スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
ごくごく控えめながら不快に思えるかもしれない表現ありますので注意
今わかる範囲での状況確認を終えたところで、私は自分自身……、スライム体の現状についても確認していきたいと思います。
ここ日本に強制転移させられたスライム体は、このミーアボディに浸透している分と、凶龍を倒す際に謎空間から大放出したとき、出し切れず残っていた分だけです。
残りは全部、向こうの世界。
湖に残してきた分とか、フィーラヴ村周囲の把握のため適当にばらまいた分とかがありますが、その量だってたかが知れていますしさすがに異世界のスライム体とは連携できません。
ということで、今現在すべてを足してもせいぜい1DKのアパートの部屋を埋めるくらいの量でしかありません。
ああ、大減量……喪失感がひどい。
凶龍の魔素を吸収した大部分のスライム体は、あの状況で虹色魔石を持たせられるわけもなく……、私と離れてしまったからには残念ながらいずれ死滅してしまうでしょう。
それ以外の虹色魔石を埋め込んであるスライム体については、何もなければ死滅せず半永久的に任せた仕事を続けてくれるはずですが。
それにしても女神のやつ。私にずっと浄化作業をさせなくて良かったのかしらん?
まぁ凶龍を滅ぼしたからには当分の間は大丈夫なのかもしれませんけど……。向こうに残ったスライム体で浄化できる範囲はせいぜい湖とアールヴ村周辺くらいのものです。
っていうか私がいまさら向こうの世界の心配をしてやる義理はないですけれど。
…………。
「でも……、アンヌのことは心配です」
…………。
そうそう。
変化と言えばこれもそうです。
「あー、あー、あいうえお。かきくけこ。いろはにほへとちりぬるを~」
ミーアの口で話すとき、全然ろれつが回らず苦労してたお喋りが普通にできるようになっているのです。向こうの言葉が不自由だったせいもあるとはいえ、アンヌの名前を
なんて喜んでばかりもいられませんから困ったものなのです。
どうやら世界を
もちろんスライム体全体としての連携はきっちりとれるのですが、頭機能を割り当てたスライム体の移動ができないというのはかなり大きな弱点となりうる、由々しき事態です。
転移前スライム体の時はここが頭って決まった部位はなかったのでどこを潰されたとしても痛くも痒くもなかったわけですが……、今は違います。
くっそぅ、これはもう女神の呪いとしか……。
とは言ってもこの日本で、何と戦うの?って話なのでこれは余計な心配なのかもしれません。
そもそも魔法だってありますし、現有スライム体だけでも、この世界では十分チートな能力だと言えるでしょう。
……何はともあれ、とりあえずこれからどうしたらいいんでしょう?
「うん、まずは身だしなみを整えましょう」
ただいまミーアボディは血まみれズタズタぼろ
ぷにょ袋を収めた背負い袋は死守して無事だったので中から着替えを出して着込むこととします。
いつ誰に見られるかわかりません。痴女にはなりたくないのでそこはきっちり整えます。
新品のかぼちゃパンツをはき、ドリスに選んでもらった淡い緑の可愛らしいワンピースを着ます。片足ないと着替えにくいので、翅を伸ばして、ふわふわしながら着替えます。全身汚れは全身スライムパックでキレイキレイしましょうね!
「うん、さっぱりしました」
やっぱ身だしなみは大切です。
一気に文明人になった気がします。
「さて心機一転、とりあえず、とりあえず……次はどうしよっか?」
***
とりあえずふよふよ低空飛行しながら、不用意に人に遭遇しないよう注意しつつ移動しています。
時折動物を見かけたら捉えてスライム体の
ところでここが日本であることは間違いないですが、今現在がいつであるのか不明です。うん、今何年何月とか一切不明です。その辺も早く確認したいです。
広い森とはいえ、ここは日本。しかも富士山の裾野であるわけで、適度に進めばあっという間に人の住むエリアへとたどり着きます。迷子になるなんて私に限ってはありえませんしね。それに高速道路に上がってしまえばそこから適当なトラックに潜り込んで移動してしまうって手もありますね。まぁ、まだ人が多くいるところに出るのは
半日ほどかけてゆっくり辺りを確認しながら進み、ようやく人里までたどり着きました。
過疎が進んでいるようですがそれでもそれなりの生活感があってちょっと安心している自分がいます。季節的には春をすぎてこれから梅雨の季節といったところで、苔むした道路のわきで
「ええっ、今、〇▲年の六月なんですか? マジですか!」
なんとか見つけた昔ながらの田舎の商店で壁時計を発見し、ようやく今がいつなのか確認できました。ついでにつけっぱなしのTVも見て簡単な情報収集もできました。もちろんスライムアイで!
まじ驚きです。
今って中年サラリーマンであった私がたぶん死んだ? と思われるその年なんですから!
私にとっては随分大昔も大昔。遠く過ぎ去った過去であるはずなのに。
夜寝てそのまま、起きたらスライムだったので死んだって認識は薄いとはいえ、覚えてる限り私が覚えてる最後の月です。
異世界と日本。
時間の流れとか違ったり?
それにしてもあまりに時間差激しいんじゃないでしょうか?
なにもかも女神のせいです。
そう思っておくしかありませんね。
でもそうなると俄然気になるのはサラリーマンである私の家。そしてもちろん私自身の元の体のこと!
今現在、日時的にはほぼその翌々日のはず。
「ちょっと怖いけど……、確認するしかない!」
***
まる一日空を飛んで私の家までたどり着きました。ちょっと場所確定に手間取り、思ったより時間かかっちゃいました。
東京の衛星都市に居を構えて……といえばそれらしく聞こえるけれど、住んでたのは中古平屋一戸建て物件。昔はもっと田舎に住んでたけど両親がそろって亡くなった時に住んでた家を売って、首都圏へ移り住んだわけなのです。衛星都市とはいえ一戸建てともなると中古でしか買えませんでした。
中に入ると、さっそくいやあな臭いが出迎えてくれました。
ということでまずやったことは部屋にこもった臭いを風魔法で処理することでした。
これはほんとひどかった。
部屋にこもった臭いはほぼ除去しましたが、原因はまだ残ってます。
ということで引き続き、いやあなおかたづけの時間は続きます。これどんなバツゲーム?
「はぁ、向こうでもさんざんグロな光景を見たし、自分自身もそういうことを散々やった記憶もあるけれど、まさか元自分の体を自分の手で
元自分の部屋でPCの電源を入れ、すっごく久しぶりにネットの世界に浸りながら、改めて今日一日の出来事を思い起こし気分を滅入らせてしまう私です。
とりあえず一日の宿を手に入れましたが問題は山積みです。
何しろこの世界、日本での私はもう死んでしまっていません。
今のこの家の環境もつかえる期間は限られてしまいます。会社も不審がることでしょう。何しろすでに三日無断欠勤!
スマホを見れば着信がすさまじいことになってますし。
「ま、使えるものは持ち出してここからはさっさと居なくなるしかないですね。死体も処理してしまったし、謎の失踪事件とかになるしかないですね。ああ、不憫な元サラリーマンの私。ご冥福をお祈りいたします……」
一晩を元自分の自宅で過ごした翌日。
長居は無用ですのでさっさと引き払います。
引き払うに際し持ち出したのはクレジットカードやキャッシュカード、お財布にスマホ、それに愛用していた腕時計。色々機能がついたごついやつです。
それを斜め掛けのボディバッグに詰め込んで未練たらたら、家を出ました。スマホはSIMだけ抜いておきました。通信はフリーwifiだけになるけど充電は適当にできるだろうし、アプリとかもあるしね、一応持っていきましょう。
キャッシュカードから貯金を下ろし、クレジットカードからもキャッシングで限度いっぱいまで引き出して、カードはそのままポイしました。
後のことは知りません。
死んだ私からお金が戻ることはないでしょう。カード会社さんすみません。
当面の資金は三百万円と少々。ま、お金使うことはあまりないでしょうけれど、ないよりはあった方がいいのは間違いないです。
それにしてもです。
お金をおろすため少し街を歩いただけで、周りからの視線が痛すぎだったのですが。
まぁ淡い紫の長い髪がまず目立つのと、何より小さい子供の姿であるミーアが片足義足で、しかも民族衣装のような古びたワンピースでとことこコツコツ歩いているわけで、なんというか悪目立ちに近い目立ち方をしてしまいました。
さすがに現代日本ということで、小さい子供に変に声をかけてくるような人はいなかったのですが、心配そうに見てくる大人の人もそれなりにいましたので、やっぱ幼い女の子一人で街中を歩き回るのはなるべく控えた方がよさそうではあります。
「うーん、ミーボディの幼さと可愛らしさが
この時ばかりはそう思わずにはいられないのでありました。
あ、ちなみに義足は森の木を切り出して棒状にしたものを脚の付け根にスライム体で保持してある感じです。ぷにょなスライム体で足の形を維持して歩くようにするのは、ふよってなって歩きにくいので、手っ取り早く義足にしておきました。
人目がないところでは飛べばいいのでそんな感じで凌いでいたのでした、まる。
生きづらい現代日本!