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第二話の一部を修正しました。勇太君の年齢が少し変わりました。
春信の家へお邪魔した数日後、俺はおそらく御役目の何かであろう出来事に遭遇した。……それも授業中に。大学受験の年にこの仕打ちは酷くないか? 心の中で悪態をつく俺。ま、それは置いといて、初の御役目が今、始まろうとしている。
「えっと、確か、このアプリを開いて、変身すれば良いんだよな?」
俺はSNSアプリ【NARUKO】を立ち上げ、画面に表示された桜の樹が描かれた丸いボタンをタップし、祝詞を唱える。すると俺の周りに桜の花弁の竜巻が発生した。それに覆い尽くされ、何も見えなくなる。そして花弁がなくなって変身が終わった。俺の現在の姿は紺色の甚兵衛を着ている。おい、桜要素どこ行った? 見える範囲には無いんだが? まぁいいか、それにしても、
「俺、武器無し?」
俺には武器が無いようだった。どうやら素手で殴るか、下駄で蹴るかしかないらしい。正直言って信じられない。普通こういうのって武器あるでしょ。勇者だよ? 勇者。この際剣とか贅沢は言わないよ。もう拳で戦うのは受け入れるよ。ならさ、ガントレットくらい支給してよ。流石の結城武術でも素手はきついよ。そんなことを考えていたら、どうやらお出ましのようだ。大橋の向こうからゆっくりとこちらへ向かって来る気持ち悪いフォルムをした化け物はバーテックス。俺の敵である。よし、なんか水の玉みたいだから水玉バーテックスと名付けよう。
「……とりあえず大橋のところに行かないとな」
そう独り言を漏らした俺は、勇者システムとやらで途轍もなく引き上げられた身体能力をフルに活用し、水玉バーテックスへ飛んで行く。……どうやら本当に身体能力が引き上げられているようだ。左足で思い切り踏み切って飛んだ俺は、水玉バーテックスへと物理的に突撃していた。
「いや、能力上がりすぎだろぉぉぉぉ! とりあえず食らえ!」
叫びながら突撃(物理)をした俺は水玉バーテックスへパンチを繰り出す。ここで俺は気づいてしまった。あれ、俺の攻撃って流体の相手に効かなくね? 水玉を殴った結果は、俺の腕が水玉の中に入っただけだった。ちなみに左腕で殴ったんですけど、抜けなくなりました☆。さて、どうするか。考えながらとりあえず殴り続ける俺。腕が抜けなくなる前に引くことを頑張りました。その直後、自身の身体とほとんど変わらないくらいの大きさをした双斧を持った少女が水玉を切る。
「浅い! お兄さん! 大丈夫⁉︎」
「おかげさまで! 助かった、ありがとう!」
少女が水玉を切ったところから腕を抜くことに成功した俺は、少女と共に地面に降りた。俺は双斧の少女に感謝を伝える。水を殴っても意味ないし、どうするか……。
「くっそ〜〜なんだよソレ! 再生とかずるいだろ!」
「ミノさん逃げて!」
え、再生まですんの? マジで俺何もできないじゃん。そんなことを考え悶えていると、水玉バーテックスがなかなかヤバそうな水のビームを放ってきた。狙いはもちろん双斧の少女。俺は双斧の少女の前に立ち、水のビームを蹴る。……相殺出来ちまったぜ。後ろからきた二人の少女と双斧の少女に若干引かれている気がするが、この際キニシナーイ。
「……身体能力上がりすぎじゃね? 無傷なんだが?」
「大丈夫なの……?」
「皮膚が痛え」
「大丈夫そうですね……」
引きながらも心配してくれる心優しい少女たち。え、めっちゃええ子らや。こんな子らを御役目に選ぶなんて、伐採したろうかな。そんな思考は赤い双斧の少女によって止められた。
「てか、お兄さんも勇者なの?」
「ああ、そうだよ。ただ、まともな説明は受けてないから帰ったら大赦に説明責任を果たせって言ってやる」
「苦労してるんだ……ですね」
敬語慣れてなさそうだなー。そんなことを考えながら、至極真っ当な疑問に答える俺。マジ大赦無能。多分あの組織は上が腐ってるだけなんだよな。根っこが腐ってるからダメなんだよ。……上が腐ってるのに根っことはこれ如何に。俺は脳内で大爆笑をしていたが、白い弓を持つ少女の言葉で一気に現実へと戻ってきた。
「侵食が始まってる……! とにかく動きを止めなくちゃ!」
「弓の少女、お兄さんに任せときな。斧ガール、一緒に特攻しない?」
「え、でもお兄さん、攻撃効かないんじゃ……」
「相手水だから、外側からの打撃には強いだろうね。なら、内側から衝撃を与えて壊せばいいんだ。掌底なんかだと、衝撃を伝えやすいからね」
目に悪い樹海の色がじわじわと色を失い灰色になっていく。確かこの現象は現実世界に影響が出るんだよな。それも、災害とか事故って形で。趣味悪すぎでは? そんな状況を目にした弓の少女の顔には、焦燥が見てとれた。あー、水相手に弓はキツいもんな。……よし、近接二人で攻めるのが効率いいかな。そう思い言葉を発する。すると、さっきの醜態を考えるとこれまた至極真っ当な疑問をバツが悪そうに斧の少女が告げる。そこは武器を持たない俺、昔の人が言い残したという『武器が無いなら、君が泣くまで、殴るのをっ、やめないっ!』という言葉を心の中でめちゃくちゃにリフレインさせながら対抗策を述べる。
「なるほど〜! 理解したんよ〜。すみすけ、ミノさんとこの人がバーテックスに向かって行ったら、私たちは援護に回るよ〜」
「え、ええ。わかったわ」
「そんじゃ、さっくりと終わらせますか!」
「そうだね。行こうか、斧ガール」
金髪の少女は頭が良いのだろう。咄嗟の判断力が高いタイプだ。少女たちのチームだったらリーダーとなるべき存在だと思う。そしてこのタイプは、いざという時に頼りになるタイプだ。俺の言いたいことを一瞬で理解し、弓の少女に伝えてくれる。ありがてぇ。そこで思考を打ち切り、斧の少女にそろそろ突撃をするかと伝える。
「あ、あたし三ノ輪銀っていいます」
「私は乃木園子っていうんよ〜」
「私は鷲尾須美です」
「OK、銀ちゃんに園子ちゃんに須美ちゃんね。あ、俺は高嶋勇太。よろしく! よし、それじゃあ銀ちゃん、行くぞ!」
「はい!」
俺たちは水玉に向かって走り、跳ぶ。その刹那、水玉バーテックスから射出された二つの水の塊が俺と銀ちゃんの頭を包み込んだ。無論、呼吸は出来なくなる。しかもこの水の塊、厄介なことに弾力がありやがる。とりあえず殴ってみようかと思ったが、そんな考えは頭を包む水を飲み干すという銀ちゃんの行動でどっかに吹っ飛んでいった。まぁ、そんなのを見せられたら、俺もやるしかないだろぉ! と、いうわけで飲んだ訳だが、
「まじゅい……」
「まっっっっっっっず」
「お味は?」
「最初ソーダで途中からウーロン茶……」
「俺はその後にメロンソーダと、スポドリと、コーヒーを混ぜたようなのが口いっぱいに広がってきたよ……」
バーテックス印のお水を飲んだ俺と銀ちゃんは、同じ感想を抱いた。あれ、俺の味わったのだいぶ酷くない? 味の想像が出来てしまったのか、三人の少女は顔を顰めたあと、俺を優しい目で見つめてきた。それにしても美少女だなぁ。てか男の勇者はおらんの? 神樹様ロリコン疑惑ができたなぁ。
「ちきしょーめ、せめて普通の天然水の味であれよ。マジでしばく」
「怒るとこそこなんだ……」
「よし、銀ちゃん。俺についてきて。俺がまず突っ込む、その後に銀ちゃんも来る、そして二人で攻める。これが理想的な動き。その時に二人には援護を頼みたい。須美ちゃんは水玉に矢を当ててくれ。園子ちゃんは基本的には須美ちゃんの護衛を、そしてもし銀ちゃんが吹き飛ばされた時のリカバリーを頼む」
「わかりました」
「分かったんよ〜」
「了解です!」
「うし、それじゃ行くぞ!」
「「はい!」」
「は〜い!」
俺と銀ちゃんがバーテックスに向かって跳躍する。それを阻止しようとバーテックスは水の玉を撃ってくる。が、須美ちゃんがほとんど撃ち落とす。偶に撃ち漏らしたものは俺が殴って消す。バーテックスも不味いと思ったのか、さっきの水ビームを撃ってくる。現在俺たちは空中にいる。つまりさっきの蹴りでの相殺は出来ない。申し訳なく思いつつ、俺は銀ちゃんの腕を掴み、ビームより上にバーテックスに向けて投げる。驚いた顔をこちらに向ける銀ちゃんに俺は笑みを浮かべ、銀ちゃんを投げた反動を利用して、水ビームに蹴りを当てて相殺する。
「お兄さん⁉︎」
「銀ちゃん! やれ!」
勢いを失い、落ちていく俺を心配する銀ちゃん。その目には俺を助けるべきかバーテックスを倒すべきかという迷いが浮かんでいた。だけどこれが最大のチャンスだ。だから俺は銀ちゃんに向かって叫ぶ。彼女は目を閉じ、そして開眼した。その目に迷いはなく、バーテックスを容赦なく切り刻んでいった。