スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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研究所の胡散臭い主任さん

「お誕生日おめでと~!」

「おめっとー」

 

 そんな声とともに朝起きて部屋から出た私を唐突に迎えてくれたのは、茅野(かやの)さんと森久保(もりくぼ)の刑事部コンビでした。なんでチャラ兄森久保がここに居るのかってことはともかく。

 

「あ、ありがと……」

 

 私、不覚にも目から汁が……。

 

 うれしい。

 

 スライム体で長きを生き、今のミーアの体になるに至るまでのうん百年。さらに言えば男時代すら含めても、今の今まで誕生日を祝ってもらったことなど一切記憶にありません。男時代の幼少期にもしかしてあったのかも知れませんが覚えてないですし。

 

「あはっ、びっくりした? 驚かそうと思って黙ってたんだよ。こいつも居てびっくりしただろうけど、ほら、せっかくのお祝いなんだし人が多い方が楽しいでしょ~、(にぎ)やかし要員だね」

 

「ひっでえ言いぐさ。茅野はもうちょっとお(しと)やかにならないと行き遅れ確定だな」

 

「あなたにそんなこと言われる筋合いありませんー。ちゃんと人を見て行動しています~! あ、あなたこそどうなの? 特定の付き合ってる子とか……、いないわけ?」

 

「居るわきゃねえだろ、そんなの。あの職場でそんな暇あるかよ。つーか、そんな話、今はいいだろ」

 

「言い出したのあなたじゃない~、って、はっ」

 

 バツの悪そうな顔をして私を見てくる二人。

 

 うん。なんですかね、仲いいね。

 

 私の感動を返して。

 爆発しろ!

 

 

 ともかく、朝からそんなサプライズっぽい出来事があり、なんのかの言っても上機嫌な私です。

 ケーキ食べたし、プレゼントももらいましたしね。

 

 

 はい、改めまして、誕生日を迎えたミーア()()です!

 保護観察処分となって早三週間が経ちました。

 

 今日は、七月七日。七夕(たなばた)でもあります。

 冒険者ギルドのエリーネさんに便宜上決められたお誕生日を迎えたのです。

 

 わー、パチパチパチ!

 

 異世界と日本で年月が一致してるの? とか、連続性があるのか? とかこの際どうでもいいと思います。これは私の気持ちの問題なのであるからして。

 

 

 この三週間で私を取り巻く環境に進展があったかと言えば、残念ながらほとんど変わり映えしないとしか言えません。

 

 私の身元は変わらず不明のままです。

 

 見た目はどう見ても日本人には見えない私は、北欧系の難民をまず疑わられたようですが現状該当者は見つからず――。

 

 まぁ当然ですが。

 

 香住邸(元私の家)に至るまでの足取りも全くつかめず――。

 

 それも当然。異世界から女神のせいでポンと現れたわけですからね。

 さすがに異世界云々なんて言えるわけないので、私の存在そのもののからして証明出来るものがない、というのがとても厄介です。

 

 更に極めつけ、私が見せた不思議能力たち。

 手から火柱~!

 何もないところからものを出す。

 三日間に渡るネットカフェ不法滞在がバレなかった理由。

 

 などなど。

 どれもこれも不明なままです。

 

 魔法なんて惜しげもなく使いまくって飽きるほどみせたはずなんですけれど。

 見せろと言われれば何度でも!

 

 手から火を出したり水を出したり、更には風を起こしたり。(もちろん省エネモードで魔力は節約)

 謎空間から色々小物を出したり、逆に適当なものをしまってみたり。

 

 何か仕掛けがあるんじゃないかと多くの人から疑われ、私の見た目がどうしようもなく幼女ということもあり、見るからに胡散臭そうな目で見られたりもしました。

 散々サービスしてあげたにも関わらず、それでもやっぱり何か仕掛けがあるんだろうと真っ裸にされた上で魔法を使わされたことすらありました。(もちろん周りは女性だけでしたけれど)

 

 そこまでしたにも拘わらず今に至るまで、まだまだ信じてもらうことは出来ていません。

 お堅い。お堅すぎです!

 ほんと日本のお役所、官僚様を納得させることなんて一生かかっても出来ないんじゃないかと思う、今日この頃です。

 

 で、誕生日である今日もそんな話の一環でどこかにあるというなんとか研究所に連れていかれるそうです。

 検査のときにとられた血液からDNA鑑定とかまでされてたようで、今日行くのはその鑑定をしたところみたいです。

 

 鑑定結果は聞かされてませんけど、ぶっちゃけ不安しかないです。

 ミーアの体はスライム体で細胞レベルで再現し、構成しているわけですが、DNAとかどうなってるんでしょう?

 

  そもそも異世界人であるミーアと日本人、いや、ここは地球人というべきでしょうか? で、世界自体が違うわけで、見た目はともかく中身や細胞とかってどうなの?

 

 まじDNA鑑定がどんなことになってるのか、不安でしかない。

 

 

***

 

 

「生命情報科学技術研究所へようこそ、お嬢さん。私はここで主任研究員をしてる班目周夫(まだらめまるお)といいます。よろしくね」

 

 テーブルとイスしかない無機質な部屋で笑顔で出迎えてくれたのは、九一分けの白髪交じりの髪に黒縁眼鏡に細目が特徴的な、三十代後半くらいに見える長身痩躯のおじさんでした。ちびな私が見上げてるとご丁寧に名刺までくれました。

 

 けれど第一印象は胡散臭(うさんくさ)い。

 これにつきます。

 

 細目の笑顔は漫画とかでも胡散臭さの鉄板ですが、実際目の前にしてみるとやっぱ胡散臭そうです。

 

 

 研究所は街中にある警察署から山手に向かって走ること一時間少々、整えられた街路樹が目に優しい紅葉時期はさぞ綺麗そうな丘陵地にありました。狭めの敷地に建つ三階建てで、窓が少なく冷たい印象を受ける建物です。面会するまでにも何回か個人認証チェックを受け、かなりセキュリティに厳しい施設でもあるようです。

 

 もちろん私に関しては認証カードとかあるはずもなく、すべてスルーでしたが。

 

 私はリーダーおっさん、ええっと、名前は三木(みき)さんらしいです。三木警部、遅まきながらやっと覚えました。っていうか~、そもそもちゃんと教えてくれなかったし~。

 その三木警部と、茅野さん、そしてチャラ兄森久保の三人に連れられてここまで来たわけです。

 

 

「遠いところご足労願いましてすみません。今日は揉めに揉めてるというミーアちゃんが起こしている、不可思議な事象について、科学的見地をもって検証したく来ていただいたわけです。私としても大変興味を()いておりまして、今日という日を大変楽しみにしておりました! ミーアちゃんにはもしかして色々嫌なことをお願いするかもしれないけど我慢してもらえるとうれしいね」

 

 班目さんが細い目を眼鏡の奥でさらに細め、胡散臭い表情が更に胡散臭く見える笑顔を浮かべながら説明をしてくれています。

 

 ああ、私は今からどうされてしまうのでしょう?

 

 ドキドキ。

 

 茅野さんが私を安心させようと思ったのか、手を伸ばしてきて私の手をぎゅっとしてくれました。優しい人です。

 

 ありがとう!

 

 

 

 手始めにされたのはまたもや検査でした。

 レントゲンから始まり、CT、MRIと矢継ぎ早に放り込まれました。

 

 ちなみに三精霊たちは相変わらず私から付かず離れずだったのですが、不思議なことにこの施設に入ってからふらりとどこかにいってしまいました。珍しいこともあるものです。

 

 それが終わると待っていたのはど本命、能力検証です。

 

 私は一人とげとげの生えた変な部屋に案内され、他の面々は壁向こうの隣部屋に入っていきました。

 床ですらとげとげが生え、とげが無いのは私が通ってきたところだけみたいな、そんな変な部屋です。

 

「ミーアちゃん、聞こえるかい? その部屋は電磁波や音波などを吸収、遮断していてね、内外の雑多な情報を遮断できる部屋なんだよ。余計な情報が入らない状況で、ぜひ君が起こしているという事象を実演して見せてほしい。ほんとはまずいんだけど、壊してしまっても構わないから思いっきりやってくれたまえ!」

 

 ふむふむ。

 思いっきりやってもいいと?

 

 まぁほんとに思いっきりやったら大変なことになるから、そこはまぁ調整してあげましょう。どうしてだか体調もとてもいい感じなんですよね。あれかな、精霊たちがツンツンしてないからでしょうか?

 

 ともかく、施設を破壊しない程度に調整してせいぜい派手に見えるよう頑張りたいと思います!

 

 私はスピーカーから聞こえるフラットな声に(うなず)き、今までに見せてきたように、手のひらから炎の柱を吹き出すことから始めるのでした。

 

 

***

 

 

「ミーアちゃんにはああ言いましたが、実はあの部屋にはもう一つ秘密があります。巨大なX線検査装置とでも言いますか……。わかりやすく言えば空港の手荷物検査ですかね? あれで中身確認するでしょう? それを部屋レベルのサイズにしたものと言えます。それでもってミーアちゃんが事象を起こす際、何か仕掛けがないかを確認できたらと思ってます。うん、体ごと丸裸です!」

 

 班目と自己紹介してくれた胡散臭い研究所主任が、ミーアちゃんの居る部屋をモニターしながら嬉しそうに補足説明してくれます。もちろん私たちも一緒にその様子を見ながらです。

 

「そ、それって放射線とか影響大丈夫なんですか?」

 

「問題ありません。短時間のことですし、言ってみればレントゲン検査の全身版にすぎないわけですからね。大丈夫です!」

 

 

 ほ、本当だろうか?

 一抹の不安を感じながらもこれも仕事の一環であり、受け入れざるを得ないのです。

 

 それに私もあの不思議な事象……、もう面倒なのでぶっちゃけますが、どう見ても超能力としか思えないあの現象が少しでも究明出来るなら知りたいということもあります。

 警察というかお役所、官僚機構において超能力なんていう非科学的な現象について、そんな言葉や文章はおいそれと報告書に書くことなど出来ません。

 

 下手に書いてしまったら君は何を寝ぼけたことをとか、ふざけているのかね? とか言って不興を買うことは目に見えているからです。ま、これについては普通の会社ですらそうなるかもしれないレベルですが。

 

 みんなだって本当は私と同じこと考えてるに違いないのに……。

 

 

 はぁ~、本当に面倒くさいな。

 

 

 とりあえずこの結果がどうなるか心配だけど見守るしかないね。

 がんばれって言う言葉が適切なのかどうかわからないけど。

 

 がんばれ、ミーアちゃん。

 





理屈っぽい
めんどい
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