スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話   作:あやちん

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お別れと期待

 お姉ちゃんたちを前にして今までにも増して人外的なことを色々やらかし、もうまともな接し方はしてもらえないと覚悟してました。

 

 にもかかわらず普通に抱きしめられ、更には心配までしてもらえました。

 

 伝わってくるぬくもりについ甘えたくなり、やわらかそうな胸に顔をうずめてしまったミーア十歳です。元日本人おっさんサラリーマンですが、そんなことはとてもとてもどうでもいいことだと思います!

 

 氷漬けにしなかった人たちが、私とお姉ちゃんを遠巻きにして様子を(うかが)っていますが、見るからに不気味なものを見るような態度でミーアちょっと傷付きます。びくびくしながら放射線量を確認しに来たここの職員さんも計ったらソッコー離れていきましたし。

 

 まぁ私がさっきまでにやらかしたことを思えばそうなるのは当然で、むしろお姉ちゃんの態度こそ私には不思議で仕方ないのですが。

 

「お姉ちゃん……。私のこと、怖くないの?」

 

 私の問いかけに返ってきたのは更なる抱擁(ほうよう)と高速頭ナデナデでした。

 

 お、お姉ちゃん、やりすぎだからっ。

 スライム脳が撹拌(かくはん)されちゃうから。

 

 

「み、ミーア……君。そ、そのなんだ。ちょっと話をさせてもらいたいんだが……。どうだろうか?」

 

 半泣きのお姉ちゃんと抱擁(ほうよう)を交わしていたら、遠巻きに見ていた人たちの中から一人、いえ、その後ろから更に二人。近寄ってきました。

 

 ああ、リーダーおっさんにチャラ兄、森久保ですか。リーダーおっさんは三木警部……でしたっけ。残りは、うん、迷彩服だし……自衛隊の人だね、きっと。

 おっさんとちゃら兄は少しは打ち解けたかなって思ってたけど、ちょっとビビり入った態度になっちゃっててウケる。自衛隊の人も緊張してるのが見え見えで、その手が腰元から離れないのがなんだかね……って感じ。さっきの見て無駄とは思ってるでしょうけど、やっぱ怖いんだろね。

 

 見た目ワンピース姿のかわいらし~い幼女とはいえ、未知のものに恐怖を覚えるのは当然だよね。

 

 だから余計にお姉ちゃんが私を受け入れてくれるのがとても……ウレシイ。

 私は確かめるように、お姉ちゃんの背中にまわしている両の腕に力をこめました。

 

 

「ミーア……君? 聞こえているだろうか?」

 

 ん?

 

 ああ、そう言えば話しかけられてるんでした。

 

「なに?」

 

 

 私は相手するのメンドクサイなと思いながらも、まぁ一応世話になったってこともあり、いやいやながらも三木警部の方を見て答えます。

 

 

「す、すまない。その、なんだ。色々確認したいことがありすぎて……だな。出来れば我々と一緒に来てもらえると、だな――」

 

 警部さんが言いにくそうに私に話を振ってきて、色々言葉を並べ始めました。自衛隊の人も一緒になって話しかけてきました。チャラ兄は一歩引いたところに居ますが、下がりたそうな雰囲気ぷんぷんです。

 

 一緒に来てほしそうですけど、今更私にそんなことをする必要性は微塵(みじん)も感じられません。こうしている間にも私の魔力は恐ろしい勢いでドンドン増えて行ってるのです。謎空間のスライム体総量はすでに異世界に居た頃に匹敵する量にまで増殖しているのです!

 

 なんか、しゅごい。

 

 異世界の魔素より、放射線のほうが効率が良いのかどうか知れませんが、増量比が魔素の二百%以上はあるんじゃないでしょうか?

 

 

 ということでもうアンヌのところに戻る準備は万端、整いましたの!

 

 

「警部さん、自衛隊の人? ごめんね。私、もうこの世界から居なくなっちゃうから、付いてくことは出来なかな。せっかくのお誘いだけど、お断りさせてもらっちゃいますね」

 

 私の返した言葉に、話し出して調子が出てきてたらしいお二人さんの言葉が詰まります。

 

 そして何より、私を抱きしめていたお姉ちゃんが、がっつり私の肩をつかみ立膝をつき私と向かいあう体勢に変えたところで、(あせ)った様相で問いかけてきました。

 

「ミーアちゃん! それどういうことなの? 居なくなるって……、この世界からって……いったい」

 

 切なげな表情を見せるお姉ちゃん。

 どこの誰かも知れない私のことをそんなになるまで心配してくれてるなんて……、ほんとにうれしい。

 

 けど。

 

 やっぱり、この世界に私の居場所はないのです。

 

「お姉ちゃんごめんなさい。いっぱいお世話になったのに勝手に出て行ってごめんなさい。それに、色々内緒にしていてごめんなさい」

 

 信じてもらえるわけもないけど、これだけは言っておこう。

 

「私ね、この世界、地球で生まれた存在じゃないの。なんていうか、異世界っていえばわかりやすいかな。ここじゃない世界、きっと宇宙すら違う世界? そんなところから来た存在なんだよ?」

 

 急に語りだした突拍子(とっぴょうし)もない話にお姉ちゃんも、周りの大人たちも(きつね)につままれたような顔をしてますけど、それでも私が言ってることを聞き()らさないとばかりに話を聞いている感じです。

 

ここ(原発)に来たのは、元居た世界に帰るため。帰るために必要な魔力を得るために原子力? の力が必要だったからなの……。おっきな三つ首龍、出たでしょ? あれは私の居た世界で災いを呼んだ生き物の姿。私と一緒に付いてきた大精霊たちだったんだけど、あんなことになっちゃって……、ほんと残念。きっとあの()()()()()ノセイ――」

 

 あ、最後にちょっと余計な愚痴(ぐち)が入っちゃった。

 

 っていうか一気に詰め込み過ぎちゃったかな?

 いい大人が、呆けた顔しててちょっと面白いけど。

 

「発電所の人たちには迷惑かけちゃってごめんなさいだけど……、文句言うならクソ女神に言ってほしいな。って言ってもわからないよね、あはは。まぁ、おかげさまで、帰る準備できたのです。だから――」

 

 周りの人たちのことなんて全無視してお姉ちゃん、茅野(かやの)さんをじっと見つめます。

 お姉ちゃんも何かを察したのか、私のことを見つめ返してきます。その目はもう涙でいっぱいになってます。

 

 私が話をしてる異世界云々(うんぬん)については理解することなんて無理に決まってるけれど、それでも私が居なくなってしまうことは嫌でも通じちゃったんでしょう。

 

 

「居なくなっちゃうん……だね」

 

「うん」

 

「向こうの世界? に、家族はいるの?」

 

「家族……というものは私には()()……けど、でも、大切に思ってる人はいるよ」

 

 私の言葉にちょっと(さみ)し気な表情を浮かべるお姉ちゃん。

 

「そっか……。もう、ここには戻ってこない……んだよね?」

 

 

 そ、それは……。

 

 

 今の今まで考えてもいませんでしたが……、きっと出来ます、ね。

 まだ帰ることを成功していない今、絶対とは言い切れませんが、帰れたなら再びこちらに来ることが可能となるのは必然です。

 

「えっとね、先のことはわかんないけどね。これ持ってて?」

 

 指先からぷにょを(にじ)みださせ、ぷにょ収納からミーアお手製虹色魔石入りお守り袋を取り出し、それを中にしまってお姉ちゃんに渡します。

 

 はい、転移のための目印ですね。

 

 ただ、こちらの世界では魔石に魔力を吸収させることなんてないし、お姉ちゃんから魔力を得ることもできないため、もって一ヶ月がせいぜい。

 

 放射線を当てればいいのかもしれませんけど、ちょっとお姉ちゃんには現実的じゃありません。

 

 

「これを私に? お守り……かな。ふふっ、大事に、大事にする、ね」

 

 お姉ちゃんが零れ落ちる涙をぬぐいながら、私が手渡したぷにょ袋お守りを受け取ると大事そうに胸に(いだ)きます。

 

 

 ただのお守りと化してしまうのか、私が再び会いに来るための(いしずえ)になるのか?

 

 それは先のことで、未来のことは私にもわかりません。

 

 

 私はゆっくりお姉ちゃんから下がるようにして離れます。

 

 お姉ちゃんも立ち上がり、後ろに下がっていきます。

 

 

 

 周囲にちらしてあったスライム体や、使用済み核燃料貯蔵プールにやっていたスライム体もすべて合流済です。

 

 

 時は満ちました。

 

 

 せっかくなので派手な演出といきましょう。

 この場に居る人たちへの迷惑料込みのサプライズです!

 

 

 背中から(はね)を伸ばします。

 伸ばすとともに、魔力を末端にまでいきわたる様、ドンドン送り出します。

 

 やがて広げた翅は部屋いっぱいになるほどとなり、魔力で満たされた翅は、(まぶ)しいほどの青白い光を放ちだします。その光は翅で収まらず、ついには私の体も同じように光り出します。

 

 原子炉内に居た時の様子ふたたびと言った感じです。青っぽい光は水属性の色を連想させますけど、この輝きはそれとは違い、どこか神々しさすら感じるとても美しい輝きです。ちょっと放射能由来の魔力光は性質が違ったりするのかもしれません。

 

 ま、魔力は魔力。使えれば文句はないですけれど。

 

 

「ま、待ってくれ、ミーア君。どうか一度こちらに――」

 

 

 警部さんや自衛隊の人が目の前を手で覆いながらも何か言ってますが、もう今更です。

 

 外から見た私はきっと青白い光に溶け込んでいき、いずれその光と共に消え去っていくことでしょう。

 

 

 

「さよなら、お姉ちゃん……」

 

 

 

 私の言葉、聞き取れたでしょうか?

 

 青白い光が部屋中に満ち、もうそれを確認するすべもありません。

 

 

 謎空間のスライム体のすべてが魔力で満たされ、すべてが同じように発光しているであろうことがわかります。

 

 

 気持ちを切り替え、有り余る魔力を頼り、スライム体の繋がりを辿(たど)ります。

 

 それはもちろん、私にまつわる全てのスライム体について、です。

 

 

 

 

 

 まず感があったのは、もちろんお姉ちゃんに渡したぷにょ袋。

 

 

 

 ………………。

 

 

 

 さらに辿ります。

 

 

 

 ………………………………。

 

 

 

 

 

 …………………………………………ああ。

 

 

 

 

 見つけ……た。

 

 

 見つけました!

 

 

 

 異世界――。

 

 

 

 ――私の生まれた湖。

 

 

 

 そこに残ったぷにょたち。

 

 

 

 

 そして……、

 

 

 

 

 アンヌ!

 

 

 それにシイ=ナに渡した……お守り(アミュレット)

 

 

 

 

 ああ……。

 

 

 ちゃんと辿れました!

 

 

 

 まだ私の分身、ぷにょたちは存在していました!

 

 

 

 

 

 そんな感動に打ち震えながら私は、懐かしいその場所を目指し、謎空間へと自身の体を(ゆだ)ねたのでした。

 

 






ちょっと百話で収まらない感じですが完結間近です。

あと少しだけお付き合いいただければ幸いです!


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