めぐみん「声と口癖以外が違う人になってますよ!?」
アクア「私、さすがにホルマジオなんて転生させてないわよ!?」
第十三話 始動、賞金稼ぎ!
「できたぞぉぉぉぉーっ!! 完成じゃぁぁぁぁぁぁ!!」
ちょっと心配になるナイル老人の絶叫を産声代わりとして、ガルシアのバギーは生まれ変わった。
というより、バギーというのは本来はオフロード走行のために軽量化させた車両の俗称だ。しかし今のコイツは頑丈なフレームにガトリングガン二門、トランク部分に拾ってきた48ミリ主砲(☆☆☆)が搭載された、立派な戦車である。タイヤも金属製のノーパンクタイヤという、訳の分からない代物だ。
運転にも鹵獲したグラップルタンクと元から搭載されていたCユニットを並列させて搭載し、運転手一人いれば全ての戦闘能力が発揮できる。
直接組み立てを行ったカズマにも、どうしてこんな道路交通法が残っていたら絶対に走らせられないゲテモノバギーが完成したのか、まるで理解できない。
「まあ及第点ですね。パーツが限られているのでポテンシャルを活かしきれませんでした」
と語るめぐみんは、本当ならもっと馬力のあるエンジンで大型の主砲を運用したかったようだ。しかしマドの町やエルニニョで手に入った資材では、満足いくところまでいかなかった。
今後の改造次第ではまだまだ伸びしろがあるとも言えるが、行き着く先はどんな珍兵器だろうか。
そして、このバギーを譲り受けたレナはというと?
「いいわね、これ! すっっっっっごく良い!! GREAT! Fantastic!!」
エンジンを吹かして変なテンションになるぐらいには気に入っていた。
「実に素敵。いい仕事してくれたわ♪ ありがと、ナイルさん。カズマとめぐみんも」
「ほっほーぅ。気に入ってくれたようでなによりじゃわい」
レナの反応に満足したようで、ナイル老人はヒゲを撫でながら大きなアクビをした。
「久し振りの大仕事じゃった。さすがにくたびれたわい」
「ふっふっふ。ナイルさんはゆっくり休んでいてください。試運転には私とカズマで同行しますので」
「そうさせてもらうかの。ふぁ〜ぁ」
めぐみんに後を託して、ナイル老人はガレージ二階の居住区へ戻った。
彼を見送った後、カズマはめぐみんに振り向いた。
「試運転って?」
「まだ慣らし運転しかしていないでしょう? 実際に外へ出て賞金首を狩ってくるんですよ」
「ああ、そういえば武装面の実戦テストってまだ……あの〜、めぐみんさん。賞金首ってひょっとして……」
「当然、あのサメヤローです! リベンジですよ、リベンジ!」
両拳を握っためぐみんは、紅い瞳に闘志を滾らせていた。
レナを見れば、彼女も殺ル気マンマンだ。
そこにカズマと、ついでにアクアが同行するのは決定事項であるらしい。
「あ。忘れるところでした。レナ、これをどうぞ」
何かを言いかけるカズマを余所に、めぐみんは大きめのゴーグルをレナに手渡した。受け取ったレナが、大きな眼を目一杯見開いた。
「これってマリアの! な、直ったの!?」
「はい。あなたのお母様の私物でしたよね。燃え残っていたのを、バギーの合間に直せました。運が良かったですね、私がiゴーグルユーザーで」
めぐみんが右目の眼帯型ゴーグルに、人差し指と中指を当てる気取ったポーズを決めた。ドヤ顔がいつになく凛々しく見える。iゴーグルを愛しげに抱きしめるレナとは対象的な表情だ。
だが直後、レナは一転して精悍な表情でiゴーグルを装着した。スイッチを入れると、非常に小さな駆動音がしてレンズに多種多様の情報が表示されていく。
「内部データは残念ながら初期化されています。まずはユーザー登録からです」
「どうすればいい?」
「音声認識でできますよ。詳しくはヘルプをどうぞ」
助手席の窓から内側に身を乗り出しためぐみんから説明を受けて、レナは登録を進めていく。
その間、カズマは手持ち無沙汰になってはいたが、助手席窓から突き出してフリフリ左右に揺れるめぐみんの小さなお尻を眺めているうちに、初期起動手順は終わったらしい。
「これでゴーグルはあなたのものです、レナさん」
「ええ。ありがと、めぐみん。お礼にキスしてあげる♡」
「すみません、私ノーマルなので」
抱きつこうとするレナの腕からするりと逃れて、めぐみんは再びカズマの元へ戻ってきた。
「では出発しましょう――? どうして顔が赤いんですか?」
「ほっとけ。じゃあアクアを呼んでくる」
まさか後ろ姿に見惚れていたとは言えず、カズマはアクアが水浴び中の貯水湖(強酸性)へ走っていった。
もちろんアクアは全力で嫌がったが、拒否してもカズマから離れれば強制的に量子ワープするし、そうなれば車外から生身でスナザメに応戦することになると脅したら、泣き叫びながらも付いてきた。
今回は運転手レナ、機銃カズマ、主砲めぐみん、アクアおすわり、という布陣だ。高性能のCユニットがあるのでレナ一人でも戦闘可能だが、今回の目的は実戦テスト。万全の状態で戦いを挑む。
道中の雑魚モンスターは機銃で軽々と一掃しつつ、一行はスナザメのナワバリを目指す。
「ね、ねえカズマさん!? ほ、本当に大丈夫なのよね!? また前みたいにギリギリで逃げ回ったりしないわよね!?」
「まだ言ってるのか、アクア! 前のときとはスピードも武装も段違いだ! 負ける要素が見当たらない!」
「そうですよ! それに紅魔印の特殊砲弾だって用意してます!! はっきり言って、負ける要素が見当たりません!」
「うわぁぁぁぁ〜んっ!! カズマとめぐみんがフラグ立てまくってるぅ〜!!」
前回食われかけたのがよっぽどのトラウマらしいアクアは、まだ敵の姿も見えないのに取り乱している。とりあえず戦闘の邪魔になりそうだったら適当に放り出して後で回収すればいいやと、特に気にされてもいないが。
「ん? めぐみん、前方に何か見えない?」
運転席のレナが何かを発見したらしい。めぐみんは眼帯型iゴーグルを望遠モードに切り替えた。現状、一番遠くまで物が視えるのが彼女だ。
「……あ。クルマですね。中型のトラックです」
「トレーダーかしら?」
「どうでしょう――!! レナ、カズマ! 戦闘態勢を! トラックがスナザメに追われています!!」
「なんですって!?」
目視できるのは、地平線の手前に「なんか砂煙が上がってるなー」ぐらいだが、どうやらあれがスナザメだそうだ。
無意識にレナの口角が釣り上がり、瞳が爛々と闘志に輝きだす。
「ちょいとハードなテストになりそうね! みんな!! トラックを助けて、獲物を仕留める! 二兎を追って両方得るわよ!!」
「へっ! 分かったよ、やってやらぁ!!」
「ふっふっふ。それぐらいでないと張り合いありませんよ!」
レナに触発されたのか、カズマとめぐみんもやる気マンマンだ。へっぴり腰なのはアクアだけだが、今回は特にやることがないので黙っていても問題ない。
やがてスナザメの巨体とトラックが見えてくるや、カズマが機銃でスナザメを撃った。牽制を加えると同時に、トラックから注意をこちらに向かせる。
『GURURURURURU!!』
強化された弾丸が硬い表皮を容易く貫き、赤い花を咲かせる。スナザメは即座に地上から砂中へと姿を消した。
トラックとすれ違い、一直線に走り去るのを見送って、バギーも華麗なドリフトで180°ターンを決める。
「くっそ、どこ行った!?」
「慌てないの、カズマ! iゴーグル、振動探知センサーに切り替え!」
音声認識により、砂中で動くスナザメの様子がゴーグルに投影される。前回の耳と直感に加えて視覚でまで捉えられれば、砂地も水辺と変わりない。
「はっ! あいつ、こっちを無視してトラックを追ってるわ! 逃がすものか!!」
ギアをトップに、アクセル全開にしたレナは、真っ赤な舌で口唇を舐めた。
「めぐみん、主砲の準備をお願い!!」
「弾は!」
「好きなのどうぞ! ヤツが砂から出たら、ケツに強烈なのブチかましちゃって!!」
「アイアイサー!」
砂中のスナザメを追跡するという、前回とは真逆のシチュエーションだ。それだけでなく、今回はこちらが速度でも勝っている。
カズマが砂を撃って敵の出方をうかがいつつ、めぐみんが特殊砲弾に切り替えた主砲で待ち構える。そしてレナは、天性のドライビングセンスで的確な射撃位置へとバギーを移動させ、スナザメを射程範囲から逃そうとしない。
初めてとは思えない連携であった。
「!! めぐみん、敵が浮上を始めたわ!!」
「分かりました!!」
砂漠の表面が盛り上がり、トラックの後輪が巻き込まれた。
砂上に顔を出したスナザメの獰猛な牙が獲物を狙うが、どうやらヤツは気付いていないらしい。
「今回狩るのは……!」
「私達、なんですよね!!」
照準はあやまたず、発射ボタンが押された。
彼女達の連携は完璧だった。戦略に破綻はなく、戦術に無駄はない。
普通であれば何の問題もなく獲物を仕留め、モンスターハンターとして輝かしい1ページ目を刻んでいただろう、理想的な展開だ。
しかしである。
48ミリ砲から放たれたのは、変態アーチスト集団紅魔族の中でも、若く才能あふれるめぐみんの特製砲弾だ。爆裂をこよなく愛する彼女の作品であるなら、その特製は言うまでもなく大爆発。
『GUO!?』
砲弾がスナザメの背びれの付け根辺りを直撃し、鮫肌に食い込んだその瞬間。
真昼の砂漠は、太陽よりも激しく輝く閃光によって塗り潰された。
めぐみん特製爆裂弾。その真の威力は、マドの町東の砂漠の地図を書き換えるのに十分な『兵器』の領域に足を突っ込んでいた。
カズマ?「くだる、くだらねえってのは知恵の使い方次第よ」
レナ「まだ戻ってなかったの、ホルマジオ?」
アクア「ちなみに作者は5部アニメで『しょうがねぇなァ』を聞いて噴き出してるわ」