結城勇太は勇者である   作:モンハン太郎ゆゆゆスキー

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第六話 結城勇太、初の御役目後。

 須美ちゃん達三人と別れた後、学校へ向かい走った俺は学校に着き教室の前で立ち止まった。ゴリゴリに授業中の教室へ突撃するのは思いの外緊張するもんだなぁ。

 

「失礼しまーす……」

 

 意を決して教室に入ると、扉のガラリという音が鳴ると同時にクラスメイトがこちらを見てきた。クラスメイトの視線が刺さる。当然担任の視線も刺さる。視線を気にしないようにし、俺は自分の席に歩いて行く。そして席に着いたとき教室内の全員が一言、

 

せーの、御役目、ご苦労様!」

 

「……ふぉ?」

 

 俺の口から出た声は、自分が今まで出したことのないような情けない声だった。殆ど話したことのないクラスメイト達がこんなに暖かい声をかけてくれるとは思わなかった。

 

 その後、その授業は俺への質問会兼親睦会のようになった。隣のクラスで授業をしていた教師からうるさいと苦情が来たが、その教師も俺を見るとクラスの人達を呼び、質問会兼親睦会の参加者が増えた。そんなことが何回か繰り返されるうちに、ウチの高校の三年生が全員集合していた。廊下に。

 

 それから数分後、どうやら俺は人気が高かったらしい。御役目に選ばれたという珍しさや、部活の手伝いとかをしてきたからだろうか。そういえば中学校に俺の立ち上げた部活は残っているのだろうか。……ないだろうな。ボランティア活動をしたり、他の部活動の手伝いをするだけの部活だからな。え、部員? 俺だけですけど? 

 

 閑話休題(それはさておき)。まさか全校生徒プラス教師陣全員が体育館に集められるとは思わなかった。ちなみに俺は体育館のステージに立たされ、めっちゃ質問された。そして質問が落ち着いたとき、校長がステージに上がり、「この日を、我が校の御役目記念日とし、休みとする」と言った。そして、全校レク大会が唐突に開催された。クラス対抗ドッヂボールでは、決勝は俺のクラスと春信のクラスで争った。最後まで残っていたのは俺と春信だった。だがそこは俺、勇者としての力を見せ、春信を倒し、クラスを優勝へと導いた。その後、空手部、柔道部、剣道部などの武道系部活の主将達と手合せをした。もちろん勝った。結城武術はオールマイティーですごいんだなと思った。

 

 そんなこんなで楽しい時は流れ、俺は全校生徒の憧れとなったらしい。模範として頑張れと校長に言われ、頑張ります! と答えると、盛大に拍手が起きた。そしてレク大会も午前中で終了したため解散し、その場に残ったのは俺と春信の二人だった。

 

「……高校ってこんな感じで良いのか?」

 

「何を呟いてんだ? それにしても、いつも通り超人だな、お前は」

 

「……言うな、人間卒業疑惑が俺の中で急上昇してるんだ。つーかお前も大概だろ」

 

 人間は卒業したくないんだがなぁ。いや、御役目をやるんだから卒業しといた方が良いのか? ……気にしたら負けかな! よし、俺はもうキニシナーイ。

 てか最近は春信も俺と一緒に稽古をしているから春信も卒業しかけではあるんだよ。つまり、お前も超人になるんだよ! 

 

「いやー、勇太さんには敵わないっすわー」

 

「そりゃそうだ。稽古してる期間が違うからな。つーかこれで負けたらメンタル保たんわ」

 

「まぁ、それはその通りだな。……なぁ、御役目って何をやるんだ?」

 

「だから言えないって言ってんだろー」

 

 春信が真剣な顔になって聞いてくる。とりあえず御役目については大赦から話すなって言われてるし、親友でも教えるわけにはいかん。なんなら知らない方が絶対に良い。そう思い、断る。

 

「ちぇっ、俺には教えてくれても良いじゃねえかよ」

 

「ダメなもんはダメだ」

 

「大赦に聞いてみるか」

 

「絶対に無駄だと思うぞ。教えてくれるわけがない」

 

「そこまで⁉︎大赦に就職しようかなぁ」

 

「悪いことは言わん。やめとけ」

 

 さっきまでの真剣さのなくなった表情でわざとらしい下手な舌打ちを披露しながらまだ聞いてくる春信。やっぱり断る俺。大赦に聞くって、その大赦が秘匿してるんですがー? 

 

 御役目の内容を知るためだけに大赦に就職しようかなとか言い出す春信を、俺は真顔で止める。大赦ってなんかきな臭いんだよな。いや、これマジで。

 

「そうか、それは残念。んじゃそろそろ帰るか?」

 

「そうだな。……あ、イネスのゲーセンでも行かね?」

 

「たまにはアリだな」

 

「よし、決定だな。んじゃ、行こうぜ!」

 

「あぁ、そうだな!」

 

 御役目の話しが終わり、内心安堵する俺に向かい、春信は帰るかどうかを聞く。ただ帰るのはつまらないからゲーセンで遊ぼうと提案する俺。快諾する春信。

 

 そして俺達は駄弁りながらイネスのゲーセンに向かった。

 

 ◇◇◇

 

ガンッ! ガンッ! 

 

 軽い物が強く打ちつけられる音が鳴り響く。

 

「やるじゃねーか、春信……ッ!」

 

「お褒めに預かり光栄だ……なッ!」

 

 激しめのラリーが白熱する。そして春信がパックを止める。俺と春信はそれぞれが温まったことを確認し、互いに本気を出すと宣言する。

 

「そんじゃあそろそろ」

 

「ここからは」

 

「「本気でいこうか」」

 

 先程よりも音が大きくなり、音の鳴る感覚も短くなる。ギャラリーが俺と春信を囲む。いつしか大勢のギャラリーが集まり俺達のバトルを見ていた。

 

「そらッ!」

 

「ぐっ……!」

 

 春信の集中が切れてきた。さっきまでより動きが悪い。対する俺はまだまだ余裕。何が言いたいかというと、チャンスということだ。

 

「そこだっ!」

 

「マジか⁉︎」

 

 一瞬の隙をついてパックをゴールへ叩き込む。それと同時に、ゲーム終了のホイッスルの音が鳴り響く。一瞬の静寂が訪れ、ギャラリー達は瞬く間に沸き上がり、口々に労いの言葉を言ってきた。そしてギャラリー達は、自分達のやっていたゲームに戻って行った。

 

「くっ……、負けた……!」

 

「集中力が足りんなぁ。動きは良いけどな」

 

「それは課題だなー。それにしてもお前に武術教えてもらってから、日に日に人間卒業に近づいてる気がするんだよな」

 

「人間卒業って言うな。でもそこまで来たか。割と早い方か?」

 

「どういうことだよ」

 

「稽古の強度、ワンランクアップってことだ」

 

「……お手柔らかに頼むわ」

 

「そりゃ無理だ。諦めろ」

 

「うわァァァァァァァァァァァァ!」

 

 稽古がキツくなることを嘆く親友。稽古の強度を上げるのにお手柔らかにするのは無理に決まってるだろうに。

 

 ◇◇◇

 

 そんなこんなで時は過ぎ、お昼時となった。フードコートに着き、俺は明太釜玉うどんを、春信は煮干しうどんを頼んだ。

 

「あ〜、水うめえ」

 

「それな」

 

 白熱したエアホッケーバトルの後に身体に残る心地良い熱を、キンキンに冷えた水を身体に流し込むことで急速に冷やす。風呂上がりに冷たい水を飲むのと同じような感じだ。水うめえ。

 

「そういえばお前、ずっとあのアスレチックで鍛えてたのか?」

 

「あぁ、だってあそこ山じゃん」

 

「だから高低差がキツいんだけどなぁ!」

 

「舗装されたそこらの道よりもロードワークに向いてるだろ?」

 

「遠くないか?」

 

「鍛えられるから良いじゃん」

 

「なんでそんなに鍛えてんだよ……」

 

「強くなっといて損はないからな」

 

「……まぁ、分からんことはないけどさ」

 

 稽古場所について文句を言う春信。強くなるにはかなり適した場所なんだがなぁ……。まぁ、遠いけどな。

 そこで呼び出しベルがそこそこの音量で鳴る。

 

「取りに行こうぜ」

 

「りょーかい」

 

 フードコートのうどん屋からうどんを受け取り、席に戻って座るとすぐに食べ始める。もちろんいただきますは忘れない。うどんうめえ。

 

「そういえば、最近夏凛ちゃんとはどうなん?」

 

「仲良しこよしでやれてるよ。……まぁ、その、なんだ。ありがとな」

 

「……どういたしまして」

 

 唐突に頭に浮かんだ疑問を春信に聞く。帰って来た答えはめちゃくちゃに良い答えだった。そして春信に感謝を伝えられ、少し照れる。その直後、煮干シスコン春信がひょっこりと顔を出した。

 

「なぁ、勇太。お前も妹を持つ者だろ? 存分に語り合おうじゃないか。写真見せろー!」

 

「写真?」

 

「そう、写真だ!」

 

「財布財布っと……ホレ、妹の写真」

 

「おー、可愛いな!」

 

「だろ? そのうえ優しいぞ。名前は結城友奈っていうんだ。夏凛と同い年だぞ」

 

「へぇー、じゃあどっかで会うかもしれないな」

 

「讃州市に来れば会えると思うぞ」

 

「讃州市か、割と遠いなぁ」

 

「……まぁそうだな。んっ、ご馳走様でした」

 

「食うの早くね⁉︎」

 

「今日は遅い方だぞ?」

 

「喉も超人かよ……」

 

 ◇◇◇数分後◇◇◇

 

「ご馳走様でした。待たせて悪かったな」

 

「いや、別にそんな待ってないからな」

 

「あ、そう? なら、妹談義をしようじゃないか」

 

「シスコン過ぎるだろ」

 

「最大級の褒め言葉をどうもありがとう」

 

「あー……手遅れか」

 

 どうやら煮干シスコン春信が姿を現したようだ。春信はシスコン過ぎるなぁ。そう思っていると、

 

「お前も大概だぞ?」

 

「は?」

 

 俺の思考が止められる言葉を言われた。

 

 いやいやいや俺はシスコンじゃないただ妹が好きなだけだだってあんなに可愛くて良い子なんだもん好きにならない訳がないだろ友奈はマジで天使なんだよお前も一回会ってみろ俺の考えてることが絶対に分かるからあー久しぶりに会いたいけど讃州市に行く暇が無い受験めなくなってしまえ。

 

 そんなちょーっと危ない感じの思考は春信の言葉によって打ち切られた。

 

「んじゃ、俺からな! 最近夏凛ちゃんがさ〜、俺の真似して煮干し食べ始めたんだよ〜! 可愛くね?」

 

「おー、本当に仲良さそうでなにより」

 

 妹が自分の真似をする、だと? なんて幸せな光景なんだ。つーか本当に仲良くなってんな。そして春信は俺の妹エピソードを聞いてくる。

 

「仲良いぜ〜! で? お前の妹の話は?」

 

「とりあえずいつも持ってるんだけど、これが昔一緒に作った押し花」

 

 俺はそう言って押し花を取り出す。すると春信は感心したように言う。

 

「すごい綺麗だな。手先器用なのか」

 

「まぁな。あ、一枚いるか?」

 

「え、もらって良いのか?」

 

 当たり前だろ。渡したくない奴には言わんし、親友だしな。

 

「春信君、君には八重桜の押し花を贈呈しよう」

 

「ありがたく頂戴するわ。お前が持ってるやつ八重桜しかないけどな」

 

「八重桜って綺麗じゃん?」

 

「それは分かるわ」

 

 押し花を贈呈した後、少し話しをしていると春信の携帯が震える。

 

「ん? お前携帯鳴ってね?」

 

「え、マジだ。親父から電話だ。もしもし? え? ……ん、分かった。それじゃ。悪い、今日は帰るわ」

 

「ありゃ、残念。んじゃ、気をつけて帰れよ。俺はゲーセンのランキングをとりあえず一位になっとくから」

 

「本当にやりそうだからなんともいえないな……。んじゃ、また明日!」

 

「おう、また明日」

 

 俺は春信に別れを告げ、一人になった。

 

「さて、何をしようか」

 

 ここはイネスのゲーセンだ。広く、沢山の種類のゲームがある。なら、やることは一つしかないだろう。

 

「全制覇といきますか」

 

 そして俺は一つ一つランキングの一位を奪っていった。

 

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