スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
「魔力不足~~!」
ぷにょ転移にこんな落とし穴があったなんて……。
一人になった私はこれ幸いと色々考えを巡らせます。
魔力不足などという今だかつて味わったことのなかった事態に私はとても困惑しています。
今まで住んでいたあのクソ女神の世界であれば、有り余り
日本に強制的に戻されてしまった私は、魔力を得る手段であるスライム体のほとんどと切り離されてしまいました。凶龍と戦った際、謎空間から大部分のスライム体を出してしまったのが悔やまれます。
でも、あの時はそうしなければあの凶龍を抑えることは出来ませんでしたし……、今更言っても
そうやってモンモンとしてる私の頭にツンツンとつついてくる三つの輝く物体。
魔力不足で悩んでる私から容赦なく魔力を吸いとってくれます。
まったく、この子たちときたら!
まぁ大した量を取られるわけではないので影響は少ないですが……。
そういえばこの子たち、ずっと私の周りをこうやってウロチョロしてましたが誰にも見られてる様子がありません。
やっぱり人には認識出来ないのかしらん?
まぁ、認識されないなら好都合です。自由気ままなこの子たちに隠れてろって言っても通じるものでもありませんし。そもそも碌に意志の疎通もできませんし。
ともあれ、この子たちが私から魔力を得るしかないということからも、この世界でいかに魔力を得ることが難しいかがわかります。
でもアンヌのところに戻るためにはどうしても魔力が必要です。
それも大量に!
そのためには何を差し置いてもぷにょ増量を果たさねばなりません!
ここで生きていくだけなら、何も無理にかき集めなくてもご飯を食べてるだけでも十分魔力は維持できますが……、それではダメなのです。
ミーアボディだけでは得られる魔力はたかが知れています。謎空間のスライム体もアパートの一部屋分程度でしかありません。
「ああ、どうすれば日本で大量の魔力を得られるようになるんですか~!」
そう一人でわめきながらも今現在の自分の魔力を確認してみます。
現状のスライム体での満タンを百とすると、日本についたころはかなり少なく二十五パーセントといったところでした。
ここに来るまでは野生の動物からエネルギーを得たり、普通に食事するなどして回復に努めてましたけれど、逆に体の修復とか……それなり以上に魔力を消費していますので結局のところ六十パーセントに満たない程度の魔力量で推移している感じでした。
なかなか厳しいです。
地球の生き物は魔器官もってないからとっても効率が悪いのです。
直接魔力が得られないので、自分の魔器官に得られたエネルギーを取り入れ、魔力を生成するしかないのです。二度手間で、しかも変換効率は最悪です。
ああ、この世界にも魔素があれば……。
っと、脱線しました。
で、今現在の魔力量は……、ん?
んんっ?
うっそ。
「増えてるし!」
え、なんで?
ただいまの魔力量、なんと九十パーセントを若干超えるくらいにまでなっています!
あくまで現状のスライム体総量に対してのパーセンテージなので、それで今すぐどうこう出来るわけではないですが……、それにしてもどうして急激に増えましたか?
ここまでの行動でそんな急激に増えるようなことって?
かつ丼?
いや、それはないか。ないよね?
う~ん。
なんだろなんだろ?
それがわかれば魔力対策の……、
『コンコンコン』
「みゃっ!」
び、びっくりした。思わず変声だしてしまった、はずい。
ノックですね。
まずい、考えに集中しすぎて気配の感知とか色々
「ミーアちゃん、
疲れがにじみ出てる感じの茅野さんが手荷物片手に入ってきました。
「長い時間放っておいてごめんね、色々もめちゃっててね。でね、とりあえずお着替え用意したから着替えようね~」
どうやら手荷物は衣類だったようです。袋にウニクロのマークも入ってるし、わざわざ買ってきてくれたのでしょうか?
「ミーアちゃんのワンピース、ちょっと変わってるねぇ……、どこかの民族衣装みたいなデザインでとても古風な感じ。あ、でも仕立ては丁寧だよねー。はい、バンザーイしてね」
そういいながら、私を部屋にあった長椅子の上に立たせ、有無を言わさず脱がしにかかる茅野さん。
ま、着替えさせてくれるというなら特に抵抗する理由もないです。
「ミーアちゃん、お風呂とか、その、入ってないよね? それにしては、なんだか……、えっと、臭ったりしないね。ううん、それどころか、やっぱりとてもいい匂い……」
長椅子の上でパンイチになった私の体や髪に鼻をよせ、スンスンしだす茅野さん。失礼ね。大人だったら怒るとこだよ、っていうか匂いフェチなの?
「あ、ご、ごめん。つい、いい匂いだったものだから! 前から気になっててつい。そ、それにしてもなんだかすっごい下着履いてるね。でもね、ワンピースもそうだけど随分くたびれてきてるし……、所々ほつれたり破れたりしてるし、この際、良ければ処分して……」
「いやっ!」
私は茅野さんの言葉にすかさず反応し、スライム体を瞬時に伸ばして彼女の手からドリスの買ってくれたワンピースを取り戻し、速攻でぷにょ収納へと隠した。ついでにかぼちゃパンツもすっぱり脱いで収納行きにした。
処分なんて絶対にさせない!
「え、え、ええっ?」
私のその行為に驚きを隠せない茅野さん。あなたに悪気はないのかもしれませんが、私にも譲れないものはあるのです!
「ワ、ワンピース、それに履いてたかぼちゃのパンツ、消え……、どこへいっちゃったの? な、なんか、透明な細長いのがみょ~んとしてなかった? えっ、ええっ?」
まっぱの私を前に混乱状態が続く茅野さん。
私はいつまでまっぱでいればいいのでしょう?
「おい茅野っ、もう着替えは済んだのか? 今後の予定が決まったぞ。終わったならミーア君と一緒に出てきてくれ」
ドアを叩く音とともに、外からリーダーおっさんの声が聞こえてきました。
「はっ」
その声に我に返ったのか、茅野さんが私の方をじっと見つめてくる。そんなに見つめられるとさすがにちょ~っとだけ恥ずかしい、気がする。
「うううぅ、全く納得できないし、と~っても釈然としないんだけど、時間がないっ。ミーアちゃん、また後でさっきまでの……色々不思議な現象について、絶・対・説明してもらいますからね!」
そう言いながらテキパキとお着換え作業に集中しだした茅野さん。
案外根性座ってると思います。
イチゴ模様があしらわれたパンツと、おそろい模様のキャミソール……だっけ?を装着させられ、くるぶしちょい上までの可愛らしい白いソックスも履かされた。
仕上げに無地ながらも淡いピンクに染まったノースリーブのワンピースを着せられて完了みたいです。
袖にも膝上高の裾にもひらひらフリルが付いた、いかにも女の子女の子した可愛らしいデザインで、ちょっと元男の心を持つ私に微妙にダメージが入りました。
「うん、とってもかわいい! 髪もちゃんとセットしてあげたいけど、今は時間もないし櫛を入れるだけで勘弁してね」
いえいえもう充分です。
アンヌといいドリスといい、なんで女性はこうも髪をいじりたがるのか。元おじさんにはちょっとその心根を理解することは難しいようです。
「あとは靴、だけど……」
茅野さんの目線が立たされてる長椅子の下に脱ぎ捨ててある編み上げブーツへと向かう。私はすかさずそれも神速で収納した。
目を丸くし、口をパクパクする茅野さんだったけど、もうなにも言ってこなかった。
ふふん、慣れは全てを解決します。
代わりに用意された靴は普通のスニーカー。青紫色をしたNのマークが目立つそれは、子供サイズなのでちょっと寸足らず感があり、あまりスタイリッシュではないけど、さっきまでのゴテゴテ革ブーツよりとっても履き心地が良いです。
スライム体の完全な一部となったミーアボディにおいて、履き心地は結構重要な要素。素直にありがたいと思います。
もちろんすべての感覚は当然カットも出来ますが、普通に暮らす分には感覚はあった方がよいのです、うん。
ということで無事お着換え終了した私は、茅野さんと一緒に部屋を出ていくのでした。
***
外には廊下の長椅子に座ったリーダーおっさんが、ちょっとイライラした様子でスマホをポチポチしながら待っていました。
「随分時間がかかった、な……。ごほん。む、その、なんだ。……よく似合ってるじゃないか。茅野君、対応ご苦労だった」
出て早々文句を言いかけたリーダーおっさんはその言葉を飲み込み、ねぎらいの言葉をかけてる。
ふふん、私の可愛さは怒りすら鎮めてしまうようです。
可愛いは正義!
気をよくした茅野さんが何気に頭を撫でてきたので、色々あって下がってた私の機嫌も登り調子です。
「では今後の説明をしたいのでもう一度取り調べ室へ頼む。今回はかなり異例な対応となる。茅野君にもこの後の対応については協力してもらうことが多くなると思う。では行こうか」
うん、なんか私のこれからの扱いが決まったっぽいね。
日本の官僚機構のくせに意外と対応早いな。
さてどうなることやら?
従えることなら従うけど、そうでないなら……、
好きにさせてもらいますね!
色々どうなる~?