スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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面倒くさいね


現代日本は色々大変

 幼い女の子の手のひらから派手な炎の柱が吹き上がっていた。

 

 その炎は天井に届こうかという勢いで、目の前でそれを見ていた茅野がどうすればいいのかわからずアタフタし、気が動転しているのがまるわかりな様子を見せている。

 それは俺だって同じである。部屋の外からマジックミラー越しに中を(うかが)っていた部下たちも慌てて部屋に飛び込んできた。

 どうやってそんな現象を起こしたのか想像もつかないが、とりあえず茅野と森久保に女児、確かミーアと名乗ったのだったな……、その子の身体検査をさせるもその小さな体には残念ながら種も仕掛けもまったくなかった。

 

 在ってほしかった。

 

 だがそれ以前にも身体検査をしていたのだから、そりゃあ無いのも当然なんだがな。

 

 とてつもない問題を目の前にしつつも、聴取はとりあえず進めざるをえない。しかしやはりというか、ことはそれだけで収まらなかった。

 

 女児ミーアは、先ほどの炎を使ってあろうことか香住(かすみ)氏の遺体を焼いたとか言い出し、しかも、幼い女の子が手に持つにはいささか大きい、本物かどうかはともかく遺灰が入っているというタッパーをどこからか取り出し、机の上に置いて見せた。

 

「はっ?」

 

 一体それどこから出したんだっ!

 俺はつい間の抜けた声を出してしまい、当然周囲もまたもや騒然とした雰囲気になってしまった。

 

 しかも更におかしなことに茅野が気付いた。

 

 聞き込み調査や防犯カメラから得た情報では、ミーアの左足は簡素な木製の義足となっていたはずだった。幼子がそんな風采(ふうさい)をしていることに思うところがない訳ではないが、それを気取られないほど普通に歩いていたのでバランス感覚がよいのだろうか、などと感心したものだったが……。

 

 今のミーアは五体満足の普通の体をしているように見える。

 

 

 どういうことなんだ!

 

 

 次々出てくる異常としか言いようのない事実に部下たちが混乱の極致となったことは、もちろん俺を含め、致し方ないことだと思う。

 それ以前にネットカフェで、三日もの間その存在に気付かれなかったということからして異常なのである。

 

 俺はこのことをどう上に報告すればいいんだよ!

 頭がおかしくなったと、正気を疑われるのは間違いないぞ。

 

 そんなことを思いつつも、異常の塊でしかない女児について確認できることはやっておかなければならない。さしあたっては身体検査と精密検査は必須だ。

 

 茅野と森久保にその任を与え、俺はいったん自分の席に落ち着き、頭を巡らせる。

 

 身元、国籍も全くの不明。本人曰く名前はミーア、女児で年齢は九歳らしいが、小学校の低学年にしか見えない小ささで、そんなこともこの幼子の扱いに困る原因の一つである。

 

 未成年の子供に今回の事案に対する刑事責任を問うことは当然できず、色々やらかしているのは数々の証拠から明らかではあるが逮捕はできない。保護者の存在も今のところ確認できず、唯一の手掛かりであったはずの香住氏は灰となり果てている。いや、まだあの遺灰が香住氏のものと断定できたわけではないのでDNA鑑定もしなければいけないが。

 

 とりあえず勾留することにはなるが、今後どうするかも頭の痛いところだ。

 

 いささか倫理観もおかしいようにも見える、年端もいかぬ幼子。

 一体どう育てられればあんな風に育つのか?

 なぜ香住氏の家に居た?

 何かしらのつながりがあるのか?

 

 香住氏には子供がいた記録どころか、そもそも結婚すらしていない。親類縁者もおらず、両親や祖父母ももう鬼籍入りしている。

 

 ミーアの存在はまるでポンと現れたかのように宙に浮いている。その存在について辿るためのきっかけすらつかめない。

 

「まったく、なんで俺の管轄でこんな訳の分からない事件が起こるものかな……」

 

 俺はひっそりと愚痴をつぶやき、とりあえず女児ミーアの検査の報告を待つしかないと、喫煙という名の現実逃避をするため、ひとまずその場からはなれ、喫煙室へと向かうのだった。

 

 

***

 

 

「はい、身長は百二十七センチ。体重は……、二十五キロね。九歳としてはちょっと小柄だし血色もあまりよくないし、脈拍も血圧も子供にしても低めだけど、まぁ問題ないレベルでしょう」

 

 あ、あれ?

 しょ、しょんなばかな!

 

 私、百三十センチ越えてると思っていたのですけれど!

 くうう、もしやミーアの体を色々整える際に細胞の取り合いで身長がらみのものを使い込んでしまったかしらん?

 

 さ、再調整の時間を要求する~!

 

 なんて思う間もなく、次々検査させられる。

 視力、聴力、握力とかまで測られた。

 

 ふふ、おかしな数値にならないよう頑張った私を褒めていいのよ?

 これ以上騒がれるのは御免ですからね。

 

 胸や背中にポンポン聴診器を当てられつつ問診を受け、更には冷たい板に張り付かされ息吸って止めて~をされ、変なもの飲まされた上に、ぐぉんぐぉんと小うるさい筒の中に放り込まれ――、

 

 ようやく私の検査は無事?終了した。全部でニ時間くらいはかかったね。

 

 検査服に着替えさせられた際、私のかぼちゃパンツを見た看護師さんがちょっと驚いた顔をしてましたが、そんなのほっといてほしい。そりゃ現代おパンツと比べれば野暮ったくてダサいものかもしれませんけど!ドリスが選んでくれたいいものなのですからね!

 

 ぷんぷん。

 

 まあ、それはいいです。

 

 さて結果はどうなることやらですが、けれど、なんですねぇ。

 無事に終わる気がしないです、はい。

 

 

 待つことさらに小一時間。

 その間ずっと横に茅野さんがついていてくれました。

 

 検査施設のある病院は隣接しているとはいえ、重要参考人たる私が移動するのですからそれは間違いなく監視者なのですけど、それでもやっぱ安心できました。ついでに森久保とか言うチャラい兄ちゃんも一緒でしたが、てめえとは話すことはない、絶対にだ。

 

 

 そしてやはり、騒がれることとなったのでした!

 

 

***

 

 

 CTやMRIなどで得られた画像をPC画面で確認出来るということで、俺は担当医師の許可をもらい一緒に得られた画像を見せてもらっている。本来なら報告書を待つべきなんだろうが今は時間が惜しい。

 

 情報を早急に得たいからな。

 

 とは言っても正直詳しいことはわからないため、医師から補足説明を受けながらなわけだがね。

 

「基本的に異常は見つからなかったのですが、ただ一つ。どう見ても異常……というのも変かもしれませんが、通常とは異なる部位を見つけました!」

 

 説明してくれる医師が若干興奮気味に俺に説明してくれている。

 

「何があったのですか?」

 

 俺の問いに医師が鼻息荒く答えてくれた。

 

「はい、ここです! 見てください。心臓の後ろ、背骨との間に若干縦長の見慣れない器官があることがわかりますか!」

 

 画像を指さしながら俺に説明してくれる医師。その興奮度合いにはちょっと引く。だが確かにそこには医師ではない俺でもわかる見慣れぬ器官がその存在を主張していた。

 見た目は小さな茄子(なす)。そう野菜の『なす』だ。あれがヘタ部分を下にして配置されているといえばわかるだろうか。膨らんだ部分が心臓と嵌めあうような位置関係を示していて、感覚的な大きさはまだ育ち切れていないナスと言った感じでかなり小ぶりに思える。

 画像だからはっきりとは言えないが、心臓と比較した感じからしても当たらずしも遠からずと言ったところだろう。

 

「これは一体何なのでしょう? 人体にこのような器官があるなんてことは、医師となってまだ長いとは言えないキャリアではありますが、寡聞(かぶん)にして知らないとしか言えません!」

 

 唾を飛ばさないでほしいものだが……。俺も人体の構造は職業柄把握もしているが、確かにこんな器官、聞いたことないな。いや、これぐらいのこと、学生でもわかるレベルだと思うが。

 

「それはそれとして、他には問題はありませんでしたか? 例えば、手のひらから腕にかけて何かしら変なものがあったりとか、左足にも治療等の痕跡があったりとか……ありませんでしたか?」

 

 俺はつい先ほどの手から炎の件について何か手掛かりでもないかと聞いてみた。

 

「いえ、これと言って変わったものは……。きわめて正常で文句のつけようのない状態でしたね。とは言っても四肢については脳や内臓ほど精査したわけではないですけどね。ご希望とあらば再度……」

 

「いや、問題ないのであればいいのです。ありがとうございます」

 

 この後も医師から色々説明を受けたがはっきり言って俺にはちんぷんかんぷん。適度に話を合わせ、礼を言ってその場を後にした。詳しいことは報告書として出してもらうこととなる。

 

 だがこの検査から解るのは、今以上に問題が大きく大変になるということで――、俺は頭と、おまけに胃まで痛くなってきて、しかもその対処療法もないときたもんだ。

 

 俺は天井を見上げ、大きなため息をつくくらいでしかその気持ちのやり場を逃がすすべを持たなかった。

 

 

***

 

 

 

 検査を終え、とりあえずはと会議室っぽい誰もいない落ち着く一室に入れられた私。

 

 ようやく一息ついたと自分なりには思ったわけですが、そんな私を置き去りにし、周りは相変わらずの騒々しさのようでした。

 

「ミーアちゃんはまだ小さいからわからないかもだけど。色々問題を起こしちゃったからね、私にもまだわからないけど、逮捕はないけど何はともあれ家庭裁判所への送致はあると思う。それを踏まえて保護観察、もしくは更生施設へ送られるって流れだと思うんだけど、さすがに今回の件は特殊すぎてどうなっちゃうか全然予測できないよ~」

 

 なんだか私の面倒を見る係になってしまったような茅野さんが、そんな話を私にしてくれた。ちょっと話し方が気安くなってきたのはお互いがなじんできたからでしょうか。

 私が引き起こした騒動はそうたやすく収まるものではなかったみたいで、お疲れ気味です。

 

 とりあえず面倒かけてるこの人には軽くあやまっておきましょう。

 

「うん、わかった。そのぉ、お姉ちゃん、迷惑かけてごめんなさい」

 

「あうっ」

 

 私の上目使いに放ったこの言葉に茅野さんはしばらく動きを止めちゃったのだった。

 

 

 

 

 はぁ、この先どうしましょうか?

 やっぱ現代日本はと~~っても面倒くさいです。

 

 ほんとなら、今、すぐ、帰りたい!

 アンヌの居るあの世界へ……。

 

 

 謎空間を使ったぷにょ転移。

 

 落ち着いて考えてみたとき、私にはこの切り札がある!

 そう気付いたのです。

 

 やってみなければわからないけど、アンヌにはお守りと称して虹色魔石入りぷにょ袋を渡してありますし、湖や他にも幾つか起点がつくってあります。

 

 それをたどればもしかして……と、気づいた。

 

 のだけれど!

 そう思っていたのに。

 

 

 魔力(ぷにょ)不足でそれを実現するに至らないだなんて!

 

 

 どうしちゃってくれましょうかね、この事態っ。

 

 

 きぃ~~~!

 

 





ひすミーア
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