒ごとになるってんなら、今からの対応もそっちでうまくやってもらいてえもんだ。ここへ来て人とやり合うなんて真っ平ごめんだぜ」

 

 うわぁ、オルガさん、それはちょっと言い過ぎでは……。

 

「き、貴様! ソールバルグ伯に対してあまりに無礼な口ぶり。今までもそうであったがあまりに目に余……」

 

「フレデリク、よい、かまわぬ。ふふ、オルガよ、お前の言葉耳に痛いが、私とて先祖たちの行いは迷惑に思っている。が、そのようなこと今更言っても無意味。こうやって話していてもことが進むわけでもない。物は試しに行ってみようと思っているがお前は行くのが怖いのか、うん?」

 

 フレデリクさんは他所の砦の魔法士で、ソールバルグ派ラーシェン子爵の次男のはずです。オルガさんの発言にいつもイライラしてましたからね。

 隊長がいつもたしなめてますが、その隊長はオルガさんをあおり返してます。隊長はなにげにオルガさんを気に入ってるみたいですが、やめて欲しいです。胃が痛んでくる気がします。

 

「ぬあぁ、言いやがったな。このオレが怖気(おじけ)づくなんて、そんなことある訳ねぇだろが。よーし、早く行こうじゃねぇか! そらドリス、とろくせえお貴族様は置いておいて早くあそこまでいっちまおうぜ!」

 

「うわ、ちょっとオルガ、私を巻き込まないでくれる? ちゃんとみんなで行動しなきゃ危ないよ。アンヌさま~、こいつを何とかしてくださ~い!」

 

 オルガさん、ちょろすぎです。

 

 私はオルガさんを見て、隊長を見て、もうどうとでもしてと思うしかありませんでした。

 まぁ隊長はいつもの乾いた笑顔とちがう、ほんとに面白そうな表情を浮かべているのでまぁいいのでしょうけど。

 

 大変な行程でしたけど、ここまで何とかこれたのもオルガさんのこうした気性のおかげだったかもしれません。あのクルトさんとも気が合っていましたしね。

 

 ともかくこの先も何事もなくうまくいってくれることを女神フェリアナ様に祈るしかないです。

 そしてミーアちゃんともなんとか出会えますように。

 

 

***

 

 

 湖岸にたどり着いてからは岸伝いに歩いているため随分楽になりましたが、それでも村までの距離は相当あり、時折吹き付けて来る風もとても冷たく、季節の進みを嫌でも感じました。

 岸沿いに歩き出してからというもの、魔獣と出会うことはほぼなくなりました。時折空からくる襲撃に備えるくらいです。

 スヴェン隊長からは水には触らないようにと注意されています。過去のこの湖の報告資料に魔力が抜ける感覚を覚えるとの記述があったとかで用心しろとのことです。

 

 気になります。

 

 一見綺麗な水をたたえているかのように見える湖ですが、注意深く見れば所々に濃い紫色をした怪しい(よど)みのようなものが目につきます。魔力を抜かれることを覚悟のうえで魔導ボードで解析してみれば魔力の残滓が集まったもののようで、わずかではあるものの魔力反応が得られます。ただ、魔力を抜かれるような感覚はありません。

 

 うーん、また違うものとか、現象なのでしょうか?

 ただ人体には良い影響は与えないようで、魔力中毒や属性違いの魔力による酩酊(めいてい)状態に近い症状が出ることが解析できました。多く取り込めばそれ以上の症状、最悪死に至ることすらあるかもしれません。

 

 一応スヴェン隊長に報告しつつ、湖岸を歩きを続け……、

 

 私たちの探索行程はいよいよ大詰めを迎えていると思っていいのでしょうか?

 

 

 遠くから見えていた土壁に囲まれた村らしき場所。

 当面の目標として目指していたアールヴ族の村らしきところに到着したのでした。

 





アールヴ編も大詰め
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