スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
とても久しぶりにミーアちゃんの姿を見ました。
ただその姿を見つけたのは、なんというか、驚くことに窓の外!
窓の外と言ってもここは普通の場所じゃありません。何しろ高い樹の上。まるで樹に同化しているかのように建てられた大きな建物は地上から十メートルほどの高さにあるんですから!
そう、ミーアちゃんは空に浮いていました。
「ミーア……、ちゃん?」
その背中には淡い輝きを帯びた透明感のある長い羽が四枚伸びていて、幻想的な美しさがあります。ただ、ふるふると緩やかに動いてはいますが、その緩慢な動きを見せる羽に飛べる力があるようにはとても見えませんけど……。
一体どうなってるの?
会わない間にミーアちゃんに何があったのでしょう?
精霊なんて呼ばれてたのはなぜ?
そんな疑問と久しぶりに姿が見れた嬉しさがない交ぜになってもう私の気持ちは大混乱です。
「おじゃま、しま~す……」
まだ戸惑いが抜けきらない私の前に、ミーアちゃんが緊張感のない声であいさつしながら窓から入って来たました。
「ミーアちゃん!」
「きゅふっ」
話しかけていたアールヴ族の長老さんなんか気にしてられません。私は浮かんでいるミーアちゃんに駆け寄り、半ば強引に引き寄せ、ぎゅっと胸に抱きしてしまいました。
ちょっと強引すぎて苦しそうな様子を見せていましたが、久しぶりのミーアちゃんの抱き心地を堪能し、声も聞けてとてもホッとし、安心しました。背中に生えていた羽はいつの間にか消えています。いったいどうなってるんでしょう?
でもそんな時は長く続かず……、スヴェン隊長が割って入って来て、ケービック砦での出来事について謝罪とはとても取れない拘束理由を語りつつ、あろうことかミーアちゃんにギアスを使おうとしています!
しゃがみこんでミーアちゃんと目を合わせ、問いかけてるスヴェン隊長。
ああ、あの感情の全く読み取れない金色の目がミーアちゃんの目を捉えて離しません。ミーアちゃんもその目に吸い寄せられるかのように見つめ返していて、どこかうつろ気な様子になってきています。
ああ、スヴェン隊長。ミーアちゃんに何をするつもりなんですか?
このままじゃダメって思う気持ちがある反面、警備隊の隊長で、上級貴族であるスヴェン様に対し「やめてください」という、その一言が言い出せない私がいます。
「そこまでにしていただきたいものですな」
そこに私の気持ちを肩代わりしてくれたかのように救いの言葉が投げかけられました!
声の
アズ=イさんとスヴェン隊長はにらみ合いながら皮肉交じりの言葉の
おかげさまでミーアちゃんにギアスの効果はまだ及んでいないみたいです。ミーアちゃんに対し、いきなりギアスを使おうとするなんてひどいです。本人の意志も確認せず、どんな誓約を与えようとしていたのでしょう?
そんな時です。
会合の席の奥の方から樹が裂けるような、大きな音が部屋中に響き渡りました。
「きゃっ」
つい声を上げてしまって恥ずかしい。
ミーアちゃんもびっくりしたのか私に抱き着いてきます。
ああ、可愛いすぎます!
確か……、奥には女神フェリアナ像とよくわからないお椀のような大きな器を祀った祭壇があったと思います。皆の視線が奥の祭壇へと向けられました。
同時にアールヴ族の人々から嘆きと悲鳴めいた声が上がります。
それも仕方ないかもです。
女神フェリアナ像に肩から斜め下に走る大きな亀裂が入っていたんですから……。
でも私はそれどころではありません。
私の腰に手を回していたミーアちゃんのその腕から力が失われ、そのまま床にぺたんと座り込んでしまいました。
「ミーアちゃん!」
「ミーア様!」
思わず声を掛けましたが、脇からも同じように声をかけて来る子アールヴ族の女の子がいました。確かシイ=ナさん。私のことを睨んでくるのでちょっと怖いなと思った、私より少し年下の女の子です。
ああ、そんなことよりミーアちゃんは気を失っていました。
私は床にへたり込んだミーアちゃんの頭を自分の膝の上に乗せ、頭を撫でてあげます。サラサラの淡い紫色の髪はとても撫で心地がいいんだけど、今はそんなことを考えてる時じゃない。紫の色をした綺麗な瞳はきゅっと閉じられ、その目で私を見てくれることはありません。
「汎人族のおまえ。ミーア様は私が介抱するからそこをどいて」
な、何言ってるの、この子。
「けっこうです。ミーアちゃんは私がずっと面倒を見ていた子です。私が様子を見ていますから気になさらないでください」
「ふざけないで! ミーア様はフィーラヴ村の命、フィーラヴ湖の守りの精霊。我らアールヴ族が代々
「なっ」
年下ですが私より背が高いその女の子にそう言われ、私はちょっと及び腰になってしまいます。
ううぅ、でも確かにこのまま床の上で膝枕という訳にも……。
「お嬢さん、我が隊のアンヌが面倒かけました。さて、この状況です。そちら側も少々騒然としていますし、ミーアさんもこの様子です。ですから……
ヨアン副長が横から口を挟んできました。
むむう、この子と一緒に……、ですか。私はアールヴ族の女の子、シイ=ナを見る。
え、ちょっと? 頬が赤く染まってるんですが!
この子、ヨアン副長の美男子王子様顔にのぼせ上ちゃってるよ……。
副長……、女の敵。これ絶対わざとです。
「え、あ、ま、まぁ、いいです……けど」
ちょっと白けてしまうような流れですが、ミーアちゃんをこのままにしておくわけにはいきません。納得は出来ませんが妥協します。
という訳で、ミーアちゃんが寝泊まりしていたというシイ=ナさんのお家で介抱することになりました。
それにしてもミーアちゃん。未だ目が覚める気配がありません。
どうしてしまったのでしょう?
心配です。
***
…………。
またここ、です――。
まったく光がない、今自分がどういう状態なのかもわからない……なにもない闇。
深い深い、闇の深淵。
永遠とも、一瞬とも思える間。
今をもって、どれだけそこにいるのか判断も付かない場所。
…………。
――またそこに、闇とは真逆の光。
神々しいばかりの光。
光の洪水が私? を包み込むように突如現れました。
「もう、いったいなんなんでしょう」
ここにいる私? は、思念体であろうと思われます。
体もなにもないですし。
もう二回目ですからね、このずしりとくる、重い、心の底から痛むような感覚にも慣れました。
「もういいですから! 迂遠なやりかたやめて、はっきり伝えてもらいたいんですけどっ!」
モチロン、体ないですからこれは心のさけび!
女神なんでしょ?
これやってるの。
さっき女神像裂けてましたけど、大丈夫なのですかね?
ずきりっ。
ひと際大きな痛み。
これはきたか?
【…………災禍、……凶龍……】
はいはい、それはもういいです。
だから何?
【湖……。浄化、……感謝……】
【その……で、更なる……を、進め……、欲しか……のです、が】
【けれ……ど、わた……しの力……、抑えきれない……、現れ……す】
【お願い……、歪なる……龍……、滅し、て、……直接……の、浄化、……だ、さい】
はあぁ?
ったく、どうしてこうもたどたどしいかな?
その辺前も同じようなこと言ってた気がするし!
【もう……が、……ありませ……】
「だから、もっと!」
【……封印、ば、しょ……、……&%###%$**|¥¥%#……です。もう、ほんと……に、じか…………ません】
くわしくっ、って、ええっ?
………。
くあっ、いったっ!
――――――――。
***
「まって! って……、っつぅ……」
もうね。
最低な気分です……。
現実に戻ってまで痛みが残るだなんて……。この体になって初めて。久しぶりに感じましたが、やっぱこんなの必要ないです。
「ミーアちゃん!」
「ミーア様っ!」
うわぁ、これどんな状況?
私の顔を覗き込むアンヌとシイ=ナが居ます。
ほんとなら二人と親睦を深めたいところ……だけどっ!
「アズ=イ、はんばーぐ? をここ、よんで?」
「ふぇ? アズ=イ様? ここへ?」
そう、ここへ。
シイ=ナの問いに頷く私。
「え? はんばーぐ? えっと、ミーアちゃん何を言って……、って、もしかしてソールバルグ卿? スヴェン隊長ですか?」
ハンバーグ知らないとは!
ああ、食べたくなってきた。
「そう、そのひと。あんにゅ、シイ=ナ。ふたり、ここつれてくる! はなし、あるっ!」
もうね、細かいこたぁいいんだよっ、状態。
話だけ通して……、さっさと終わらす!
終わらせたい!