スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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樹上宮会談

 歩き出したのはいいんだけどどうやら随分村から離れたところに出たみたい。

 いったい村はどこかしらん?

 

 湖の中では相当ぐるぐるふらふら彷徨(さまよ)いましたし、入ったところがわからなくなっちゃうのは当然で仕方ないことだよね!

 

 周りを見回してみても変わり映えのしない景色が延々広がっててよくわからない。

 

 こういう時、スライム体が得意とする魔力探知が便利なのです!

 

 遠くの魔力も探知するイメージで、スライム体をアンテナみたくにゅい~んと幾本かミーアボディから伸ばし、探索してみた。

 

 

 うむむむ。

 

 

「うへぇ、なんかもう周囲から嫌って言うほど魔力反応でてわけわからない……」

 

 

 つ、使えない……。

 

 

 ん?

 

 すっごく遠いところにかなり強い魔力反応ある……。

 樹海のもっと奥の方、私も行ったことない方向。だから、村とは関係ないけど。

 

 なんだろ?

 

 ま、いっか。関係ないです。

 

 

 魔力で見当つけられないならこんな時の強い味方。

 私にはスライムウイング!っがあるのです。

 

 背中から翅をはやし、はためかせてちゃっちゃと飛び上がります。とはいってもほとんど魔力だよりなんですどね。

 

 二、三十メートルくらい高度をとったところでようやく湖の全景が見渡せるようになりました。ほんと嫌になるくらい大きな湖です。

 

 さて村はどこかなっと。

 岸から少し離れたところで土壁に囲まれてるところだからね、見つけやすいと思うのです。

 

「みーつけた!」

 

 視力強化もしてますし、あっさり見つけれました。結構離れてますがまぁ、飛んでいけばものの数分で行けるでしょう。

 これでも飛べる速度はかなり向上して、ママチャリくらいの速度は出せるのですよ、ふっふ~ん!

 

 さあ、改めて村に向けてれっつごー!

 

 

***

 

 

 ミーア様が起こしたに違いない常識はずれな出来事で、一時(いっとき)何とも言えない空気が広がったものの、アールヴと汎人族の数世代ぶりかの会談がなされることになった。

 じじ様ですら直接迫害を受けた経験をした訳ではないので、さすがにその場で争うという状況に陥ることにはならず、それに周囲のみんなから反発や異論もとりあえず出なくて……僕は知らず知らずのうちに入っていた肩の力が抜けた。

 

 いくらアールヴ族が強いといっても所詮少数民族。過去の一族ですらここへ追いやられたのに今争ってどうなるの? って話だもんね。

 

 で、どこで会談することになったかといえば、僕らの村でそんなこと出来る場所がどこかといえば、樹上宮(ツリーヴィラ)しかないよね。あそこもそんなに広い訳じゃないけど、十数人ならなんとかなるかな。

 

 

***

 

 

 スヴェン隊長がアールヴ族の長らしきご老人と話をしています。

 いきなり争うことにならなくて、ホッとしています。いくら過去に遺恨がある種族とはいえ、人同士が争うなんて私はしたくありません……。

 

 それにしてもさっきの湖の出来事にはとても驚かされました。

 あんなことがあの湖では頻繁に起きるんでしょうか?

 

 そ、そんなことないですよね……だって、あちらの皆さんもかなり驚いた表情を浮かべていたし。

 それにちょっと気になる言葉が聞こえた気もするんです……。

 

 ミーア様……って。

 

 その声を発したのは、華奢な感じを受けますが私よりは背も高く、何よりアールヴ族特有の尖った耳と額の横に角を持つとてもきれいな顔をした少年です。

 

 とても気になります。

 

 もしかしてミーアちゃんと何らかの関係を持つ方なのでしょうか?

 今すぐ問いかけてみたいところなのですがそこはぐっとこらえます。今から始まる会談で必ずお話しする機会はあると思いますから。

 

 アールヴの長に導かれ、私たちは土壁に設けられた門をくぐり、村の中に入りました。

 

 村の中はヴィースハウンの一般的な街並みと違い、自然と調和したといえば聞こえはいいですが、正直人が大勢住んでいる村とは思えない佇まいをしています。

 地面は当然のように土のまま、雑草が至る所にというかほとんどがそれで覆われ、人が多く通るところのみ踏み固められて道になっているといった状態です。家々の間隔もかなり離れていて、高床になってはいるものの木で造られた簡素な建物です。

 

 正直あまり文化的な暮らしをしているようには見えないです。

 まぁヴィーアル樹海で暮らしているのだから、それを望むのは逆に酷と言うものなのかな?

 

 そんなことを思いながらみんなの後を付いて行けば、周囲の樹々と比べ、ひと際大きな存在感を示す、太い幹がいくつも()り集まりとんでもない太さになった大木のもとへと到着しました。

 見上げれば、驚くことに樹の上、十メートル近くありそうなところに、この村で見た中では一番立派ではと思えるなだらかな傾斜の屋根をもち、太い幹に床を支えられぐらつくことなくそこに在る建物がその存在感を示していました。

 

「すっげぇな、ありゃ。しかしまぁよくもあんなところにおっ建てたもんだぜ。めんどくせぇだろうによ」

 

 オルガさんが遠慮のかけらもなく、大きな声でそんなことを言い放ちます。

 ああ、聞いててハラハラします。

 

 確かに、どうしてわざわざあんなところに……、と思わないでもないですが、きっと種族特有のなにかがあるんだと思います。

 

 なんて他人事のように感想を思い浮かべていましたが、会談場所はそこみたいです。

 

 ど、どうやって上るんですか、あれ。

 

 

***

 

 

 汎人族の集団を樹上宮の広間に案内したものの、男たちはともかく可愛らしい女の人で一人、上ってくるのに相当怖い思いをしたようで、涙目になっててちょっとかわいそうに思った。

 

 でもまぁここまで来てるんだし、今更だよね。

 

「リイ=ナや、悪いが簡単に席を設けてくれるかの」

 

 じじ様が僕に振ってきた。全くもう、すぐ僕に面倒を押し付けるんだから。

 

「はいはい、わかりましたよ。シイ=ナ、手伝ってよ」

 

 すかさず幼馴染を巻き込んでおく。

 シイ=ナは一瞬、表情をひく付かせたけど、汎人族の手前かっこ悪いこともできず、素直に手伝ってくれた。

 広間の奥の部屋に押し込んであった長椅子を四組。それに大きなテーブル二組。それをお互いが対面できるように整えたところで僕らの役目は終了だ。

 

 

「では始めましょうかの」

 

「うむ、よろしく頼む」

 

 じじ様を真ん中にエボ=ツ様と、駆けつけてきたイル=ムさんが両脇に座った。残りは座らずにその後ろに並んで立ってる感じ。

 向かって汎人族側は一番目立って偉そうだった強面、ソールバルグさんだっけ……を真ん中に、両脇に優しそうな男としかめっ面したちょっと神経質そうな男が座り、もう一人、上ってくるとき涙目だった女の人もソールバルグさんに指示され優しそうな男の人の隣へ遠慮がちながら座った。残りはこっちと同じくみんな後ろに立ってることにしたみたい。

 

 お互いが十二人ずつは変わらない。

 

 まぁここはこの人数で居るには狭いし、全員座るなんて警戒して出来ないのかな……。

 

 どうでもいいや。

 

 一応武器類は入り口で外してもらい、壁に立てかけてもらってるんだけど、案外素直に応じてくれたのは意外だった。でもまぁ魔法もあるし、ほんと形式にしかすぎないよね。

 

 

「では早速だが、まずはこの場を設けてもらった礼を言わせていただく。感謝する。我らには過去に忌まわしき出来事があり、貴方らにも積年の想いがあろうかと思うが、今回我らは政治的な思惑でこの探索隊を組んだわけではなく、争いを望むものでもない。その点を鑑みてこの会談に臨んでいただきたく思う」

 

 都合いいこと言ってるなぁ。

 でもまぁ僕も今更争っても仕方ないと思うし……、このまま穏やかに進んで欲しいな。

 

「ほほっ、それはそれは。ずいぶん都合のよいことですのう……」

 

「……ふむ」

 

 じ、じじさまぁ!

 

「とはいえじゃ! まぁわしにとって遺恨がないとは露ほども言えぬものの、この村の長としての立場はわきまえておる。そちらとの地力の差もな。……先ほどもちらりと聞きは致したが、まずはご用件を伺うとしますかのぉ?」

 

 お、驚かさないでよ。

 心臓止まっちゃうよ。

 

 

 僕はホッとしたところで頭の片隅にちょっとした違和感を覚えた。

 

 とってもなじみあるそれ。

 

 

 なんとも力強くもとても優しい……、そんな魔力。

 

 

 なにげに窓から外を見た。

 ふと横を見ればシイ=ナも同じように窓の外を気にしてる。

 

 お互い苦笑いしながら、二人して視力を強化して外を見た。

 

 

 

 そんな僕らの目に、ゆっくり、優雅に、気持ちよさそうに空を飛んでる久しぶりに見る姿。

 

 湖の精霊にして主フィーラヴ。

 

 

 ミーア様の姿が目に飛び込んできたのだった。

 





普通に進むとは思えない件w
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