スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
アールヴ族の長老で代表として出てきたアズ=イと名乗った老人は、なかなか癖のある人物ではあったものの、変に対立を
ふふっ、相当挑発というか嫌味めいた物言いはされたがな。だが過去にヴェスタルの各領より受けたであろう迫害を思えばそれも致し方なしか。ここにはアールヴと揉めるためにきたのではない、あちらの非難めいた発言に、過度の反応はしないよう部隊の者らにも釘を刺しておかねばな。
特にフレデリク。
奴はソールバルグ派のラーシェン子爵家のものだが、家督を継げない次男ということもあり心持ちに余裕が少ない。ヨアンに注意するように申しつけてはあるが……。実力は上級三位の火属性魔法士であり、悪くはないのだがな。
面倒を起こさないで欲しいものだ。
「では改めて、ここに至る詳細を申そう。ここ最近、ヴィーアル樹海のあるヴァーゲアル島よりフェイロー大陸に渡ってくる魔獣の数が激増してきている。過去数十年に渡り、そのようなことは起こっておらず、なぜ今このような事態になってきているのか樹海を調査をする必要が出てきたのだ。
当然これが理由の全てではない訳だが、まずは相手の反応を見てみたい。
「ほうほう、なるほどのう。確かにここ数ヶ月、樹海の魔獣の動きに見るべきものがあったのは事実じゃ。まぁ我ら一族にとっては十分許容できる程度のものじゃったが。しかしのぉ、海峡を渡ってそちらに行く魔獣どももおったのですなぁ。ほほ、因果応報というものではないですかのう……。ああ、これは失礼申した。……、ほれソールバルグ殿、わざわざアールヴの村を訪れた理由は、確かそれだけではありませんでしたな。勿体つけずに続きを述べられればよかろう」
くく、このくそじじい。何かにつけて一言多いわ。
まぁ所詮、弱者の
言わせておけばいいのだ。それでガス抜きが出来るのならば手間がかからず良いというのに。
「では遠慮なく申そう。今話題にした湖。そこは少々変わった湖であるらしいな? 我らが持つ資料によれば、その湖に長く触れればその物の魔力を奪うのであるとか……。資料にはそれを称して魔喰の精霊が住む湖と記してあった。……これはまだこちらでも周知されていない事実なのだが、その湖の湖水から魔力紋を取り出すことに成功していてな、更に驚くことにその魔力紋と同一の魔力紋をもつ人物をこちらは確認しているのだ。その者の名はミーアという」
俺のこの発言に長老含め、アールヴ族の面々の表情が動いたことを俺は見逃さなかった。
それと参加者のうち、後ろに立っている少年。この少年が先ほどの湖の騒ぎの中で小さくつぶやいていた言葉を俺は聞き逃してはいない。
あやつはいる。
精霊などと称されているのは笑えるが、状況証拠的にはあやつでしかありえないし、こ奴らの様子を見てもそれは明らか。
「湖の、いずれの物から得られているかもわからない魔力紋。それと一致する魔力紋をもつ人物など、なんとも不思議ではあると思わぬか? しかもだ、その調査に使った湖水はな、アールヴと人、互いの種族が争った時代にまで
「えっ、ミーアちゃん? ええっ?」
この言葉にはアールヴ族どころか我が隊からもどよめきの声が上がった。
特にアンヌの動揺が大きいようで、会談中にもかかわらず、大きな声を上げた。冒険者のオルガやドリスが
ここに至っても詳細は告げていなかったからな。
仕方あるまい。
「長老アズ=イ殿。それにアールヴ族の者たちよ。貴方ら、ミーアのこと……知っているのであろう? 歳は九歳の女児で、薄紫の髪に濃い紫の目。背格好は年齢よりも更に幼く見える子供だが、それはあくまで見た目だけのこと。どういう存在なのか、確たる証がある存在ではない――。我ら……、いや、俺は、そのミーアがここに来ていると確信している。この村にいるのではないか? ぜひ会わせてもらいたいと思っているのだが、いかがか?」
***
村に近づくにつれ、ようやく人々の魔力が認識出来るようになってきました。
「むむぅ、例の樹の上の家、
まぁ、この距離では魔道具あったとしてもわからないでしょうけど。
あと誰が居るかわかりませんけど、とりあえず覗いてみよう、シイ=ナくらいいるかもです。
「ん?」
まだ離れてますけど、私の目が窓から覗き見えるリイ=ナとシイ=ナの姿を捉えました。どうやらあちらも私に気付いたみたい! 中々いい目をしてます。さすが仮想エルフ!
「なんか言いたそうにしてますが、全くわかりません……、向かいに居る人たちを気にしてるみたいですけど」
首を振ったり、口をパクパクして何かを訴えかけて来るんですけど、全然要領を得ないです。そうこうしてるうちにもう樹上宮まで目と鼻の先、ってところまで近づいてしまいました。
リイ=ナが顔を上にあげて、何かつぶやいたのが聞こえました。
もうそれほどの距離なのです。
「ああ……、僕もう知らない」
リイ=ナは、そう言ってました。
ついでに横のシイ=ナが、「どうなっちゃうのこれ?」って言ってるのも聞こえました。
ええ?
なんかマズイ?
そして今更気付きました。
リイ=ナの前に、テーブルを隔てて座っている人物に。
そう。
振り向いてこちらを見て……、一時の間をもってニヤリと笑った……、その
***
「どうしたのだ少年。妙に落ち着きがないではないか?」
俺がミーアについてアールヴ族に問いかけていた、ちょうどその時、ミーアの名をつぶやいていた少年が妙にそわそわし、落ち着きのない様子を見せ始めた。少年の隣に立つ大人びた少女も同様な様子を見せている。
「あ、いえ、そのぉ……」
俺の問いに挙動不審な様子を示す少年。
こういった様子は、隊の部下共でもよく見ることだ。失敗を隠したり、何かを誤魔化そうとしているときに見せる行動そのもの。
俺はじっくりその様子を観察し、少年らの視線に違和感を覚えた。しょせん、普通の子供。俺を前に隠し通せるものなどあるはずもない。
その様子から得た結論。
俺は後ろを振り返ってみる。
何があるのかなどは建屋に入った時点で把握している。窓があり、木戸が開け放たれているのも分かっている。
「くははっ、なんだあれは。くく、面白い! あやつはいつも俺の想像の上を行くな」
窓の外。そこには、前に見たのはいつの頃になるだろうか。だがその時とたがわぬ容姿を持つ幼子。
遠路はるばる探し求めた、ミーアの姿があった。
ただし。
背中に四枚の淡く輝く大きな羽を生やし、空にふわり漂うように浮かぶ姿でもって。
ふんっ。
精霊と呼ぶはそういうことか……。
「ミーア……、ちゃん?」
アンヌが俺の行動に気付き、同じように外を見、あれを見つけて呆然とした表情を浮かべながらも声をかけている。
そうだ、アンヌ、その調子だ。
あやつを呼べ。気を引き、情に訴えろ。
決して逃すな。
そのために危険な中、わざわざお前を連れてきたのだからな……。
なるようになれ~