スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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人はどこでもろくなことしない

 スヴェン隊長とミーアちゃんのやり取りといっていいかわからない、かみ合わない会話が終わりました?

 

 終わったというか、まだスヴェン隊長は話足りなそうだったのですが、ミーアちゃんはそんな隊長の様子を気にするそぶりすら見せず、動き出しちゃたのです。

 

「いって、くる」

 

 私ともうひとり、アールヴの女性シイ=ナさんに軽く、ほんとに軽く、相変わらずのたどたどしい口調でそう一言いって、久しぶりで出会った時と同じように背中からするりと羽を出し、流れるような動きで留める間もなく窓から飛び立っていきました。

 

 もう、何から突っ込んでいいのかわからない。

 スヴェン隊長の顔を見るのが怖いです。

 

 さっきの話からすると私と冒険者のお二人、オルガさんとドリスさんをここに残して隊長たちはヴィースハウン領へと急ぎ戻るみたいだけど……、肝心のミーアちゃんは取り付くしまもなくさっさと居なくなってしまいました。

 

 というかです。

 

 ミーアちゃん。

 

 どうして飛んじゃってるんですか!

 背中の羽、なんですか?

 

 湖の精霊って?

 

 ミーアちゃん……、あなたっていったい……。

 

 あってすぐも混乱しましたが、会えた嬉しさが上回って脇に追いやられていた疑問が、時間を置き少し落ち着いてきたことでまた湧き上がってきました。

 私の手元にはミーアちゃんから託された小さなお守り(アミュレット)が残るのみです。細い革ひもが付けられていて首から下げられるようにしてありました。私とシイ=ナさんはほとんど同時にもらったお守りを首からさげ、失わないよう首元から胸の中へと落とし込みました。

 

 はぁ。

 

 スヴェン隊長じゃないけれど……、ミーアちゃん、ほんとうにあなたは何者なんですか?

 やっぱり精霊様なのですか?

 

 羽が生えた神々しいまでの姿。

 同じ人であるとはとても思えません……。

 

 思えば出会った頃。

 

 世の中の常識を知らない。

 表情も変わらない、喜怒哀楽をほとんど見せない。魔器官も非活性(パッシブ)のまま。

 

 色々ありえないことだらけの女の子でした。

 

 海岸に流れ着いていた女の子。

 私たちは勝手に廃村の女の子と紐づけしたけど……、それも間違いだったのでしょうか?

 

 今更そんなことはどうでもいいか。

 ミーアちゃんの存在に変わりはないのですから。

 

 だから、これからも一緒に居たいと思うのは厚かましい願いなのでしょうか?

 

 そう願ってはいけない、おこがましい存在なのでしょうか?

 

 

「くうっ。……あのものはなんとも、本当に如何(いかん)ともしがたいな。だがそんなことを言っていても仕方がないというもの。ヨアン! ひとまずケービック砦へ戻る。そこで態勢を整え領都の守備隊や各砦との連携も確認せねばならぬ。ミーアの件は不安しかないが、ここは残す三人に任せるしかなかろう」

 

 周りもそっちのけで思い悩んでいたら、スヴェン隊長が早速動き出しました。

 

 言葉はきついし、上級貴族ゆえの横柄なところがどうしても目に付きがちですが、自分が引き受けた警備隊や部隊の運営に関しては律儀で真面目な方なのです。

 

「はっ、こちらはいつでも動けます。ミーアさんから渡された虹色魔石を活用させてもらえるのであれば帰途、更に言えば砦守備においても絶大な効果を期待できるかと思われます」

 

「うむ……、使途については任せる。数多く渡されたとはいえ限りはある。使い処は誤らぬようにな」

 

 ミーアちゃんが私たちに用意してくれた虹色魔石。全部で二十個だったけど、配分に関してはヨアン副長とアールヴ族との間で決めるそうだ。

 副長がいい笑顔をうかべていたから、対応するアールヴの人がちょっと気の毒に思えてきた。アールヴの人は虹色魔石に驚いてはいたけど実際の効果や使い道なんてわからないだろうし……、いいようにあしらわれる未来がみえます。

 

 狭いシイ=ナさんの家で、これ以上騒いでいても迷惑をかけるだけだし、村の人たちの剣呑な雰囲気は相変わらずなので隊長たちは早々にアールヴの村から出ることにしたようです。

 樹海は少し前のあの現象からずっと騒々し気な様子や雰囲気に覆われているようで、あの中に再び戻っていく隊のみんなが心配ではありますが、隊長を筆頭に強い人ばかりだし、虹色魔石もあります。大丈夫だと思いたいです。

 

 無事ヴィースハウン領へ戻れることをお祈りします。

 

 私は私でこのアールヴの村にオルガさん、ドリスさんと居残りになります。

 ミーアちゃんがいればまた違ったのでしょうけれど、いきなりいなくなっちゃうし。

 

 不安がないと言えばうそになります。

 でもそれでも、ミーアちゃんが無事に戻ってくるのを信じて三人で待っていたいと思います。

 

 

 あ、ミーアちゃん!

 

 ちゃんとここへ戻って来てくれるよね?

 

 またそのままどこかへ行っちゃうなんて……、ないよね?

 

 

 

***

 

 

 

 私のことをいつの間にか勝手に色々こきつかおうとする女神に思うところはかな~りありますが、そうは言ってもこのままではアンヌに危害が及ぶかもしれません。

 

 この世界がどうなろうと私は一向(いっこう)に構いませんが、アンヌ……と、ついでに私が多少関わりをもった人たちが可哀想な目に遭うのもちょっと、あれなので。

 

 

 不本意ながら女神の言うことを聞いてやります。

 

 

 

 空を飛ぶこと二時間あまり。

 時速四十キロ台の遅い速度ですが、八十キロほどの距離は伊達(だて)でなく、もう眼下の景色は湖ではとうになく、新たな場所、来たところがない土地へと変化していました。

 

 長きを生きましたがこうして知らないところがまだ多くあるのはいかに私が出不精引きこもりのスライム娘であったかがわかるというものです。

 

 あ、娘というのはミーアボディを手に入れてからの話ですけれども。

 

 この辺りはこの世界の人々にとっても未踏の地であり、樹海すらなく、荒涼とした大地が広がっていました。

 

「むぅ、なんでしょうかここ。何にも無いし、何にも居ないです」

 

 空から降り立った私の目に映るのは見渡す限りの不毛の大地。

 まあそれは空から見ていてわかっていたことですが、改めて自分の足で踏みしめるとそれがより一層強い印象となって心にぶっ刺さってきます。

 

 目の前にはそんな大地が急激に盛り上がり、小山というには高い、でも山と言うには低い……、ぱっとみ火山を思わせるような荒涼とした岩肌を(さら)した、まぁ結局言葉が見当たらないので「山」があります。

 

 生命の痕跡は、植物を含めて一つもなく、魔力どころか気配の一つもありません。

 

 生物が存在するには余りにも毒が強すぎるのです。

 

 その災厄が放つ毒。

 

 

 魔素が。

 

 

 そう、魔力の気配がないといいましたがただ一つ例外がありました。

 今もひしひしと感じる、普通の生き物には毒にしかならない絶大な魔素を放つ存在を除いて。

 

 魔素は女神の頭痛のお告げ(いわ)く、生き物から出された魔力、それがやがて大気に滲み、やがて地や海に戻りたまったもの、らしいです。通常それは四元の精霊の働きと自然の営みの中で毒素は抜かれ、小さな生き物たちに還元され、循環されていたらしいです。

 

 ですが。

 

 そんな(ことわり)から外れる出来事が大昔、人々の言う神話の時代と言えるくらい遠い昔にあったそうです。

 災禍の凶龍は本来、精霊たちを統べる大精霊で、この(ほし)を守る守護精霊でもあったらしいのですが、その出来事により狂ってしまったそうです。

 

 それ以降、精霊らは魔素の調整を放棄しやがて次々とその姿を消していきました。精霊による循環がなされなくなった魔素は、やがてそのまま野生動物に取り込まれ、それが魔獣の発生を促すこととなりました。

 

 だからほんとは災禍の凶龍を魔獣と呼ぶのは違うのかもしれません。

 

 

 それにしても人ってどんな世界でも迷惑しかかけないってことがよくわかります。

 

 まぁ物語あるある話ですが。

 それが実際あると大迷惑も(はなは)だしいですが。 

 

 

 けどそんな話、私にはどうでもいいです。

 

 

 ってこともないです。

 今この瞬間に大迷惑被っていました!

 

 

 

 ああ。

 なんかとても嫌な予感がしてきました。

 

 

 ぷんぷんです。

 

 

 帰っていい?

 

 

 ――――。 

 

 

「うわ、いったっ」

 

 

 

 女神のばかっ、冗談なのに思いっきり頭痛ぶちかましてきましたっ!

 

 なにこの女神、寝てたり気を失てるときだけじゃ飽き足らずに今こうして私にダイレクトに干渉なんかしてくれちゃったりするの?

 

 ず~っと長い間、何も言ってこないで放置してたのに?

 神様の中での時間の意識何て所詮そんなものなのかもしれないけどっ。

 

 

 ずっる!

 

 

 

 考えればおかしいよね、私スライム……、ぶっちゃけ実はスライムじゃない他のものっぽいやつだけど、なのになぜ、それなのになぜ、頭痛みたいなこと引き起こされちゃってる訳?

 

 むーーー。

 

 思考してる限りはその(たぐい)の状態は引き起こせるってことなのかな?

 

 

 ……ま、いっか。いま考えることでもないです。

 

 

 

『ずずずずずぅぅん』

 

 

「うわっ」

 

 

 そんな嘘くさい擬音が案外ふさわしそうな、お腹にめちゃくちゃ響く、空気を震わせるような低く重い、まさに地震のような振動が起きました。

 

 いやもうこれ本物の地震といってもいいよね!

 

 

 山の斜面の中腹辺りが急激に盛り上がってきてます。

 

 

 こっちが地下にいるであろう、災禍さんに顔見せしに行く前にどうやらあちらさんから来てくれた模様。

 

 

 封印どしたのっ?

 

 

 えっ、崩壊した?

 

 

 ほんとか女神?

 放棄しちゃった、の間違いじゃないでしょうね?

 

 

 

 

 くっそ~!

 

 

 

 もうこうなったら仕方ありません。

 

 

 やってやります!

 





スライム娘はシリアスではないはず?



今章もようやく終わり見えた。



纏めに入るつもりです。
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