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気がついたら4月も終わってしまう、俺は何をしていたんだ…?
「……なんで?」
部屋で寝ていたはずの俺は今、樹海にいた。さっきまで寝てたのに制服になってるところから夢の中なのは分かるけれど、また
「……動ける」
だが、どうやらいつもの夢とは違って動けるらしい。つまり銀ちゃんを助けることが出来る。そうと決まればスマホを手に取り……
「スマホがない!?」
変身出来ないのは不味いんじゃないか? ……いや、今重要なのは銀ちゃんたちがどこに居るのか、そして今無事なのかだ。
「探さなきゃ!」
俺は三人を探して走り出した。
◇◇◇
「どこにもいない……?」
樹海中を走り回って探したが、三人の姿はどこにも見当たらない。いつも戦っている大橋、色とりどりな根の下、壁の上、色々な所を探したけれど見つけられなかった。
「考えられる可能性は……」
一つ目は、既に戦いが終わっていた可能性。恐らくこれはないだろう。もしもそうなのであれば血痕の一つや二つ見つけられるはずだ。……見たくないけれど。
二つ目は、そもそもこの樹海に三人がいない可能性。どこを探しても見つからない、それはここに三人が存在しないからなんじゃないか。それに、例の悪夢だと思っていたけど、それを証明する根拠がない。
「どうしたものかなぁ……」
あと探していない場所は神樹様の根本くらいか。よし、行ってみよう。それでダメならまた考えればいい。そう考え、俺はまた走り出した。
神樹様の根本に着いたけど、特に何もないな。ぐるりと一周してみても何も見当たらない。三人の姿もないし、バーテックスもいない。まぁ、バーテックスがここに居たら不味いと思うけど。
「んー、よし。もう一回探しに行こう」
「待ってもらえるかな?」
伸びをして、もう一度三人を探しに行こうとした瞬間、後ろから声が聞こえた。それはここで聞こえる筈のない声、聞こえてはいけない声。そして、俺にとって聞き馴染みのある声に
……まるで友奈の声だった。
なんでここに友奈が、そんな考えが一瞬頭をよぎる。でもよく考えると、友奈の声より若干、ほんの少しだけ声が低い気がする。
「おーい、聞こえてるー?」
やっぱり友奈の声より低いな、ああ、友奈の声が聞きたくなってきた。それにしてもまずいぞこれは本っ当にまずい。友奈ロスが半端ない。会いたいなあ、もう二年以上会ってないんだもんな。久しぶりに会ったら何をしようかな、まずは銀ちゃん達を紹介するか。いや、その前にめっちゃ謝ろう。そうしよう。
「きーこーえーてーまーすーかー!? (爆音)」
「耳がっ!?」
「一回で返事しないからだよ」
「ごめんなさい」
右耳から聞こえる思考を止めさせる大音量の言葉。すっごく耳痛いし頭がぐわんぐわんするが、そうなった理由は俺が悪いことに間違いないので振り返り謝る。そこには、友奈のような柔らかく暖かな雰囲気を纏った友奈のそっくりさんが居た。
「別にあんまり気にしてないからいいよ」
「ありがとう。それで、君は?」
「私はユウナ。まぁ色々あって今は神樹と一緒に居るんだ」
そう言うと、ユウナと名乗った少女は笑顔を作る。……本当に友奈そっくりだ。多分見分けられる人は限られるだろうな。もちろん俺は余裕。
さて、切り替えていこう。情報を手に入れないことには何も考えられない。
「うん、分かった。ユウナちゃん……いくつか質問してもいいかな?」
「答えられる範囲でなら答えるよ」
「まず一つ目、この場所に俺以外の勇者は居る?」
「いいや、君だけしか居ないよ」
「……そっか。なら二つ目、君は結城友奈と関係がある?」
「あるね」
「どういう関係があるのかな?」
「すっごく長くなるから今は答えられないかな。でも、いつか必ず教えるよ」
「……三つ目、君は何者?」
「君たちで言うところのヒミコかな。すっごく昔の偉かった人なんだよ?」
「……ヒミコ?」
「ふーん、なるほど。間違いなく隠されちゃってるね」
ここまでのユウナちゃんへの質問から考えると、まずこの場所には俺とユウナちゃんだけしかいない。つまりあの夢じゃないことが確定した。そうなってくるとユウナちゃんの正体が気になるな。ヒミコ……、漢字を当てるなら日の巫女さんで日巫女とかかな……? 隠されたっていうのはどういうことだろう。
それに、友奈にそっくりな理由も気になる。今は教えてもらえないらしいからこれは一旦置いておこう。
「天と地、神と人。それぞれは決して相容れることはなかった。でも今はどうだい? 人々は神樹と共に生きている。君たち勇者なんて特に顕著じゃない?」
「……? まぁ確かにそうだね」
「さて結城勇太くん、バーテックスは何処からやってくる?」
「壁の外からだよね」
「正解。なら、バーテックスの正体は?」
「未知のウイルスから生まれた敵性存在って聞いてるよ」
ユウナちゃんの言葉、一つ目は何を言っているのかあまり分からなかった。二つ目は勇者の常識だからすぐに答えられた。三つ目も同じ。そう思って答えたけど、ユウナちゃんは首を横に振る。
「君は知ってるでしょ? 隠蔽、改竄が大好きな組織を」
「……まさか、バーテックスはウイルスから生まれた訳じゃない?」
「そのまさかだよ、少し時期尚早かも知れないけど、君は知っておくべきだと思う。こっち来て」
ユウナちゃんはそう言うと、指を鳴らす。すると神樹様の根元に居た筈なのにいつも戦っている大橋に移動していた。そしてユウナちゃんは歩き出す。
「この先には何がある? 神樹の作った壁があるよね。その先には何がある?」
「……ウイルスで滅びた日本がある」
「そういう風に教わったんだね。でも、それはとある組織の流したデマなんだよ。ほら、確かめてみると良いよ。君が、君たちが見ていた世界の本当の姿を」
ユウナちゃんがまた指を鳴らす。今度は壁の上に立っていた。俺は壁の外に出て、信じられない光景を目の当たりにした。
「嘘、だろ……」
「残念ながら本当だよ」
嘘だと言ってほしかった。けれどユウナちゃんは本当だと告げる。壁の外は真っ赤な炎に覆い尽くされ、かつての日本の姿なんて何処にも見えなかった。
突然俺の身体が光り始める。きっとこの樹海から追い出されるのだろう。なんとなく、そんな予感がした。
「はぁ……時間かぁ。結城勇太くん、今日のところはこの辺りでお開きだよ」
「……うん、分かった。次に会う時までに聞きたいことを考えるとするよ。ありがとう、またね。ユウナちゃん」
俺はそう言って、意識を手放した。
◇◇◇
「思ってた以上に強いね。彼は」
私は
「流石は、私の因子を全部継承した勇者だね」
誰に聞かせる訳でもなく、ただ話し続ける。
「次に会うのはいつになるんだろう」
私は待ち続ける。彼の力があれば、きっと……。
「……それじゃあ私も寝るとするかな。おやすみ、神樹。おやすみ、勇太くん」
神樹の中に戻り、眠気が私を襲う。睡魔に身を委ねようと思った時、ふと思い出した。
「……今日の出来事、覚えていてほしいな」
今度こそ睡魔に身を委ね、ゆっくりと意識を失っていった。