スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

97 / 102

いっぱい


介入!

 結局、原子炉の中に入るのは人の姿のままでは無理だったので、一度スライム体になって原子炉内への給水?経路を辿(たど)って侵入を果たしたスライム娘、ミーア十歳です。

 

 もうこのフレーズも使いすぎて()きてきました。

 

 ただいま元気に稼働中の原子炉に手を添えて、鋭意(えいい)放射在線吸収中であります。原子炉圧力容器? っていうんですよね、これ。ネットで勉強したのでわかります、ふふん。

 

 魔力がみるみる増えていくと共に私の体がとてもきれいな、でも凍りついてしまいそうな冷たい青色で発光しだしておりまして自分でも驚いています。

 

 けれどおかげさまで大変はかどっております!

 

 で、なぜ中に侵入してからまたミーアの姿になってるのかと言えば……、やっぱ元おっさんサラリーマンの自我を持つ自分的には人の姿が一番なことと、あとは単純にイタズラ心が()いてしまったってことでしょうか。

 

 中に私が居るって気付いたら、さぞやびっくりするのではないでしょうか?

 

 異世界に戻る私にとって、身バレして困るなんてことは全くありませんから、置き土産的にちょっと驚かしてやろう……なんてね!

 

 とは言っても私の存在を知ってる人なんて限られてて、原子炉内に人が居るって現実を関係者が世間に公表するなんてことをするとも考えられませんから、その情報はごく限られた狭い範囲にとどまることになるに違いないです。

 

 きっと。

 

 あ、けれど、ちょっとだけ電力供給に迷惑かけることにはなるのは申し訳ないとは思いますけど。

 でもでも短時間のことですし、原子力の膨大(ぼうだい)な力は私程度がちょろまかしたエネルギーなんかあっという間にリカバリーできちゃうことでしょう。

 

 きっと。

 めいびぃ(maybe)

 

 だから私は何の気兼ねもなく、やりたいことは存分にやらせていただく所存でございます!

 

 

***

 

 

「こんなことあっていいのか? 私は一体何を見せられているんだ……」

 

 こうして原子炉格納容器内の映像を視覚化してモニターできるようになったのは過去の地震災害時の教訓と、高温高圧な環境での使用にも耐える超小型カメラが開発されたおかげではあるが、まさかこのような事態を目にすることに活用されることになろうとは……予想だに出来なかった。

 

 こんな事態に対処するすべなんて私は想定していないぞ!

 

 これは緊急停止するしかないのか?

 

 だが災害が起きた……というわけじゃない。

 

 そもそもなにかしらのトラブルが発生した場合、緊急停止は自動的に実行されるシステムになっているが、それが機能しないということはまだそういった状況には至っていないということでもある。

 

 だいたい停止してどうなる。

 原子炉の蓋を開けて、中にいる女の子を引っ張り出すのか?

 

 人命を尊重しなきゃならんのは当然とはいえ、いつの間にか中に居た子供だぞ。

 いや、あれは本当に子供なのか? 原子炉圧力容器内に存在しえる人間なんて居てたまるか!

 

 見ろ!

 

 子供自身がだんだん青白く光りだしてきてるぞ。

 まるでチェレンコフ光のようじゃないか。

 

 あんなもの、私は人だとはとても思えない。私は悪夢を見せられているのか?

 

 原子炉格納容器と圧力容器、それぞれの蓋を外すためにかかる時間と労力、それにコストは莫大だ。その間は発電だって停止することになる。当発電所が被る損害は計り知れない。

 

 モニターはずっと出来るとは言え、開けたら居ませんでしたじゃ洒落(しゃれ)にならん。

 

 こんな訳の分からない、理解できない事態に対する責任をどうして私が?

 

 私はどうすればいいんだ!

 

 

「部長! な、内閣官房室から、れ、連絡が……、その直接入ってきました。どうしましょう?」

 

 電話を受けた部下が情けない声で、私に聞いてきた。

 このタイミングでまた面倒くさい事案追加だ。

 

「な、なんだと? た、確かに上層部には報告したし、そこから何らかの動きはあるのかもしれんが早すぎだろう。それも直接だなんて……、間違いないのかそれは」

 

「総務部からの転送です。ま、間違いはない、と、思います」

 

 部下を困らせても仕方ない。ここは出ざるを得ない。

 

 考えようによっては今現在の状況判断をあちらにゆだねることも出来るかもしれない。この場の責任者としてはどうかとも思うが、そんなプライドなんて捨てたってかまわない。私に今この場での判断をするなんて酷すぎる。

 

「お電話代わりました。はい、発電部部長です。えっ? こ、こちらに……ですか。あちらの軍の、特殊部隊? な、内密にと……、は、はぁ」

 

 

 電話の内容は驚くべきものだった。

 

 電話をかけてきたのは内閣官房長官ご本人であり、しかもこの場に自衛隊はもちろん、さらには友好国の特殊部隊まで派遣すると言ってきたのだから。もちろん私だけに話が来たわけではなく、当然このことは上層部も承知の上での話らしい。

 

 ここでの出来事が筒抜けになっていることはひとまず置いておくとして、正直この話は私にとっては渡りに船、自分自身で責任を負わずに済みそうな流れに不謹慎ながらホッとしている私が居る。

 

「わ、わかりました。出迎える心づもりをしておきますし、周知徹底しておきます。はい、守秘義務については普段より徹底していますから問題はありません、はい」

 

 

 この後どうなるか私には想像すら出来ないが、どうか最悪の事態にならないようにと、願うしかない。ここの責任者としては情けなく、忸怩(じくじ)たる思いではあるものの、かといって私からどうこう出来ることがあるはずもなく。

 

 私、そして部下たちも、今この時も原子炉圧力容器に手を添え、その体からチェレンコフ光のような青白い光を発している、謎すぎる幼い女の子を見守るしかないのだった。

 

 

***

 

 

 む?

 

 発電所の外がなにやら騒がしくなってきました。

 

 おお~、大きなヘリが二つほど下りてきて、中から人がわらわらいっぱい下りてきました。十数人はいますか。おお、片方のヘリはプロペラがエンジンごと90度回転するやつです、かっこいい!

 

 魔力の増加と同時進行でスライム体の増殖を進め、それに伴い周囲、四方八方へ触手(スライムセンサー)を伸ばし、警戒をしていたところ引っかかってきました。これって自衛隊? でもあのヘリって自衛隊も持ってるんでしたっけ?

 

 それにしても、随分動き早くない?

 ここ、日本ですよね?

 

 こんなにテキパキ迅速な行動、指示できる国でしたっけ?

 

 って、あれ、なんか外国の人も混じってない?

 

 

 あ、ああ、そういう。

 

 外国、某大国さん介入ですね、なるほどなるほど。

 圧力かかっちゃった系ですね、わかります。

 

 あっ!

 

 見覚えある顔が居ます。

 名前忘れちゃったリーダーおっさんと……、茅野(かやの)さん。それにチャラ男です。

 

 どうやら引っ張り出されちゃったみたいですね。っていうかですよ、あの三人がここに来たってことは、すでに私のこと把握されちゃってるってこと?

 

 判明した事実に驚くとともに、やっぱあちら様の諜報活動っていうの? そういうのってすごいんだなって関心してしまいました。映画やアニメの世界だけじゃないんですね、こういうのって。

 

 ヘリから降りてきた団体さんは迷いも(よど)みもなく、整然とした様子で発電所内に入ってきて、どう見ても私の居る原子炉建屋内へと向かってきてるように思えます。

 

 う~ん、思ってたより展開が早いです。

 異世界へ転移するための必要魔力量を稼ぐにはもうしばらく時間が必要です。

 

 こうなったら使用済み核燃料貯蔵プールにも(スライム)を伸ばしておきましょう。あちらは三精霊たちが随分吸収したようなので手を出しませんでしたが、少しでも早く終えるためです、やらないよりやった方が早くなるのは間違いないです。

 

 おっと。

 

 とうとう発電所の原子炉を管理してる部屋にまでみなさんご到着のようです。ほんと仕事早い人はきらいです。しがない普通のおっさんサラリーマンだった私への当てつけに違いないです!

 

 いや、そんなこと知ってるわけないので私のひがみ根性です、ごめんなさい。

 

 むむ、なんか偉そうな態度のでかい外人の軍人さんが進み出てきました。横に自衛隊の人が引っ付いてて、更にその横、茅野さんが後ろにいた軍人さんに背中をグイグイ押されながら前に出されました。ちょっと! お姉ちゃんを雑に扱わないでくれる!

 

「おい、もう少し丁寧な扱いをしてくれ、茅野君が痛がってるだろう」

 

「ふふ、これは失礼した。だがこれくらいのことで文句が出るようでは日本の警察は随分たるんでいるようだな」

 

「なっ」

 

「まぁまぁ、三木警部、ここは穏便(おんびん)に願います。大尉殿、あまり挑発するような言動や行動は控えていただけると助かるのですが?」

 

 

 むぅ、スライムセンサー全開で様子(うかが)ってみる限るなんかあまりいい空気ではないような。お姉ちゃ、いえ、茅野さんをいじめたやつ、覚えましたからね!

 

「ふふ、これは失礼。そうでしたな、ヤマトナデシコというのでしたか? 弱そうに見えても実際はしっかりした強い女性であるという。彼女もきっとそうなのでしょうな。ともかく、さっそく役目をはたしてもらおうではないですか?」

 

 こいつ、偉そう。嫌い!

 

 なんか茅野さんにさせるつもりなのかな? ありがちといえば日本のお家芸、人情がらみ、お涙頂戴の説得と交渉とか?

 

 お母さんが泣いてるぞ! とか、多くの人に迷惑がかかるんだぞ! とかね。

 そんなこと言われてもねぇ、どうしようもないけどね、うん。

 

 

 お母さんいないしね。

 

 

 それでもしいて言えばクソ女神……、なのかしらん?

 

 ――いやすぎです。

 

 今の考えは奈落の底に沈めておきましょう。

 

 

「ミーアちゃん……」

 

 

 茅野さんがちょっと寂しそうな表情を浮かべこちら(まぁ便宜上モニターを見てって感じですが)に話しかけてきました。そんな表情を浮かべさせてしまった自分にほんの少し、自己嫌悪の気持ちが生まれますが、これは致し方ないことなのです。重~い(ふた)()せて、出てこないようにしましょう。

 

「おおっ、中の子供が反応したぞ。本当にアレが例の超能力少女であるのは間違いないようだ。しかもこちらの状況も把握できている。なんとも興味深い。――どうした? 続けたまえ」

 

 ううん、勝手言ってるなこの軍人さん。

 まぁ私も茅野さんの言葉につい反応してしまったしね。めんどくさいですねぇ。

 

「ミーアちゃん! あなたが誰で、それにどこから来たのか、結局わからないままだし、何をやろうとしてるのかも知れないけど。でもね、忘れないで。私はあなたを犠牲にしていいなんて思ってないから――」

 

「おい貴様、何を言い出す。取り決めと違う発言をしないでもら――」

 

「だから、あなたの思う通り、やりたいようにして! ただ、ただね、出来れば世の中の人たちに影響が出ないよ、きゃっ」

 

 偉そうな軍人の言葉をぶった切ってまで私への言葉を続けた茅野さん。その茅野さんの肩に偉そうな軍人が後ろからごつい手を伸ばし、あろうことか強引に引き倒した!

 

 

 

 私の頭は真っ白になった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。