この素晴らしきメタルマックスに祝福を!   作:無題13.jpg

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オトピチ「ちなみにミーがもらった転生特典は『無限に金が出てくるガマグチ』だったザンス。でも『エリス』とかいう聞いたこともない硬貨しか出てこなかったザンスー!」
ステピチ「おれはあにきと出会えただけでしあわせだー」
※なお、ちょっとでも知恵が回ればエリスからレアメタルが精製できた模様。


第十八話 故郷の合言葉

 荒野を突っ切る一台のトラック。それを追いかけるのは、一頭のサイだ。

 サイ、犀、奇蹄目サイ科のライノセラスである。ただしサイズは都バス級、背中には砲門が生え、トラックにも余裕で追いつく速度で疾走しながらトラックに照準を合わせている。

 

「待て待て待て待てぇぇぇぇぇぇーい!!」

 

 そのサイをさらに追跡するのは、装甲車並みに魔改造されたバギーと、ライダーがバズーカ砲を構えたモトクロスだ。殺気立った叫び声は、荒野には道交法なんて存在しない! とばかりにノーヘルな金髪美少女ライダー、レナのものだ。

 構えたバズーカを発射し、砲弾は過たずに巨大サイを直撃するが、目標に怯んだ様子はない。若干焦げ目が付いただろうか。

 

「あんのクソッタレ! どんな皮膚してるのよ!!」

『レナ、近付きすぎだ!! 間合いを取れ!』

 

 iゴーグルにバギーを運転するカズマから注意が飛ぶ。

 

『倒す必要はないんだ! キャラバンのトラックから引き離せばいい!』

「分かってはいるけど、ハンターの本能がどうしてもね!」

『血の気多すぎる――おいめぐみん! 今は特殊砲弾を使うな!! またトラックごと吹き飛ばす気か! やめろ馬鹿、やめろ!! 止めろアクアぁー!!』

 

 発射されなかったので、なんとかアクアがめぐみんを止めたのだろう。レナは攻撃を続行した。

 

 

 

 なぜレナ一行が凶悪なサイの賞金首、サイゴンとチェイスバトルをしているか。

 話は簡単で、トレーダーのリコからアズサまでの道中の護衛を引き受けたところ、途中でいきなりサイゴンが襲ってきたので迎撃中だ。

 

 ピチピチブラザーズとの遭遇は、実は結構後を引いている。転生云々については説明が面倒になったカズマが全部正直に話してしまった。するとめぐみんからは、

 

「わざわざこんな時代に生まれ変わらなくっても」

 

 と本気で同情されてしまった。

 ごもっともだが、カズマだって好きで転生したわけではないのだ(プロローグ参照)。

 

 むしろダメージが大きかったのはアクアとレナだろう。

 表面上は普段と変わらないレナだが、ステピチの火炎放射で明らかに動揺していたのは丸わかりだった。一度丸焼きにされて死にかけたのだから無理もない。

 しかしそれについてカズマらが何かを言う前に、レナは「バーナーガン」という火炎放射器を自ら装備していた。トラウマなんぞ力づくでねじ伏せる! という無言の決意が伝わってきくる。

 

 一方で後ろ向きにおかしくなってるのが飼い犬(アクア)だった。

 

「て、転生者が悪党に堕ちるなんて……地獄に堕ちるような悪人は送っていなかったハズなのに!? これでもし与えた神器まで悪用されてたら、天界に戻るどころか私が転生させられちゃう!!」

 

 頭を抱えてブツブツ繰り返すアクアは不気味だが、言ってる内容が自己保身なのと、そもそも自業自得なので同情できない。

 問い詰めてみたところ、顛末が把握できていない既転生者が大多数で、彼らが持ち込んだ神器(チートアイテム)もほぼ放置されているようだ。

 特にピチピチブラザーズのようなサイボーグ化の割合が一定以上大きくなると、天界のシステムでは「死亡」と見做される……という杜撰な管理体制も明らかになる。

 

 深く考えるほど怖くなってきたので、カズマはそれ以上の追求を止めた。

 

(だって……世界がこんなになった原因の何割か、もしくは全ての元凶がアクア(こいつ)かもしれないとか……女神じゃなくて邪神か破壊神じゃねーか……)

 

 カズマ自身は特に悪いわけではないのだが。こんな世界だ、忘れたほうが都合の良いことは積極的に忘れることとした。

 

 

 

「はわ〜。なんとか助かりましたわ〜。ほんまおーきにな」

 

 場面は戻って。

 サイゴンから逃げ切って……むしろサイゴンの方が勝手にどこかへ走り去ったお陰で、キャラバンは無事にアズサに辿り着いた。

 トドメを刺すには火力が足りなさすぎた。サイゴンがここいらを今日も元気に走り回っていることから、早急な主砲の威力の底上げも行動指針に加えられた。

 

 さて。アズサは町と呼ぶには奇妙な構造をしており、廃棄された電車の高架下にできた集落だった。

 加えてさらに奇妙だったのは、集落に若者の姿がまったく見られないことだ。リコ達からもらった報酬で少し戦車装備を強化しようと思っても、扱い品はハトバと大差ないものだ。

 

「これもグラップラーの人間狩りのせいでしょうか」

 

 寂れた集落を見回しためぐみんが呟く。実際に町の老人がグラップラーの被害を嘆く声が聞こえた。

 

「ふっふっふっふ」

 

 レナもグラップラー関連の話となれば穏やかではいられまい。そう思ったが、なぜか含み笑いしながら線路を見上げている。

 

「所詮はグラップラー。この町の真の姿に気づいていないとはね」

「というと?」

「アズサは人間狩りの目を欺くために、下層には襲われないお年寄りばかりが暮らしているのよ。この町の真の中心はあっちにあるってワケ」

 

 訳知り顔でドヤったレナは、以前にマリアに連れられて来たことがあるらしい。先に言え、とツッコむも、到着するまで忘れていたらしい。

 

「忘れていたなら仕方ありませんね」

「ええ。人間うっかりってよくあることだもの」

「お前ら……」

 

 日頃からうっかりが多い一人と一匹(犬換算)が大いに同意するので、余計にツッコまねばならなくなるカズマであった。

 

「それでね。町に入るには合言葉が必要なの。まあアタシが知ってるから問題ないんだけど。門番との会話はアタシに任せてね♪」

 

 さっきのうっかりっぷりからして不安しかないが、本人が大丈夫と豪語するのだから大丈夫なのだろう。そんなことより、カズマには高架上に繋がるハシゴを率先して登っていくレナの、タイトなスカートの中を堪能する方が重要だ。

 

 数分後。

 

「一昨日来なッ!!」

「ギャァァァ〜ッス!!」

 

 案の定、うろ覚えだった合言葉を間違えたレナは、アズサのガードによって高架下まで叩き落されたのだった。忘れてたのなら仕方がない。

 

 その後、高架下まで真っ逆さまに落ちた割にはほとんどノーダメージだったレナは、落ちたショックが原因なのか正しい合言葉を思い出していた。

 実は合言葉といっても特定のキーワードではなく、門番が提示した特定の言葉に頷くというユニークな方式を取っていた。

 

「北かい?」

「違うわ」 ←余計なことを言おうとしたアクアをカズマが取り押さえる

「西かい?」

「違うわ」

「なら東かい?」

「違うわ」

「じゃあ北じゃん」

「そ……違うわ」 ←さっき引っかかったのこれ

「それなら北だね」

「そうよ」

 

 単純な言葉遊びだが、めぐみんとカズマは意外に面白いと感心し、知能がグラップラーと大差ないアクアにはチンプンカンプンだった。

 

 

 

「ほう。お主、マリアが連れとった娘っ子か! 大きゅうなったの〜」

 

 レナがアズサに来たことがあるのは本当だったようで、彼女を覚えている老人が高架の上の新幹線に住んでいた。

 

「風の噂にマリアもグラップラー四天王に殺されたと聞く。お主だけでもよく無事だった」

「運が良かったんです。それより長老、ここがグラップラーと戦うレジスタンスの前線基地だとうかがいました。その戦い、アタシ達にも参加させてください」

 

 という真面目な話をレナとカズマが進める間、問題児二人は居住区に改造された新幹線を見物していた。

 

「知ってるめぐみん。昔はこの電車で日本中を言ったり来たり出来たのよ?」

「ええ。本でしか知りませんけど、最高時速は300キロ以上も出たとか。ここが運転席はしょうか?」

 

 先頭車両には、電源が切られて久しい操縦設備が放置されていた。Cユニットが搭載されたクルマよりも複雑な機械は、めぐみんはともかくアクアには完全に未知の存在だ。

 

「動かせる?」

「動かしたって線路が無いでしょう。敷かれたレールから外れることが出来ないとは、我々紅魔族とは真逆ですね」

「紅魔族、とな? お嬢ちゃん、あの色ものアーチスト集団を知ってるのかね?」

 

 運転席で茶を飲んでいた老人が、二人の話に割って入った。

 紅魔族を知ってるか。そう聞かれためぐみんの返答は決まっている。

 

「ふっふっふっふ! 紅魔族を知っているか、ですって? 笑止ッ!! 我こそは紅魔館に連なる爆裂ゲージツの申し子、めぐみん! 貴様のいう紅魔族そのものですッ!!」

「ほーぅ。今どき魔女っ子スタイルに眼帯なんぞしてるから妙なお嬢ちゃんだと思えば」

 

 老人はめぐみんの名乗りをスルーして、運転席横のトランクルームに入っていた。

 ガサゴソと中から音がするので、しばらく部屋の入り口から中を覗き込みつつ待つ。やがて老人は、キックスクーターのような機械を引っ張り出してきた。

 

「以前にトレーダーから譲り受けたものなのだが……紅魔族の作品ということ以外、正体が分からず放置しておっての。ちょうどいい。お嬢ちゃん、これが何か分からんか?」

「! ちょっと見せてください!」

 

 キックスクーターを受け取っためぐみんは、車体をひっくり返して掠れた文字を注意深く読み取った。

 

「ま、間違いない……これは父のポチバイク!」

「めぐみんのお父さん!? ま、間違いないの?」

「はい! 見てください、っていっても読みにくいんですけど」

 

 底板の裏側に刻まれた文字を、アクアは目を凝らして見つめる。

 

「『HYOIZABURO』……『ひょいざぶろー』って読むの、これ?」

「ええ。紛れもなく父の名前です」

「それは人名なの? それともブランド名なの?」

 

 自分の本名をブランド名としたのか知らないが、紅魔族の名前の法則には、アクアも頭痛を覚えざるを得ないのであった。




めぐみん「あ、勘違いしないでください。私の家族はみんな生きてますよ。むしろ父の作品は世紀末でこそ光るんです! むふーっ」
※なお、光るというのは比喩ではなくて、物理的に輝く場合が多い模様。
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