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合宿から数日、俺は三ノ輪家にお邪魔していた。理由は単純、銀ちゃんに誘われたからだ。そして今、俺は鉄男とゲームをしていた。全勝なう。
「にーちゃん強すぎだってー!」
「まぁ、ランキング一位だしね」
「え、一位?」
「そうだよ、ほら」
「うわ、ホントだ。すげー」
テレビに映るランキングを指して言うと、鉄男は純粋な感想を述べる。ランキングには1位:YUUKIと表記されている。俺のプレイヤーネームだ。ちなみに2位にはC.deepという俺の友人の名前がある。
「あ、ねーちゃん! 買い物はー⁉︎」
「今行くー!」
「お、それじゃあ鉄男、しっかりと勉強しろよ?」
「はーい、にーちゃんも気をつけて」
「うん、行ってきます」
鉄男が思い出したように言うと、銀ちゃんから返答が返ってくる。俺は鉄男に言葉を残して、玄関へ向かう。
「あら、勇太くん。もう帰り?」
「いえ、銀ちゃんと買い物へ行くんです」
「そうなのね、気をつけて」
「はい、行ってきます」
「兄ちゃんお待たせ! それじゃ、行ってきます! お母さん!」
「行こうか、銀ちゃん」
「了解!」
銀ちゃんのお母さんと少し言葉を交わしていると、すぐに銀ちゃんが来る。そして俺と銀ちゃんは家を出た。
「どうやら動くらしいわ。そのっち、後を追うわよ!」
「は〜い」
……須美ちゃんと園子ちゃんの小さい声が聞こえた。間違いなく尾行するつもりだろうなぁ。
◇◇◇
案の定尾行されて数分、俺は銀ちゃんと一緒に人助けに励んでいた。
色々な人の道案内をしたり、自転車を起こしたり、飼い主を伴わずに走ってくる犬を捕獲したりなどして、ようやくショッピングセンターイネスに着いた。
イネスに着いてからも人助けは続く。迷子の女の子のお母さんを探したり、子供二人の喧嘩の仲裁をしたりした。
「あっ!」
……今まさに新たな事件が発生した。女の人が買い物袋を落としてしまったために果物が辺りに散らばってしまい、急いで拾おうとしている。銀ちゃんも拾い始めている。俺はポケットからビニール袋をサッと取り出し、かなり遠くまで転がっていってしまった果物に狙いを定めて少しだけ走る。周りに人居ないからセーフっ!
「とりあえず全部拾えたかな?」
周りを見ても果物は落ちていない。俺はパンパンに詰まった袋を持って女の人のところへと向かう。するとそこには須美ちゃんと園子ちゃんも居て、女の人と談笑していた。
◇◇◇
それから少しして、フードコートで昼食を取ることになった。もちろんしっかりと奢った。兄貴ムーブを遂行することに成功!
「じゃあ、二人とも家の前から見てたっての⁉︎うえ〜……なんか恥ずかしいなそれ……」
「恥ずかしくなんかないよ。偉いよ〜」
「いつも遅れる理由はこれだったのね」
「言ってくれればいいのに〜」
「んー、それはなんか他の人のせいにしてるみたいで……、何があろうと遅れたのは自分の責任なわけだしさ」
え、偉。銀ちゃんめっちゃ偉いじゃん。は? 可愛いかよ。今まで黙ってお好み焼き食べてたけどもう我慢ならん。俺は銀ちゃんを撫で始める。
「偉いよ、銀ちゃん。あ、お好み焼き食べる?」
「食べる!」
「はい、あーん」
「あーん……ん、美味っ! 麺はもちもちで生地は柔らかくて……」
「お、モダン焼き気に入った?」
「気に入った気に入った!」
「それは良かった」
撫でられながらモダン焼きを頬張る銀ちゃん、可愛かったです。俺もモダン焼きを一口食べる。うん、やっぱり美味い。粉物は美味い。正義。
「昔からそういう体質なの?」
「ついてないことが多いんだー。ビンゴとか当たったことないもん……」
園子ちゃんの問いに答える銀ちゃん。苦労してるなぁ……。
「襲来かな?」
俺の呟きの直後に風鈴の音が鳴り響く。
「ほらな……日曜台無し……」
そして世界が光に包まれた。
◇◇◇
樹海の中に白菊と牡丹と薔薇の花弁が舞う。
「俺も変身しなきゃな」
スマホの画面中央のボタンをタップする。桜の花弁が俺の周りを渦を描くようにして吹き荒れる。右手を横薙ぎに振るうと、花弁たちが散り散りになり、俺は背部に桜が描かれた紺色の甚兵衛に身を包んでいた。
「来たわ……」
「ビジュアル系のルックスしてるなぁ」
「まずは私が、これで様子を見る!」
ビジュアル系……ビジュアル系? バーテックスはバンドマンだった……? 銀ちゃんの言葉について考えていると、須美ちゃんが弓を引く。
直後、激しい揺れが俺達を襲う。
「うわ、震度いくつくらいかな」
「なんだなんだ⁉︎」
「あの敵のせい〜⁉︎」
「く……!」
不味いな、須美ちゃんが焦ってる。とりあえずまずは落ち着かせないと。銀ちゃんと園子ちゃんが先に動いてくれたか。
「落ち着けって須美」
「三ノ輪さん……」
「私たちと一緒に倒そう〜!」
「合宿の成果を出す、そうだろ!」
「二人とも……」
「落ち着いたみたいで何よりだね。銀ちゃんと園子ちゃんが居るし、俺だって居るんだ。落ち着いていこう」
「兄さん……」
良い顔になったじゃん。落ち着きを取り戻して、余裕が出てきたかな。
……揺れが収まったってことは、来るな。
「ハッ!」
バーテックスが足をミサイルのように射出する。それに回し蹴りを合わせて攻撃を弾く。
「よ〜し、敵に近づくよ〜!」
「「了解!」」
敵に向かって動き出した瞬間、バーテックスは高く飛び上がる。……マジかぁ、だるいなぁ。
そしてゆったりとした動作で足をこちらに向けて撃ち出してくる。
「……上から来るよ! 退避!」
須美ちゃんが弓を射て、攻撃を試みるも弓では届かない。
「……制空権を取られた‼︎」
「降りてこいコラー!」
「何か……仕掛けてくる」
銀ちゃんの叫びに応じたのか、バーテックスは四つの足を合わせ、ドリルのようにして攻撃をしてきた。銀ちゃんが受け止めているけどそう長くは保たないだろう。不味いな、俺が少し動揺してる。落ち着け。
「げっ⁉︎ぐううう! 根性ー‼︎」
「ミノさん!」
「一分は持つ! 上の敵を!」
……よし、気合い入れろ、俺。
「銀ちゃん! 三十秒だけ耐えてくれ!」
「分かっ……た!」
「園子ちゃん、須美ちゃん、援護を頼むよ」
「分かったんよ〜!」
「……! はい!」
園子ちゃんは平気そうだけど、須美ちゃんはやっぱりアクシデントに弱いな。レスポンスが少し遅い。リーダーを園子ちゃんにしたのは英断かな。
「……それっ!」
俺は園子ちゃんの槍で作った階段を駆け上がる。そして、須美ちゃんが撃った矢で踏み切り、バーテックスの本体を弾き飛ばす為に回し蹴りを叩き込む。狙いは銀ちゃんを解放することで、狙い通り銀ちゃんを襲っていたドリルを退けることに成功した。
「もう一発、プレゼントだよっ!」
俺は回し蹴りを入れた後、勢いそのままに後ろ回し蹴りを繰り出す。バーテックスの一部分が抉れる。
「届けぇぇ!」
そして須美ちゃんが、園子ちゃんの槍から飛んで矢を射る。バーテックスはさらに体勢を崩し、落ちていく。
「ここから……出ていけ‼︎」
園子ちゃんが槍でバーテックスを穿つ。バーテックスの体には風穴が開いた。
「三倍にして返してやる! 釣りは取っとけぇぇぇ‼︎」
銀ちゃんの叫びと共に赤い光がもはや動くことすら出来なくなったバーテックスを切り刻む。
そして鎮花の儀が始まり、樹海は光に包まれた。
◇◇◇
「痛てて……」
「ミノさん大丈夫〜?」
「疲れたよ……。腰にくる戦いだった……」
「ああして攻撃を受け止めてくれたから私たちが攻め込めたんだよ。ありがとうね、ミノさん」
「そっちこそ凄かったじゃん」
「だって〜、ミノさんが一分持つって言ったんだから、一分は持つじゃない? それにおに〜ちゃんの指示があってのことだよ〜」
「あーあ……お腹すいた!」
「うどん食べてる途中だったもんね〜」
「ひぐっ……う……うう〜」
「えぇええっ⁉︎」
「ど、どうした須美‼︎どこか痛いのか⁉︎」
「違うの……私……、ごめんなさい……。次からは……はじめから息を合わせる……、頑張る……」
「ああ……、頑張ろうな!」
「はい、わっしー。ハンカチだよ〜」
「ありがとう……、そのっち……」
「……! もう一回言って、わっしー!」
「そ……そのっち……」
「アタシは⁉︎アタシは⁉︎」
「銀……」
「えっ⁉︎」
「〜〜銀っ!」
「! 嬉しいな‼︎なんかようやく須美とダチになれた気がする!」
「銀……。二人とも……ありがとう。私も……頑張るから」
「ああ! ……あれ、兄ちゃんがいない⁉︎」
「ホントだ〜。なんでだろ?」
「兄さん……何処に……」
◇◇◇
「……ここは何処だろう。景色的に丸亀市とかかな? ……なんで?」
なんで丸亀市? 本格的に謎だなぁ。
「まぁ、考えてても埒があかないしなぁ。帰るか」
三人も待ってることだろうし。早く帰って、遅くなったランチタイムを楽しもうかな。
ゆゆゆいがやりたいです…。ゆゆゆにもっと早く出会っていれば…!