スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
「ミーアちゃん、今日は健康診断とか精密検査をしますからね。出来れば大人しく私たちの言うことを聞いて、指示に従ってくれるとうれしいかな?」
女性の警察官が私の前にしゃがみ、目を合わせてそう言ってきました。
この人の名前は
でもアンヌのが百倍可愛いですけどね。
けれど見た目はともかく刑事さんらしいし、それなりの腕っぷしはあるのかもしれないです。
こんなことになったすべての原因は、かつ丼を食べたあと調査との名目で、お約束の事情聴取っぽいものを受けたことから始まるわけなのです――――。
「あなたのお名前と年齢を教えてくれるかな?」
「ミーア、九歳!」
はなはだ遺憾ではありますが冒険者ギルドで言われた年齢で答えました。本当の年齢は私も覚えてないし、信じてもらえるわけもないですからね。
調査の席についてるのは話しかけてくる女性警察官と、かつ丼をおごってくれたリーダーっぽいおっさん。あと記録を取ってるちょっとチャラそうな兄ちゃんです。私が女の子の姿だからかお姉さんを聞き役に持ってくるとか警察もあざといですね。
「ミーアちゃんかぁ。お父さんやお母さんはどうしたのかな? お家はどこかわかる?」
また面倒くさいこと聞いてきました。というか私にとっては何を聞かれても面倒でしかないですね。
どうしたものでしょうか?
逃げてしまえば手っ取り早いですが、それは問題を先送りにするだけで解決にはなりませんし……。
ここはある程度正直に答えて、今後の身の振り方は警察さんに放り投げてしまいましょう!
混乱するでしょうが、せいぜい良いご対応をいただきたくよろしくお願いします!
あはは。
はぁ……。
最悪、どうしようもなくなったら逃げるということでそこのところよろしく!
「パパもママもいない。お家もどこかわかんない」
「そ、そっかぁ、ごめんね、嫌なこと聞いちゃって。ところでミーアちゃん。
おお、いきなりぶち込んできました!
っていうかもうそんなことまでバレてるんですね。まぁ、特に隠すことなく堂々とやっていたし、そりゃあバレもしますか。
「名前は知らないけど……なんか一緒にいたのっ。お金はおじちゃんに使っていいって言われたから。もう必要ないからって」
めちゃくちゃ苦しいです。でもこれ以上言いようがないから仕方ないです。そもそも自分のことなんだし、自分のお金だし、だったら使っていいに決まってるよね!
まぁクレジットカードの分は、ごめんなさい。返す当てはない!
私のこの言葉を聞いてお姉さんの表情がちょっと硬くなった。
「そうなんだね。それで、そのおじちゃんはその後どうしたのかわかる? 実はそのおじちゃん……、こほん、香住さんがお勤めしている会社からその人のことを調べてほしいって連絡をもらってるんだよ?」
核心に迫ってきました。
これはもう私の家の状態も知ってる感じです。
っていうか会社から連絡行ったわけだね。無断欠勤だし、スマホ着信も無視で連絡取れないし、やっぱそうしちゃいますよね。
「ええっと、おじちゃんは寝たまま動かなくなったよ。じっとして動かないし、なんか変な臭いしだしたから私が燃やしてあげたっ!」
ミーアの可愛い声で、カミングアウトしてあげました。
さてどう出るでしょう?
けど死体燃やしちゃったのは失敗でしたね。死体がないっていうのは現代日本じゃ大問題。誤魔化すことはとても難しいね。
私のスライム細胞製のオツムでは言い訳思いつきません。
「ええっ! ちょっと……、燃やしたってなに?どういうこと? でも火事にもなってないし、そんな痕跡どこにもなかったよね? えええっ?」
混乱してるしてる。
ここはもう一発畳みかけましょう。
「こうだよ~」
私は手のひらを上にしてお姉さんに差し出し、「小さなほのお、ファイア」と、わかりやすく唱えて見せた。もちろん今更そんな詠唱必要でもなんでもない訳だけど、わかりやすいでしょ?
『ぼふっ』
乾いて大きく膨らんだお布団に飛び込んだような音とともに、手のひら上に生まれた白くまぶしい光。それは瞬く間に『しゅぼーっ』という音とともに勢いよく燃え上がる炎となりました。
かなり高温である炎柱のせいで一気に部屋の温度が上がってきます。
あっ、精霊たちがその周りを乱舞しています。きっと魔力の発露に喜んでるのです。
君たちどこにいたの?
この子たち、人に見えてるのかな?
お姉さんにリーダーっぽいおっさん、それにチャラいお兄さん、三人が三人とも驚いて立ち上がり、そろって座っていたパイプ椅子を倒しています。
ちょっとおもしろい。
「な、な、な、なに、何なのそれ~っ!」
お姉さんの驚きの声を皮切りに、その場は騒然となり、部屋の外からも異常を感じた数人がなだれ込んできました。皆が一様に私の手もとから吹き上がる炎を見て、驚きの表情を浮かべています。
「ミーアちゃん、もういい。もういいからそれ消してっ! け、消せるよねっ? このままじゃ火事になっちゃうから~」
お姉さんが上ずった、とても焦った声で私にそう叫んできました。
うんうん、十分理解してもらったようだし、私の
「茅野、森久保っ、確保して即刻身体検査っ! おい、関係者以外は外に出ろっ! ああっ、ここで見たことは口外禁止だ。もし外で話そうものならそれ相応の処分を下す。追って報告は必ず行うから
リーダーおっさんから矢継ぎ早に出る指示に、部屋にいた人々が戸惑いながらもしたがって動いています。うーん、さすが警察。統制取れてます。
「は、はいっ」
お姉さんも上ずった声ながら返事して、慌ててこちら側にまわってきて私の手を取ります。その流れで腕から胸、胸から腰へ、体中をまさぐる様な動きをされ、とてもムズムズこそばゆいです。
チャラ男のお兄さんは私を後ろから羽交い絞めにして来てちょっとムッとしましたが、なにせ心は大人の私ですから、ここは我慢我慢です。
どうやら私が何か隠し持ってないか確認しているみたいです。
でも残念。私の炎に種も仕掛けもあるはずないのです。
「ふわぁ」
あうぅ、そ、そんなとこまで。
お姉さん、そこはだめ、だめでしゅっ!
完全体ミーアボディになってからのこの感覚。まだちょっと慣れないです。
痛いとか
「はうぅ」
まさぐりが続くお姉さんの手。
さわさわする動きに思わず、ビクリと体が反応してしまいます。
「ミーアちゃん、ちょっと我慢してね」
ううっ。
こ、こんな感覚、あっても百害あって一利無しではないでしょうかっ?
切り離しておいた方がいいような気もしますが、まぁ、久しぶりの人らしい感覚ですし……。問題が出ない限りそのままで行きたい……、
「はにゃん」
……と、思います。
「警部、どこにも不審なものを隠し持ってる様子はありません。もう、私……、何が何だかわかりません」
お姉さんがちょっと冷静になった声で、でも戸惑い交じりの報告をしました。
何も身に着けてなくてすまんですね。
「そう、か。そりゃそうだろうな。この部屋に入る前にも、署に連れて来た時も確認してるんだしな……。ご苦労だった」
リーダーのおっさんは警部さんのようです。
ちょっと偉い人だね。
疲れがにじみ出てるね。
大変だね。
「森久保、もう離してやっていいぞ。おい、嬢ちゃん、さっきのあれ、同じようにまた出来るのか? いや、今やれとは言っていないっ、答えだけくれ」
まじめな顔をして聞いてきたおっさん。やらなくていいの? 答えるだけでいいんですか、そうですか。
「出来る! もっと大きいのも出来る。動かなくなって臭くなってたおじちゃんもすぐ灰に出来たよ!」
ついでに情報も提供。
「なっ! ……そ、そうか。だがお嬢ちゃん、あの場に残骸というか、何かしらの残滓というか、何も残ってなかったんだが、それはどうしたんだ?」
このおっさん、なかなか我慢強いです。よく気持ちを抑えてます。
でもふ~む、ちょっときれいに片づけすぎたかしらん。
「えっと、ここにある!」
続いての情報っていうか現物提示。
私はぷにょ袋にしまってあった、元私の遺灰が収めてある大きめのタッパーを取り出して見せました。
ああ元私の体、タッパーになんて収めてすまないです。入れ物がそれしかなかったんです、許してね。
「はっ?」
渋い顔した白髪交じりのリーダーおっさんの、呆気にとられた表情が面白くてうける~。
「どこからそれを出したんだ!」 と、それからまた上を下への大騒ぎになりました。
ちなみにぷにょ袋は背負い袋から出し、袋の代わりとして自身の体、ミーアボディに直接謎空間とのつなぎ口を設け、虹色魔石はそこへと入れ直してあります。ちょっと仕分けが大変そうですが、そこはタグ魔石の魔力違いで判断するしかないです。
ああ、すぐ忘れて探しまくる未来が見えます……。
当然他人がそれを確認できるすべはありません。
初めからそうしておけよと、どこからか突っ込みが来そうですが……、私だって試行錯誤だったんです、仕方ないじゃないですか!
ともかく。
今はそんなこと言ってられない状況ですし、そういうこととしたのでしたのです、はい。
――――などということがあり、大騒ぎのち身体検査と精密検査をすることと相成りました。
その際、左足が普通についてることについてもとても突っ込まれました。いやもう、ほんと理不尽な私の体がお騒がせしましてすみません。
いずれにしても、身体検査はやることになったのでしょうけどね。
で、ですね。
結局私の扱いはどうなってしまうのでしょうか?
色々やらかした自信はあります。
どんなことになっていくのか今から行う検査の結果も含め、不安な気持ちも少しはある私なのでした。
このパターン、ちょっと前もやったなぁ