結城勇太は勇者である   作:モンハン太郎ゆゆゆスキー

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圧倒的見切り発車なので、投稿頻度はお許しください…


第一話 結城勇太、養子になる

 俺は夢を見ていた。地面が色とりどりの樹の根のようなものに覆われているよく分からない空間で、少女達が三体の化け物達と戦っている夢を。少女達三人の内、二人が重傷を負った。もう一人は、二人を化け物達から離れた所へ連れて行き、仲間であろう二人へ別れを告げた。そこからは、一人の少女が化け物達を倒そうと向かっていく。が、一人じゃ勝てない。みるみるその少女の身体はボロボロになっていく。見るに耐えない光景の筈なのに、俺は目を離せなかった。やがて、その少女は化け物達を倒した。しかし、それと同時にその少女は命を落とした。その瞬間、目が覚めた。

 

「……ッ! ……随分とまぁ嫌な夢を見たもんだ。それにしてもなんなんだあのリアルな夢は。朝っぱらから見るもんじゃねぇだろ」

 

 ぴちぴちの高校一年生の男の子には少し刺激が強過ぎないか。俺はそんなことを心の中でボヤきながらリビングへと向かうと、そこには前衛的ファッションと呼べる仮面をつけた人物が両親に向かって土下座をしていた。

 

「おはよう、父さん母さん。……これは、どういう状況?」

 

「勇太、おはよう。どうやら神樹様の御役目とやらにお前が選ばれたそうなんだ」

 

「ほー……」

 

 俺は訳が分からず変な声が出た。決して俺は悪くないだろう。続け様に父は告げる。

 

「それで、お前を養子に出さないといけないらしい。その交渉で来たんだと」

 

「へー……って養子⁉︎養子ってもっと小さい頃になるもんだろ……。この歳で養子はキツくね? 俺、絶対気遣うって」

 

「だよなぁ……」

 

 高校一年生にして唐突に養子になるという訳の分からないことを言われ、困惑と驚愕をあらわにする俺。するとオシャレ仮面が、

 

「何卒、何卒宜しくお願い致します。あなた方の息子さんにしか出来ないことなのです」

 

「ずっとこう言って聞かないんだ。勇太、どうする?」

 

「えっと、その御役目とやらはどういったものなんですか?」

 

「御役目については、話すことは出来ません。話してはいけないのです」

 

「えー、話せないのか……。それに俺にしか出来ないのかぁ……。それならやるしかないよなぁ……。だろ? 父さん」

 

 俺は御役目とやらを引き受けることを決めた。夢を見たことも関係しているかもしれないが、基本的に困ってるなら助けるだけだ。

 

「まぁそうなるよなぁ。母さんはどうだ?」

 

「勇太が決めたことなら止めないけど……あの子が許してくれるかどうかよね」

 

「確かに、友奈は勇太にべったりだもんな」

 

 俺には少し歳の離れた妹がいる。ちなみに妹は俺にべったりである。俗に言うブラコンというものだ。妹かわいい。しかし俺は心を鬼にし、両親に妹の兄離れを薦める。

 

「それもそうだな。よし勇太、気を付けて行ってこい」

 

「了解、友奈には話さなくて大丈夫?」

 

「私とお父さんがなんとかするわ。安心して行ってきなさい」

 

「おっけ。あの、いつから養子になるんですか?」

 

「出来るだけ早い方が助かります」

 

「分かりました。十分下さい」

 

「え? 十分ですか?」

 

「アイツあんまり私物無いもんな」

 

「そんなレベルではないのでは……?」

 

 ◇◇◇十分後◇◇◇

 

「お待たせしましたー」

 

「リュックサック一つだけ……」

 

「んじゃ、行ってきます!」

 

「おーう、行ってこい! あ、鍛錬は忘れんなよ!」

 

「当たり前! また会う日を楽しみにしてなよー!」

 

「私達の息子をよろしくお願いします」

 

「は、はい。それでは」

 

「さ、行きましょう!」

 

 ◇◇◇

 

 いきなり養子になるということに少し驚いていたものの、俺はなんだか楽しみにしていた。足取りが軽い。悪夢を見た日とは思えない程に。

 

「そういえば、養子になる家はどこなんですか?」

 

「大橋市の高嶋家という家に向かいます。貴方様はそこで、御役目に備え鍛錬をしていてください」

 

 俺は高嶋家のことは分からなかったが、とりあえず返事をした。

 

「了解です」

 

 ◇◇◇

 大橋市の高嶋家とやらに到着した俺が抱いた感想は、

 

「……デカっ」

 

 という、チープここに極まれりな言葉だった。デカ過ぎる家を目の当たりにし、呆然としていた俺を横目にオシャレ仮面はインターホンを鳴らし、

 

「お連れ致しました」

 

 と、言った。すると扉が開き、インターホンから

 

「中へどうぞ」

 

 という声が聞こえてきた。お邪魔しますと言って中に入ると、そこにはめちゃくちゃ高そうな家具がいっぱいあった。え、俺ここに住むん? 怖いんだけど。壊したらやばいだろ、絶対。そんな考えが脳を巡り、俺はガッチガチに緊張してしまう。

 

「そんなに固くならないで」

 

「私達の息子になるのだからな」

 

 優しい声でそう言ってきたのは、めちゃくちゃ美人な女の人とイケおじだった。あ、この二人が俺の新たなるペアレンツなんですねー。顔面偏差値たけー。……あれ⁉︎オシャンティー仮面どこ行った⁉︎消えたんだが……

 

「立ってないで座って座って?」

 

「ア、ハイ。シツレイシマス」

 

「さて、自己紹介をしようか。私は高嶋家当主、高嶋裕也だ。よろしく頼む」

 

「次は私ね。私は高嶋優佳。よろしくね?」

 

「ハイ、ヨロシクオネガイシマス」

 

 促されるままに高そうなソファに座り、目の前の二人の自己紹介を聞く。すると驚いたことに、俺は緊張でガッッチガッチになってしまった。目の前の二人はそんな俺を見て苦笑を浮かべる。

 

「やはり、まだ緊張してしまうか……」

 

「もっとこう、フランクにきてほしいのに……」

 

 俺の新たなるペアレンツはしょぼんという擬音が聞こえそうなくらい落ち込んでいた。これは、俺がなんとかするしかない! 

 

「俺は結城勇太。高校一年生。これからよろしく。父さん……母さん……」

 

「「……!」」パァァァ! 

 

 一気に明るくなった! 切り替え早っ⁉︎そして二人は俺に、

 

「「ようこそ、高嶋家へ」」

 

 と言い、俺は結城勇太から高嶋勇太へと名前が変わった。その日の夜、俺は今まで食べたことのないような料理の数々を見て、緊張のあまり味をあまり感じなかったのは別のお話。味をあまり感じなかったというのにめちゃくちゃ美味かったと感じたってことは……どんな高級食材だったのだろうかと思い、俺は身震いした。

 

 


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