この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:サイデリア

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カズマ「転生したら世紀末だったって、つまり地獄に堕ちたのと大差ないんじゃ……」
アクア「なに言ってるのよ。地獄にだって秩序はあるわ。ポストアポカリプスと一緒にしないで」
カズマ「地獄以下ってか!?」


第十話 エスケープ・フロム・ジ・シャーク

 レナをピックアップしてすぐ、カズマはアクセル全開でエルニニョの防衛網を一気に抜き去った。もう一台のグラップルタンクが動き出した時にはもう、エルニニョは遥か後方だ。

 リアガラス(元がワゴン車なので……)から追跡者がいないことを確認していたアクアが、安全を確認すると助手席まで移動してきた。

 

「ふー。どうにか撒けたみたいよ。いやー、私もこんな格好した甲斐があったわねー」

「…………」

「ちょっと、カズマさ〜ん? 女神様がバニースーツなんて格好してるのに、特に言うことはないわけ〜? それとも童貞ヒキニートには刺激が――」

「悪い、アクア。運転に集中したいから後にしてくれ」

「アッハイ」

 

 いつになく真剣なカズマにいつものリアクションは望めないので、自分で自分の手当をしているレナの隣に移動した。

 単独で十数人から二十人以上もの兵士を相手取ったレナは、致命傷こそ避けてはいたが細かい傷があちこちにある。

 

「彼氏に袖にされちゃった?」

 

 イタズラっぽくニヤニヤしているレナに、アクアは「ナイナイ」と手を振って否定する。

 

「いや、彼氏でもなんでもないから。成り行きで保護者みたいになっただけよ」

「成り行きね。アタシとマリアみたいなもんか」

「マリアって、あの赤い髪の? あなたのお母さんみたいな人だったって」

 

 アクアも少しだが、不死身の女ソルジャーと呼ばれたマリアの戦いと、その最期を目の当たりにしている。

 マリアは襲撃の日、テッド・ブロイラーの炎からレナを庇い、彼女に覆いかぶさるように亡くなっていた。その甲斐あってレナも全身に大火傷を負いながらも一命を取り留めたのだ。

 マリアを含めて、あの戦いで討ち死にしたハンター達はマドの町の片隅に埋葬されている。

 

 包帯をテープで固定したレナは、ようやく一息吐いて固くてゴツゴツしたシートに深く座り直した。

 

「マリアはお母さんの知り合いだったんだ。どういう関係なのかは知らないけど、生き方も戦い方も全部マリアが教えてくれたの」

「そう。……辛い?」

 

 レナは少しだけ考えて、首を振った。

 

「確かに悲しいし、悔しいけど、アタシは生きてるから」

「そう……」

「それにマリアだけじゃない、世界にはまだまだあなたやイリットみたいな美女や美少女がいるんだもの! この世界ではね、どれだけ多くの女の子と関係を持ったか! どれだけ親密になったかが人生の値打ちを決めるんだから!!」

「おいコラ、レズビッチ」

 

 せっかくのしんみりした気分が台無しだ。いつまでもメソメソしているよりは健康的かもしれないが。どうやらこのレナという少女、女神の感性を超えてタフであるらしい。

 レナは早速アクアとの距離を詰めて、白い指を頬に這わせてきた。

 

「それよりアクア。カズマと何もないなら、アタシと何か起こさない? 二人っきりで」

「ひぇ……あの、すみません。私、ノーマルですので……」

 

 にじり寄ってくるレナから車内ギリギリまで下がるアクアだった。

 

「あーっ!!」

 

 その時だ。銃座に着いていためぐみんが、血相を変えて車内に叫んだ。

 

「カズマ! この方向はダメです!! スナザメのナワバリに入っています!!」

「えっ!?」

「ん?」

「……あ」

 

 タイミングよく、クルマが空中に跳ねるほどの地響きがほとばしる。クルマのすぐ真横の砂地が弾け飛び、複数の眼球を持った巨大ザメが姿を現した。

 砂の海を泳ぐサメなので、スナザメ。そのものズバリなネーミングだが、こいつに殺られた犠牲者は数知れず。トレーダーもこいつを避けて砂漠を大回りしなければならないほど警戒している。

 ハンターオフィスから賞金を掛けられたWANTEDモンスター(賞金首)で、金額は2000Gにも及ぶ。

 

「なにやってんのよカズマさぁぁぁぁ〜ん!?」

「すんませーん!! 運転するのに精一杯でしたぁーっ!!」

 

 カズマだってマドの町のハンターオフィスで存在は知っていたが、うっかりしていた。

 レナが即座に銃座へ駆け上った。

 

「主砲は使える?」

 

 訊かれためぐみんは、お通夜のような表情で首を振った。

 

「28ミリ砲が積んでありますけど、弾がありません! エルニニョでバリケードをふっ飛ばした一発で終わりです……」

「なんてこった……機銃だけで相手を出来るタマじゃないっつうの!」

 

 足を止めて戦うのは自殺行為か。ならば方法は一つだ。

 

「カズマ!!」

「分かってる! フルスロットルでエスケープだ!!」

 

 カズマもとっくに目一杯アクセルを踏み込んでいたが、悲しいかな移動速度はスナザメがわずかに速かった。

 

「うわっと!?」

 

 巨大な口が噛み付いてくるのを、紙一重のハンドル捌きでギリギリ回避した。マ○オカートで鍛えた腕前が早速活きている。

 しかし何度も避けてはいられない。ただ逃げるだけでは、砂漠を抜ける前に追いつかれる。

 迫りくる脅威に、めぐみんが固く閉じていた拳を深呼吸とともに開く。

 

「……レナさん、でしたっけ。機銃を頼みます!」

「どうする気?」

「私はアーチストですよ? 突貫工事で砲弾を作ります!」

「え、マジ?」

 

 めぐみんは大真面目だった。レナに答えるが早いか後部座席に移動し、手持ちの数少ない材料やクルマに積まれていたなけなしのパーツを集め、本当に砲弾ゲージツに着手する。

 

「やるっきゃないか。カズマァ!」

「分かってる!! レナは機銃で牽制してくれ!! めぐみんが完成させるまで逃げ切ってやろうじゃねえか!!」

 

 カズマがヤケクソ気味にハンドルを握ったのを見届け、レナも銃座に着いて照準をスナザメに合わせた。

 そして現状で特にやることがない女神(ポチ)は、大人しく座って全員の無事を祈るのだった。




 28ミリ砲という主砲はゲームには存在せず、最弱の35ミリ砲未満の攻撃力ということで設定しました。
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