スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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ミーアの決意

三木(みき)君、君のところの茅野(かやの)君が面倒みている例の女児だがね、友好国のとある機関が興味を示したようでね、身柄を引き渡すことが決まった」

 

 出勤早々上司に呼ばれ、唐突にそう告げられた。

 

「はぁ?」

 

 俺はつい間の抜けた声で問い返してしまった。

 

「なんだね、その顔は。良かったじゃないか君。あんな訳の分からない不気味な子供から手を引けるんだぞ。私はあれとは早々に関わりを絶つべきだと思っていたんだ。うむ、本当に朗報だ」

 

 嬉しそうに話す上司である大塚警視。警察官としてどうなんだ、その発言。

 

「いや、しかしですね!」

 

「しかしじゃないんだよ、君。捜査の方に全く進展はなく、このまま未解決事件入りするのは間違いない。重要参考人たるアレは子供であり責任能力もない。調査依頼した研究所から回ってくる報告はあまりに専門的かつ、()()()()な内容すぎて理解出来る気がしない。茅野君の報告は保育園の日誌レベルであるし……。そんなものでも上へ報告せばならん私の立場を少しは解ってくれたまえ。報告のたびに偽造、CGではないことから説明しなければいけないんだぞ!」

 

 ぐぬぅ、正論すぎて言い返す言葉が出ない。確かにアレの報告は苦痛以外の何物でもない。それは目の前の上司(くそ)への報告という前例でもって実感している。

 

 けどなぁ、いきなり国を飛び越えて海の向こうの大国へ引き渡すなんて。

 そもそもこの情報がどうやってあちらさんの知るところになったっていうんだ?

 

 ザルすぎるだろ、わが国の情報セキュリティ。

 

「いやぁ、良かった良かった。女児は保護観察官である茅野君の住まいに同居しているのだったな? 彼女も物好きなことだが、この際それは好都合だったな。身柄の引き渡しの手間がかからなくていい」

 

 くっそ、この冷血漢上司め。

 

「女児の……、ミーア君の人権はどうなるんですか? 我々が勝手にあの子の所在を……、国を越えてまであちこちに動かすなど、そんな勝手が許されていいものなのですか?」

 

「くくっ、何を言い出すかと思えば。三木君、君もアレに(ほだ)された口だったのかね? そもそもアレ……自称ミーアだったかに日本国籍は認められていないんだぞ。どこの馬の骨ともわからないものの人権などと言われてもね。――とは言うものの、少なくとも国外退去もさせず衣食住の面倒をみてやっている時点で最低限の責任は果たしていると、そうは思わないかね?」

 

 それを言われるとまたもや返す言葉がない。

 頭のいい弁護士でもいれば何か言い返すことも出来たのかも知れんが……。

 

「ともかくこれは決定事項だ。引き渡しは二週間後となる予定だからそのつもりで準備を(おこた)らないように。あと茅野君にもよく言い含めておいてくれたまえ、問題ないよう頼むぞ」

 

 大塚警視は話は終わったとばかりに手を振り、まだ反論する気満々だった俺はすげなく追い払われてしまった。

 

 

***

 

 

 結局三泊四日になった研究所での検査から帰ってきた異世界人、元おじさんサラリーマンのスライム娘、ミーア十歳です。属性多くて困る。

 

 茅野さ、いえ、お姉ちゃんはスマホに入ったメッセージを見て青い顔をして、お化粧もそこそこに出ていきました。いつもニ、三十分はかけて顔作(メイク)ってるのに。

 

 そもそも今日はゆっくり昼からの重役出勤だって言ってたのに、何があったのでしょう?

 

 でもまぁ私的には好都合。

 研究所で得た情報をじっくり考察出来ます。

 

 研究所ではとても検査とは思えないことまで色々やらされましたが、ある意味ミーアの体で出来ることの再確認にもなりちょうどよかったです。私は自重などせず、出来ることはなるべく見せてあげました。もちろんやりすぎずほどほどにです。

 

 床を抜いたことは反省……させられましたし。こってり。主にお姉ちゃんから。

 

 あちらで知り合った胡散臭(うさんくさ)班目(まだらめ)主任さんにはとても喜ばれました。

 スライム体コーティングの光学迷彩や、謎空間を使った転移はことの外お喜びでした。これにはお姉ちゃんもお口ぽか~んで驚いていました。

 

 うん、光学迷彩や転移は初公開だったね。ごめんよ。

 

 でもまだ翅出して飛んだり、スライム体でみょ~んとかは見せてないのです。

 さすがにそれは人外っぽくなりすぎてまずいかなぁと思いまして。

 

 っていうかスライム体は向こうの世界でだって大っぴらには見せたことないんじゃないかな?

 

 どうだっけ?

 う~ん、ま、どうでもいいですね。

 

 謎空間転移は魔力の都合もあり、見せたのは目の届く範囲くらいの距離でしたが、体よく研究所(あそこ)にもぷにょを配置できました。これでいつでもあそこに転移できちゃいますよ、ふふん。

 

 で、本題なわけですが。

 

 あそこではっきりしたことはただ一つにして究極。

 

 ずばり、魔力が微量ながら回復する、その原因がほぼ確定できたこと!

 

 きっかけは警察での身体検査。あの時魔力が増えたことが一つ目の気付き。

 

 そして今回の研究所での色々な検査……というかもうあれは実験だと思うけど。あのとげとげルームでの一連の実験時、私の魔力はとてもとても増えました。

 

 クソ女神に日本に強制転移させられて以降、じわじわ減っていく一方だった私の魔力。それを補うどころか回復させるほどの増加ぶりなのでした。

 

 ついでに言えば三精霊たちの行動でしょうか。

 

 いつも私をツンツンしていたあの子たちが私のそばから離れるなんて、この世界においてはあり得ないことなのです。あの子たちにとっての死活問題ですから。なのに身体検査を行ったあの日以降、三精霊たちは頻繁に私の側から離れるようになったのです。

 

 今思えばあの子たち、私を差し置いて、魔素を求めてあちこち飛び回っていたのじゃないかしらん。

 

 ズルイ!

 

 

 ……ゴホン。

 

 いい加減もったいぶるのはやめましょう。

 この世界に魔素はない。それは間違いありません。

 

 ただし、それに置き換わることが可能なもの。それがあったのです。

 

 そう『放射線』です。

 

 身体検査時に受けたレントゲン検査。その時に微量ながらエックス線を浴びています。微量とはいうものの自然界から一日で普通に被ばくする量に比べれば遥かに多くの線量を受けることになります。

 

 もちろん、いずれにしても普通の人にはなんの影響も変化もありません。

 基準となる量がそもそもとてもとても少ないんですからね。多いと言っても誤差範囲レベルです。

 

 でも私は違います。

 そう魔器官があるのですから!

 

 スライム体自身ももちろん魔素を吸収しているわけですが、魔素の応用という面ではやはり魔器官が重要になります。魔器官は元はと言えばミーアボディ由来の器官なわけですが、今はスライム体細胞で再構築され別物となった、アップグレードハイスペックモデルなのです!

 

 結果、とっても魔力収集が(はかど)ったわけなのです。

 

 特にとげとげルームは最高でした。

 思わずいたずらで床を抜いてしまうくらいには。

 

 重ね重ねすまぬ。

 

 

 魔素も放射線も共通して言えること。

 それは微量ならばその体に悪い影響はほぼ出ない。使いようによっては役にも立つ。

 

 けれどその量を誤れば。

 

 魔素も放射線もその牙をむいてきます。

 

 魔素は魔物を生み、更にそれが進めば魔獣へと化します。放射線だって細胞に異常をきたして癌化したり、色々な病を発症させるし、場合によっては生物の変質を(うなが)したりします。

 

 こうやって比べてみるとなんだかちょっと似てますね。

 

 あちらの世界ではさっきから言ってるように魔器官がありますから放射線を浴びすぎたこちらの生物とは違い、すぐさま異常をきたすようなことはありません。それどころか魔力が増え、魔法が使えるなど恩恵を得ることも多いわけです。

 

 まぁそれにも限度があるわけで、過ぎたるは(なお)及ばざるが(ごと)し。

 

 ほどほどを越えて、限界突破しちゃったなれの果てが、かの災禍の凶龍となり牙をむいてきたわけですけれど。

 

 おお、そういえばこちらの映画でもありましたよね?

 放射能のせいで生まれた、口から背びれから、なんかズビシーと吐き出して街を豪快にぶち壊していく怪獣のやつ。

 

 あれ好きでよく見てました。

 シンを冠した映画、大好きでした。

 

 

 ま、それはともかく、魔力回復の目処はそう言うことで立ちました。

 でこれから考えなきゃいけないこと。

 今のままでもここで暮らすことだけを考えるなら十分な訳です。

 

 けれど。

 だけど私はそれでは満足できないし、したくない。

 

 アンヌのところに帰る。

 それは今もぶれず変わらない唯一の目標であり、私の心のよりどころ。

 

 それを実現するために必要なものは何でしょう?

 そしてこの日本でそれを大量に得られるところはどこでしょう?

 

 

 おのずとそれは限られてきます。

 

 

 今のままではいつまでたっても元の世界に戻るための『魔力増量=スライム体増量』は(かな)いません。

 

 

 実行あるのみです!

 





百話くらいで完結の予定です
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