スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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◆は別視点ということで


◆村での出来事

 スヴェン隊長らを見送った私たちは、改めて惨劇に見舞われた村を見渡しました。

 

 目立つ瓦礫の処理、そして被害にあった村人たちの慰霊も終わり、静まりかえったソルヴェ村に、かつてあったはずの生活の音はもうありません。悲しいものです。

 

 その様子に皆の気分も落ち込みますが、そうも言ってはいられません。

 残ったのは私を含め五名になります。

 まずスヴェン隊長の副官である私、ヨアン=リンドグレーン。火属性持ちの上級二位の魔法士で、剣術も多少の心得があります。

 剣術や体術、身体強化に優れた体力バカの二人、中級二位の剣士クルトと三位のエリク。この二人は放っておくと無駄に突っ走るので注意が必要です。

 風属性中級二位の魔法士、レナート=ダール。彼の風魔法応用の気配察知はなかなか有用ですが、精神的に多少不安定なところがあり気配りが必要です。

 最後が補助と治療系魔法でサポートしてくれる無属性中級二位のアンヌ=ハウゲン。エリクとレナートより二つ下となりますが、そんな男二人よりよほどしっかりしていて、頼りになる女性です。

 歳のことを言いましたので、この際です。私が二十四歳で最年長。クルトが二十ニ歳。エリク、レナートが二十歳。アンヌが最年少十八歳となります。

 

「さて諸君、この村は残念ながら復興することなく廃村となります」

 

 私の言葉に皆の表情が引き締まります。

 

「その代わり、この地には監視砦を新たに設けることとなりました。しかも早急にです。まぁ、場所はもう少し先の岸壁寄りで、海峡が一望できる場所となる予定ですが」

 

 これはスヴェン隊長個人の強い意向であり、その動きは迅速です。

 

「十日後には仮設砦を建てるべく先遣部隊が到着するでしょう。私たちはそれまでに、この辺り一帯の安全確保。それと、ないとは思いますが村の廃屋への不法侵入者の警戒も行わなければいけません。火事場泥棒などもってのほかです」

 

 皆の表情がより一層真剣みを帯びてきました。ここからが更に肝心です。

 

「もう一つ。この村を襲ったワイバーン、もしくはファイアードレイク。それら亜竜種がまた戻ってくる可能性もないとはいえません。今回の任務は討伐ではありませんし、我らの戦力で、もし()()()()()()()()太刀打ちすることすら難しいでしょう。くれぐれも先走った行動はとらないようにお願いします」

 

 それを聞くや真剣な表情から一転し、とても怪しい表情を浮かべているバカの付く剣士が二人います。

 

「クルト、エリク。わかりましたか? 決して先走らないように。何かあればまず報告! 忘れないでくださいね」

 

「はいはい、わかってますよ、ヨアン副長。そんなにご心配されなくたっておれ、いや、私は言われたことは忠実に守る男だ、です! お任せください」

 

 クルトがさも心外であるように、大きな体に似合わず愛嬌のある顔を真面目に整えて、いや、整えきれていませんが……、言います。胡散臭さ過ぎて胃がしくしくしてきます。敬語も全くできていないですし。

 

「はいは、一度でよいです。よろしくお願いしますよクルトさん。エリクさんもいいですね?」

「……はい、副長」

 

 私の再度の確認に、エリクはぼそぼそと小さな声で答えます。大男なクルトに比べ小柄な体格、一見無害そのものです。ずっとその調子で大人しくしていてほしいものです。

 

 レナートとアンヌはまあ大丈夫そうですね。若干アンヌがクルトを睨みつけている気もしますが……、まぁ私の心の安寧のためにも見なかったことにしておきましょう。

 

「では各自、任務についてください。解散」

 

 私が簡潔にそう命じれば皆が持ち場へと散っていきます。外回りをクルトとエリク、村内をレナートとアンヌが見て回る手筈です。何事もなく十日間を過ごせればよいのですが。

 

 さあ、私も仮設砦の設営に向け、情報の精査を急がなければなりません。

 頑張りましょう。

 

***

 

「ヨアン副長! 見ていただきたいものがあります」

 

 雨風をしのげる程度には建物の体裁を保っていた村長宅を活動拠点とし、確認した情報を整理していたところ、村内を巡回していたアンヌが慌てた様子で報告に訪れました。手を引いて私を連れて行こうとする勢いでしたので取るものも取りあえず、付いていくこととしました。

 

 そこは地下室でした。瓦礫で塞がれ今まで確認出来ていなかったようです。アンヌ、お手柄ですね。

 ここ最近は使われていなかったようで、カビた匂い、そしてわずかに汚物臭が残っていてあまり良い印象を持ちようがありません。

 

「これを見てください」

 

 顔をしかめていたところ、アンヌが使い古された記録簿らしきものを渡してきました。手に取り確認します。

 

「な、なんという……」

 

 内容はこの村での儀式の記録でした。我々はそのような話、聞いたことはありません。

 いつから、どのような経緯(いきさつ)で始まったのかまではこの冊子では分かりませんが、ここに載っている一番古い記録で五十年前。当初は毎年、年を追うごとに間隔が伸び、近年では四年前に行われていたようです。

 

 想像ですが、儀式の(にえ)とする少女が年々少なくなっていったのかもしれません――。

 

「あの、それには書かれてないみたいなんですけど、たぶん今年の春くらいにその儀式、行われたみたいです」

「ほう、なぜそう言えるんです?」

「これです」

 

 アンヌが差し出したのは記録簿の半分ほどの大きさの小冊子。中を見てみればどうやらこの部屋での記録、いや個人の日記でしょうか。

 

「なるほど。雪解けとともに行われたとありますね。あとは食事の記録に……、これは懺悔(ざんげ)の言葉ですか。ふん、一応の罪悪感はあったのですね。おや、最後の贄となった少女の名がありますね……」

 

「か、書いてあるんですか!」

 

 少女の名という言葉にアンヌが大きく反応し、聞いてきます。

 

「ミーア。女児、当時十才。母親は産後の肥立ちが悪く死亡、男親は狩に出て戻らず。赤毛で、目は赤茶。年齢よりもかなり幼く見えるとありますね」

 

「ミーアちゃん……、ですか。なんてひどい……」

 

 滅びてしまった村の暗部。

 贄となり散っていった少女たち。

 そして最後の贄であろうミーアという幼い少女。

 

 

 なんともやるせない空気が漂う結果となってしまった地下室での出来事なのでした。

 




あれ、空気重っ

そんなに長続きしないですん、きっと!
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