結城勇太は勇者である   作:モンハン太郎ゆゆゆスキー

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第十二話 結城勇太の合宿二日目。

 合宿二日目、訓練最終日となる今日、俺は三人を応援していた。多分もう少しでゴールできるだろう。あっ、銀ちゃんが空中でボールに当たった。まぁ、とりあえず休憩だな。

 

「三人とも、こっちおいで」

 

 俺は手招きをしながら呼びかける。小走りで近寄ってくる三人、可愛いっす。

 

「兄ちゃん、どしたの?」

 

「少し休憩を挟んだ方が良いよ。だってもうすぐ三時間だよ」

 

「わ〜、ほんとだ〜。もうそんなに経ってたんだ〜」

 

「……」

 

「須美ちゃん、どうかしたかい?」

 

 元気な銀ちゃんと園子ちゃんとは対照的に少し沈んだ感じの須美ちゃん。まぁ、確かに少し沈んじゃうのも分かるかな。

 

「私、ボールをしっかり撃たなきゃいけないのに、何度も外してしまって……」

 

「そうだね、確かに少し外しちゃったね。でも、多分だけど須美ちゃんはもう少ししたら絶対にボールを撃てると思うよ。アドバイスとしては、やっぱり視野を広げることかな。今は銀ちゃんたちの周りを見てるけど、銀ちゃんたちを視界の真ん中に配置して、空間を把握してごらん」

 

「……はい」

 

「不安? ……大丈夫、君なら出来るよ」

 

「はい!」

 

 これで少しは元気になれたかな。そう考えていると銀ちゃんと園子ちゃんが歩いてくる。

 

「お、やる気に満ちてるなー! 須美!」

 

「やる気マックスだね、わっしー!」

 

「ええ! 次こそは成功させるわよ、三ノ輪さん! 乃木さん!」

 

「あと五分したら再開するわよ。それまでゆっくりしてなさい」

 

「「「はい!」」」

 

 ◇◇◇

 

 結論から言おう。三人は連携の訓練をクリアした。園子ちゃんが飛んでくるボールの大半を傘状にした槍で受け、園子ちゃんがカバーしきれないところからのボールを須美ちゃんが的確に落としていく。そして銀ちゃんが空中へと跳んで、ボールを切りながらバスへ一直線で向かっていく。……待って、その勢いだとさ、

 

「ゴ──ール!」

 

 そうだよね、バス、切り刻むよね。うわぁ、細切れじゃん。……パーツ拾わなきゃ。それが終わったら三人をしっかりと褒めよう。ただ、その前に安芸さんからのお叱りがありそうだなぁ。

 

「俺、先にあの残骸片付けてきますね」

 

「ごめんなさい、頼むわね」

 

「お任せを。……あまり怒らないであげて下さいね?」

 

「……分かってるわよ」

 

「それじゃあ、行ってきます」

 

 俺は安芸さんと少しだけ言葉を交わし、バスだった物の散らばるところへと跳ぶ。着地した俺に銀ちゃんが満面の笑みで近寄ってくる。左右に揺れる尻尾が見えた⁉︎……気のせいか。訓練をクリアしたのはすごい、ただ残念ながら、安芸さんが怒っていることを伝えると、怯える子犬のようになってしまった。かわいそうだけどかわいい。

 

「兄ちゃん、クリアしたよ! すごいでしょ!」

 

「うん、すごいと思う。よく出来ました。ただ……」

 

「どしたの?」

 

「いやぁ、バスのことで安芸さんがお話しがあるって」

 

「あ……」

 

「まぁ、とりあえず先に下に戻っててよ。俺は少しやることがあるから」

 

「うん! 分かった。先に行ってるね!」

 

「はーい。……さてと、早いとこ片付けますか」

 

 俺は銀ちゃんが降りていくのを見送った後、バスの残骸を片付ける作業に入った。とはいっても、散らばったパーツをとりあえず道路の邪魔にならないところに置くくらいしか出来なかったためすぐに降りた。

 

「訓練をクリアしたのはすごいことだけれど、バスを壊すことはなかったんじゃないかしら」

 

「……ハイ」

 

「……まぁ、よく出来ました。バスのことはもう気にしなくて良いです」

 

「だって、良かったね。銀ちゃん」

 

「あ、兄ちゃん、おかえり!」

 

 降りてすぐに安芸さんのお叱りが終わったため、俺は銀ちゃんに戻ってきたことを伝える。銀ちゃんからおかえりという言葉が聞こえた。なんて良い言葉なんだろう。

 

「ただいま、二人もよく頑張ったね。おめでとう」

 

「えへへ〜、頑張ったんよ〜」

 

「……」

 

「うん、見てたよ。頑張ったね。須美ちゃんも、おめでとう」

 

 良い笑顔の園子ちゃんを撫で、上目遣いでチラチラとこちらを見る須美ちゃんも撫でながらもう一度褒める。二人とも可愛いなぁ。よーしよし、もっと撫でるぞー。後ろにいる銀ちゃんの表情が笑顔から嫉妬をしているような顔になっていく。

 

「おいで、銀ちゃん」

 

「へへっ、よっしゃ!」

 

「おっとと、元気だね」

 

 銀ちゃんは俺の首元に抱きついてくる。園子ちゃんと須美ちゃんから手を離し、銀ちゃんを抱っこする。二人からの寂しそうな顔が罪悪感を刺激する。ごめんよ、また後で撫でてあげるから。そう考えていると安芸さんがこちらに近づいてくる。

 

「勇太くん、乃木さん達が少し休んだら三人と連携してみてもらえる?」

 

「はい、分かりました」

 

 ◇◇◇

 

「乃木さん、三ノ輪さん、鷲尾さん、次は勇太くんとの連携よ。ボールの数は二倍、三ノ輪さんか勇太くんのどちらかが当たったらやり直しよ」

 

「「「はい!」」」

 

「勇太くんは三ノ輪さんの後ろについて」

 

「はい、途中で銀ちゃんが当たりそうな時にリカバリーに入ってもいいですか?」

 

「いいわよ。ただし攻撃は禁止よ」

 

「ご要望通り一発でクリアしてみせますよ」

 

「出来るでしょうね。それじゃ、位置について。……スタート!」

 

 俺を入れて初の連携訓練が始まった。園子ちゃんと銀ちゃんの後ろを走っていく。いや、園子ちゃんへの負担デカ過ぎん? ボールが当たった後、ノータイムで次のボール当たってるんだけど。須美ちゃんもかなりの早撃ちしてるのに。これは、急いだ方が良いかもな。

 

「園子ちゃん、全力で走れるかい?」

 

「まだ……行けるんよ〜!」

 

「そっか、なら頼んで良いかい?」

 

「ラジャーなんよ〜!」

 

「銀ちゃん、園子ちゃんについて行って!」

 

「はいよ、兄ちゃん!」

 

「それじゃ、行くよ!」

 

 俺が立てた作戦は園子ちゃんに出来る限り全力で走ってもらって、その後を俺と銀ちゃんが追従する。簡単に言えば速攻を仕掛けたってことだな。須美ちゃんも意図を汲んだくれたようで園子ちゃんの邪魔になるボールを一つ、また一つと割っていく。

 

「ありがとう、園子ちゃん。行くよ、銀ちゃん!」

 

「りょーかい!」

 

 そう言って俺と銀ちゃんは跳ぶ。空中の俺たちに向かってボールが飛んでくる。俺と銀ちゃんは、ボールを空中で避け、ゴール地点まで到達した。

 

「出来るようになったんだね。すごいじゃん」

 

「へへっ、ぶっつけ本番だったけどね」

 

「土壇場で出来るっていうのはすごいことだよ。おめでとう」

 

「うん、ありがとう!」

 

「じゃあ、戻ろうか」

 

「うん!」

 

 銀ちゃん可愛いなぁ。笑顔が眩し過ぎるって。俺の教えてた動きも出来るようになったし、素晴らしいな。本当に。

 

「ただいまー!」

 

「ただいま戻りました」

 

「おかえりなんよ〜!」

 

「おかえりなさい、三ノ輪さん、兄さん」

 

「有言実行お疲れ様。この後は少し鍛錬をして、勉強をして今日は終わりにします」

 

「ハイハイ! 兄ちゃんの鍛錬見てみたいでーす!」

 

「確かに〜! わっしーはどう?」

 

「私も、見てみたいです!」

 

「だ、そうよ」

 

「良いよ。存分に見ていきなよ」

 

 砂浜で鍛錬するなら走り込みが一番なんだけど、銀ちゃん達が見てるからなぁ。よし、ここは一発派手なのを見せようかな。俺のオリジナル技を。……あれ、よく考えたら俺、教わったのを自分流に変えたからオリジナル技ばっかだな。まぁいいや。

 

「結城流格闘術 海割(うみわり)

 

 技名を口に出し、海に向かって拳を突き出す。

 

 あれ、こんなに威力高かったっけ? 海がしっかりと割れたねぇ……。割れたねぇ⁉︎中学生の頃より圧倒的に強くなってるなぁ。そういえばずっと海には来てなかったな。そりゃ成長したんだし強くもなるか。

 

「「「「…………」」」」

 

 絶句する四人。小学生三人はポカンとして、安芸さんは気絶してる……。ちょっと待って、気絶⁉︎まぁ、そうなるかぁ。とりあえず、宿まで運ぼうか……。無闇矢鱈に人に見せちゃ駄目そうだな。出来るだけ見せないようにしよう。

 

「えっと、三人とも。宿に、戻ろっか」

 

 俺はそう言い、苦笑を浮かべながら安芸さんをおんぶして宿に戻った。

 

 

 




技のネーミングセンスがなさすぎることと、合宿が長引きすぎなことが申し訳ないっす。
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