スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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必然と騒動

 最初に気付いたのは毎日かかさず湖の様子を確認していた僕だった。

 

 村の前は入り組んだ地形が多いフィーラヴ湖にしては珍しく浜辺が続いてるところで、とても見通しが良くて景色も抜群にいい。

 そんな浜辺が続く湖畔で、日々改善されていく湖の様子を眺めていた時に、まだかなり離れているとはいえ浜辺沿いをこちらに向けて歩いている集団が目に入ったんだ。

 

 アールヴ族は基本身体能力が高く、当然視力だって汎人族よりも優れてるわけだけど、そんなアールブ族の中でも僕は飛びぬけて視力がいいと自負してる。

 

「十人以上はいそう。うーん、門番から壁の外に村人が出てるなんて話も聞いてないし……、どう考えてもアールヴ族じゃないよね」

 

 ここまで来るにはまだまだ時間がかかるとは思う。途中で他所にそれて行ってくれるといいんだけど……、奴らの行先を見失ってしまうのもそれはそれでマズイ気もするな。

 

 僕は嫌な予感をひしひしと感じたので、何はともあれ長老たちに報告するため樹上宮(ツリーヴィラ)に向かうことにした。

 

 

***

 

「いつかはまた来るとは思うていたが、なんとも悪い頃合いに来てくれたものじゃて」

 

 じじ様とその他大勢が僕と共に浜辺へと戻り、向かってくる集団を見ての言葉がこれ。僕もそうじゃないかと思った通り、やっぱり汎人族が向かって来てるってことで間違いないみたい。

 決め手は集団の中の幾人かが着ている服で、汎人族の貴族が好む意匠(デザイン)が入ってるらしい。質素な僕らの服装と違って、細かい刺繍(ししゅう)や細工が入ったいかにも手間がかかってそうな服だしね、あれなら僕にだってわかるよ。

 

 そうこうしているうちにも汎人族らしき集団はどんどん近づいて来るし、僕ら側も人が集まって来るはで、だんだん物々しい雰囲気が漂ってきた。

 

 

「リイ=ナ、大丈夫かな……」

 

 騒ぎに駆け付けてきたシイ=ナが、僕の横に立つと珍しく弱気な問いかけをしてきた。そんなの僕にもわかんないよ。肩をすくめて見せると、ムッとした表情を浮かべながらも自分でもないと思ったのか、黙って向かってくる集団を見ていることにしたみたい。

 

 

***

 

 

 浜辺から続く緩やかな丘、ゆるい坂道を登り切ったところに通行門がある。周囲には村を囲うように土壁が連なり、その外側はもう魔獣の住む樹海だ。

 

 僕らは汎人族集団十二人と、通行門前で相まみえた。

 

 迎えたアールヴ族側はじじ様を筆頭に、長老のひとりであるエボ=ツ様、僕とシイ=ナ、後は父様たち戦うことに(ひい)でた男衆が八人出ることで向こうと数を合わせ、軋轢(あつれき)となるようなことは避けた。

 もっとも通行門の向こう、見えないところには待機してる奴らがいっぱいいると思うけど、ここは僕らの村なんだし文句言われる筋合いないよね。ほんとはシイ=ナにもそっち側に居て欲しかったんだけどね。

 

 目の前には汎人族の集団。

 男が八人、そして驚くことに女の人が三人もいる。二人は小柄で、あまり戦えそうもない見た目だけど、あとの一人はヘタな男よりも強そうな見た目してるし、何より僕より大きいや。

 

 汎人族とアールヴ族が争ったのはじじ様世代よりも前の話で、今を生きる僕たちは直接悪意にさらされたり理不尽な扱いを受けた訳ではないけど、そもそもこんな辺境の危険な樹海の中で暮らさざるを得なくなった理由は汎人族の過去の迫害によるものなんだから関係ないってことは絶対ない。

 それにここに定住するまでの逃避行の話や、生活が落ち着くまでの苦労話をさんざん聞かされて育った村民たちの汎人族への印象が、良いものであるとは間違っても言えない。

 

 まぁ、そうは言っても憎しみまで覚えるかといえば、汎人族との混血が進んで行っている僕らや父様世代にとってはちょっと微妙な感じであるのも事実なんだけどね……。

 

 

 とりあえずそんな感じ。

 

 

 

「我らはフェイロー大陸の覇国であるヴェスタル帝国、その西の護りたるヴィースハウン領より参った。私は領主であるヴィースハウン公セヴェリンより名代(みょうだい)(たまわ)っているスヴェン=ソールバルグである。領境警備隊辺境区ケービック砦隊長であり、今回のヴィーアル樹海探索にあたっての部隊隊長を任ぜられている」

 

 背の高い強面の美丈夫が、良く通る声で高らかに名乗りを上げた。

 貴族なんて会ったことないけど、いかにも自信たっぷりで無言の威圧感を振りまいてるこの人はきっとお貴族様で間違いないと思う。

 

「ほう、この樹海の探索部隊と申されたか。して、この辺境も辺境、危険な魔獣が跋扈(ばっこ)し、()()()()()()よりこの地へと追いやられた我ら気高きアールヴが細々と暮らす寒村へ何用で参られたわけですかな? ああ、いかんいかん、我の紹介をしておらなんだ。年を取ると物忘れがひどくてのぉ、わしはこの村を取り仕切る長老の一人、アズ=イと申すもの。短い付き合いであろうが片隅にでも覚えておいてもらおうかの」

 

 じじ様、挑発しないで。

 普段ののらりくらり、のほほんとした様子が嘘のように(けん)を含んだ言葉に僕ビックリだよ。

 

「ほほう……」

 

 ほらあ、強面美丈夫の隊長さんの口元が、嫌な形にゆがんだ笑いになってる!

 

「では遠慮なく申そう。我らはとある情報筋から樹海内に広大な湖があるとの知見を得ており、樹海探索の中でそれを見つけることを一つの目標に掲げていたのだが、探索を進めていくなか、ようやく(ここ)を発見するという僥倖(ぎょうこう)を得た。そして、もう一つ。――それとは別に湖に付帯することで少々確認したいこともあってな、ついては不躾(ぶしつけ)ではあるが貴方(きほう)らの村内を(あらた)めさせてもらいたい」

 

 そう言い放った汎人族の貴族。ソールバルグさんだっけ?

 なんかもう、とてつもなく面倒くさくなりそうな予感しかしない!

 

 どうなるんだこれ?

 って思った矢先。

 

 湖に異常としか思えない異変が起こった。

 

 さざ波が立つ程度だった穏やかな湖面。

 

 

 その湖面に家が二、三軒入ってしまいそうな大きな渦巻きが突如出現し、あっという間に湖面は激しい水流で乱れまくりの大荒れとなった。

 しかもあろうことか、その渦の中から、時折鞭を鳴らしたような鋭い音をたてつつ竜巻みたいなものが幾条も出て来て、しかもそれらがそのまま移動しちゃうとか……訳の分からない様相になっていった。

 

 何で水の中から竜巻出て来るのっ?

 竜巻って空に出来るものだよね?

 

 しかも、間を置いて至る所から同じような大渦巻きが発生するしまつ!

 

 かなり沖の方とはいえ丘の上ってこともあり、その異常な様子は遠くからでもはっきりと見ることが出来た。

 

 

 汎人族も、アールヴ族もついさっきまでの張り詰めた緊張感、丸ごとそれに、ごっそり根こそぎ持っていかれちゃったよ。

 

 

 僕……、こんなこと出来るお方、ちょっとばかり心当たり……あるんですがっ!

 

 

 

 

 

 

 

「ミーア……様……」

 

 

 

 

 一体何やってるんですかーーーー!





あ~あ……
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