アクア「スカンクスポジで終盤量産されてもいいならワンチャンあるかも」
カズマ「いや、そもそもアンデッドの存在を許容したらラスボス目的が達成されちまうだろうが。ヴラド・リッチーとか誰が勝てる?」
「電撃蘇生学ぅ?」
「はい、電撃蘇生学です」
めぐみんがレナとパーティを組み、カズマも暫定助っ人NPC枠となった翌日。
ハトバへ旅立つ前にミンチ達の様子を見ておこうと、カズマは彼らがテントに中に設営した研究所を訪れた。
その恐るべき研究内容とは、特別な電撃による死体蘇生であるらしい。どこのハーバード・ウエストだ、とカズマはツッコんだが、残念ながら通じなかった。
「実はわたしも博士に蘇生してもらったんですけどね。改めまして、ウィズと申します」
ペコリと頭を下げた、青いフードの死神っぽい美女。その拍子にたゆんと揺れた立派なお胸を凝視しつつ、カズマもお辞儀をした。
「カズマ君や、もしも旅先で活きの良い死体を見つけたら、ワシの元へ運んできてくれ」
「もしも死体になってるカズマさんを見つけたら、しっかり旦那様のところまで運んでくるだよ」
ミンチとイゴール、そしてウィズは悪人ではないが、狂人なのは間違いなかった。
しばらく雑談してからガレージに戻ると、レナ達の出発準備は完了していた。
それまでパイプ椅子でだらーっとしていたアクアが顔を上げた。
「ちょっとカズマ、どこうろついてたのよ?」
「例のミンチさん達のところにな」
「ああ! あのステキな母性の塊みたいなお姉様のところね♪」
ミンチの、と言ったのにレナの中でメインになっているのはウィズらしい。途端に瞳をキラキラさせて、一見すると乙女チックだ。
それ以前にレナの性癖を抜きにしたって、禿げた変なおっさんとフランケンシュタインの怪物となら、一番お近づきになりたいのは誰だって彼女だ。
「でも、電撃で死んだ生物って蘇るんですか? 魔法じゃあるまいし」
不信感丸出しなめぐみんだが、彼女の反応も自然なものではある。
「分からないけど、こんな世界じゃなんでもありじゃないかしら?」
「死後24時間が限度とも言ってたわ。腐敗が進んだ死体だと駄目だって」
アクアと一緒になってめぐみんの話に乗っかるレナだが、カズマは知っている。さり気なくDr.ミンチにマリアの蘇生が可能か確かめていたことを。
無理だと知っても「そっか」で済ませたが、彼女の本心は分からない。女心とかいう次元を超えて、カズマにはまだ世紀末を生きる人間の精神の理解が出来ていないのだ。
(いっそのこと、成り立ちから違うファンタジー世界とかだったら、余計なこと考えないで生きていけるのかもな……)
などと、益体のないことまで考えてしまう。平行世界の未来と言えども、ここは地球の日本なのだから。ひょっとすると、かつて生きていた地域に立ち寄る可能性だってある。
「おや? カズマ、ボーッとしてどうしたんです? 早くバギーに乗ってください、今回はあなたが運転するんですよね?」
「お、おお。悪い」
めぐみんに呼ばれて望郷の念から立ち戻ったカズマは、すぐにバギーの運転席へ。めぐみんも銃座に着いた。
しかしレナはバギーを通り過ぎて、その隣にあった二台のバイクの内、黒いモトクロスバイクに跨った。スナザメの賞金の半分で買い上げたものだ。
もう一台は白バイで、とあるモンスターを討伐してくることを条件に借り受けたが、今回は使わない。
レナはライフルとサブマシンガンにマチェーテで武装も完璧だが、メインで使う予定なのはヘッドライト左右に増設された11ミリバルカン(☆☆☆)だ。本職のソルジャーならば携行火器をぶっ放す方が強いかもしれないが。
「レナ、本当にクルマに乗らないで大丈夫なのか?」
「大丈夫ではないでしょうけど、せっかく使える車両があるんだから戦術の幅は広げないとね!」
「そこって嘘でも大丈夫っていうとこじゃないかな!?」
カズマのツッコミもどこ吹く風で、レナは意気揚々と出陣するのであった。
マドの町から一度エルニニョまで北上し、そこから西へ走ると「ベイ・ブリッジ」という橋がある。ハトバへ渡る唯一の道だ。
しかし今、橋のド真ん中にはグラップラーの戦車隊が陣取っている。
「なんでもマドの町やエルニニョでグラップラーに逆らって暴れた馬鹿がいたって話だぜ。だからヤツらの検問が厳しくなっちまった」
と、橋の袂の酒場にタムロしていた流れ者が愚痴を言っていたのを小耳に挟んだ。間違いなくレナや自分達だとカズマは頭が痛い思いだ。
「この
「上等じゃない! 真ん中を押し通ってやるわ!」
「グラップラー死すべし! 正面突破よ!!」
一方、女性陣は意味が分からないレベルで殺気立っていた。SNSで全方位にケンカ売ってる怖い人のようで、カズマは何も言えない。
急かされるようにアクセルを踏み込んだカズマは、破れかぶれでバギーを守備隊に突撃させた。
「おわ!? なんだあいつらは!!」
「ハンターですよ!!」
先制攻撃はめぐみんが撃った48ミリ砲(通常弾)と、レナのバルカンが頂いた。
砲弾が直撃したグラップルタンクの一台が当たりどころが悪くて爆発、機銃の掃射で歩兵が見るも無残に蹴散らされた。
残った敵タンクが反撃に主砲の照準をバギーに合わせるも、敵のクルマの性能は把握済みだ。カズマだって伊達にメカニックの修練を積んでいない。
「あらよっとっ!!」
アクセル全開、インド人を右に!
かなり余裕を持って回避に成功し、ついでのお返しとばかりにめぐみんから主砲のプレゼント。直撃こそ逸れたものの、屋根ごと大砲を吹き飛ばして戦闘能力を奪った。
1分にも満たない戦闘時間でクルマ2両、歩兵十人弱を失った守備隊の生き残りは、わずか2名となってしまう。その生き残りも完全に戦意を喪失し、我先にと逃げ出す始末だ。
「おっと! この橋は通行止めのハズでしょ?」
しかしレナがバイクで素早く敵の退路を塞いでしまう。
進退窮まったグラップラーの二人は、真っ青な顔で震え上がるも……ふと、橋の下を潜ろうとする鋼鉄のタンカーに気付いた。
「お、おおっ!! あの船はテッド・ブロイラー様の!!」
「なんですって!?」
兵士の口から飛び出した怨敵の名前に、レナはバイクを飛び降りて橋の欄干から身を乗り出した。
そのまま飛び込みそうな勢いのレナを見て、慌ててカズマはバギーを飛び出す。同じことを考えてか、めぐみんとアクアもレナの元へ駆け出していた。
しかし幸い、レナは背負っていたライフルを構えただけで、飛び降りたのはグラップラー兵士の二人の方だ。
「はっはっは! 残念だったな、ハンターども!!」
「地獄にテッド様とは、まさにこのこと! 貴様らもあの方に焼き尽くされてしまえ!!」
などと捨てゼリフを吐いて着水し、泳いでタンカーまで辿り着いた根性は大したものだ。
そうして甲板に上がった兵士達を出迎えるのは、彼らが頼ったグラップラー最強とも名高いモヒカン頭の大男。レナはもちろん、一度見ただけのカズマやアクア、さらには噂でしか知らないめぐみんでさえ、身震いするほどの威圧感だ。
テッド・ブロイラーは分厚いタラコ唇をニヤリと釣り上げ、両腕の火炎放射ノズルを逃げ延びたと思い込んでいた兵士達に突き付けた。
「びしょ濡れじゃないか。乾かしてやろう」
「へ? はっ!! い、いやっ!!」
「テッ! テッド・ブロイラー様ぁぁぁぁぁーっ!!」
地獄の業火は人間二人ぐらいの質量ならば一瞬で真っ黒焦げにしてしまう。
「バカが。腰抜けの弱者にバイアス・グラップラーを名乗る資格など無いわ」
一塊の炭となった兵士の亡骸を蹴り壊したテッド・ブロイラーは、近くで震える別の兵士に清掃を命令し、振り返ってベイ・ブリッジを見上げた。
ライフルを構えたレナと、スコープ越しに視線を交わす。
レナはテッド・ブロイラーの額にピタリと照準を合わせて銃爪を弾いた。
音速を優に超える弾丸が到達するまで一秒の半分も要らない距離だ。
だが弾丸はテッド・ブロイラーに到達するより遥か手前で、迎撃に放たれたアイビームによって蒸発。あまつさえビームはレナが構えたライフルを溶断してのけた。
「あぐっ!?」
レナの肩にもビームは掠り、苦悶の声を上げて後ろへ倒れ込んだ。すぐにカズマ達が駆け寄っていく。
「他愛無い。……ん?」
テッド・ブロイラーはそれ以上の追撃はせず、そのまま見送るつもりだった。
しかし倒れたレナを介抱する二人の少女の片方を見て、訝しむように片眉を釣り上げた。
「あの女が、なぜこんなところに……?」
甲板でウデを組んで仁王立ちしたまま、テッド・ブロイラーは遠ざかるハンター達をしばらく睨みつけていた。
テッド・ブロイラー「アクセルの街に集まった、冒険者どもか。我ら魔王軍に逆らう者には死、あるのみ! ここでテッド・ブロイラー様に出会ったこと、後悔して死ぬがいい!!」
魔王軍幹部テッド・ブロイラー
特徴:残虐非道、魔王より強い。デストロイヤーが接敵を避ける。
弱点:ビーム属性
カズマ「無理ゲーじゃねえか!!」